「みんなのふこう」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|若竹七海

みんなのふこう

著者:若竹七海 2010年11月にポプラ社から出版

みんなのふこうの主要登場人物

ココロ(こころ)
ヒロイン。17歳のフリーター。いつも一生懸命だが空回りしている。

ぺんぺん草(ぺんぺんぐさ)
ココロの友だち。バイト代をためながら大学進学を考える葉崎東高校の2年生。ラジオを聞いたり投稿するのが趣味。

町井瞳子(とうこ)
地元で人気のラジオパーソナリティー。居酒屋で企画会議を開くのが楽しみ。

香坂多美恵(こうさかたみえ)
ココロの上司。仕事に熱心で弱音をはかない。

渋澤健一郎(しぶさわけんいちろう)
瞳子の中学時代の恩師。教職を定年で退いた後はフリースクールで不登校の子どもたちをサポートする。

みんなのふこう の簡単なあらすじ

葉崎市内のラジオ番組で話題を呼んでいるのは、飛びっきりついてない少女・ココロとお友達のぺんぺん草にまつわるお便りです。

住居と勤め先を転々としたココロはカルト宗教に転がり込んで、ぺんぺん草も列車事故の被害者となったためにしばらくは音信不通が続きます。

順調に回復したぺんぺん草からの贈り物を受け取ったココロは伊豆大島で心機一転を計りますが、相変わらず不幸は続くのでした。

みんなのふこう の起承転結

【起】みんなのふこう のあらすじ①

集まれ不幸自慢

葉崎FMは神奈川県の田舎町で開局15周年を迎えたラジオ放送局で、町井瞳子が担当するライトハウス・キーパーは1番の人気番組でした。

中でもリスナーから失敗談やついてない話を募集する「みんなの不幸」のコーナーには、開局以来のたくさんの投書が届いています。

ラジオネーム「ぺんぺん草」という17歳の女子高校生のメールが始めて読まれたのは8月の午後10時頃で、お弁当屋で仲のよいココロという同い年の女の子にまつわる話です。

どことなくチワワのようにうるうるした目、びっくりするほど不器用、とにかくかわいそうな子、ちょっと疫病神が入っている。

子育てが苦手な母親に中学校を卒業するまで施設に預けられていたココロは、父親の顔を見たことがありません。

葉崎北西部の城井地区に住むお金持ちの農家に居候していましたが、乾燥大麻の栽培を「ハーブ」と騙されて手伝わされていました。

まもなく家主は神奈川県警に逮捕されてしまいココロも事情を聞かれますが、バイトリーダーの香坂多美恵が身元引受人になってくれます。

香坂が見つけたのは裏通りにある廃虚のようなアパート「葉崎湘南壮」ですが、ココロは大喜びしていたそうです。

【承】みんなのふこう のあらすじ②

もろくも崩れゆくお屋敷と友情

ライトハウス・キーパーの放送時間は毎週土曜日の夜9時から深夜12時まで、瞳子だけでなく多くのリスナーがココロの不幸を待っていました。

11月にぺんぺん草から届いた続報によると、お店の前に立っているだけで商店街全体からお客さんがいなくなってしまうココロは弁当屋をクビになってしまいます。

香坂が紹介したのは特殊清掃請負業「スターブライトクリーニング」で、葉崎中央町にある一軒家の片付けをする仕事です。

清掃会社の社長は社員を生命保険に加入させていて、ココロやその他の従業員を事故に見せかけて殺害するつもりでした。

社長とグルだった現場主任は倒壊する建物の下敷きになって重体となりましたが、2階で作業をしていたココロに大きなケガはありません。

スターブライトクリーニング社を運営しているのは「星の滴教団」という宗教団体で、香坂も熱心な信者です。

今の会社とは縁を切って香坂にも気をつけろというぺんぺん草の忠告に腹を立てたココロは、年が明けると葉崎湘南荘を出てどこかへ行ってしまいます。

【転】みんなのふこう のあらすじ③

あんずの炎上でカルト壊滅

2月の初めに課外授業で東京の国立能楽堂に向かう途中で、ぺんぺん草は電車の脱線事故に巻き込まれてしまいました。

命に関わるほどではなく後遺症も残りませんが、しばらくは都内の病院に入院をしなければならないためにメールを送っている場合ではありません。

ココロに関する情報がまったく入ってこなくなった5月、葉崎FMに1通の手紙が舞い込んできます。

差出人は渋澤健一郎という瞳子が卒業した葉崎市立第二中学校の先生で、娘の武子とも新聞部で一緒に活動した仲です。

武子が星の滴教団に勧誘されてすっかりその教えにハマってしまったと聞いて、瞳子は居ても立ってもいられません。

本部へと乗り込むとニコニコと笑いながら扉を開けてくれたのがココロで、武子の母親が作ったあんずのお酒をお土産に手渡しました。

酒の入ったビンを持ってキッチンへと歩いていったココロは、急に足を滑らせて中身をアロマキャンドルの上にぶちまけます。

ココロはやけどを負いましたが火事が原因で教祖は求心力を失い、武子を始めとする信者たちもわれに返ったようです。

【結】みんなのふこう のあらすじ④

新天地でも不幸が降り注ぐ

ようやく松葉つえで通学できるようになったぺんぺん草が放課後に病院でリハビリに励んでいると、エスカレーターの上からココロが転がり落ちてきます。

星がきれいな海水浴場の仕事が見つかったと嬉しそうなココロは、ぺんぺん草と言い争いをして別れたことを覚えていません。

明日には出発するというココロにプレゼントしたのは、葉崎FMを聞くために愛用していた携帯用のラジオです。

ココロが旅立った数日後、ライトハウス・キーパーのスタッフ一同に当てたぺんぺん草からの葉書が届きました。

新しいラジオ専用機を買うのかはまだ決めていないこと、しばらくは番組にメールを送るのを止めること、これからも瞳子が楽しい放送を続けていけるように応援していること。

メールを読んだ瞳子はこの日で「みんなの不幸」のコーナーの最終回を告げた後で、最新のローカルニュースを読み上げます。

伊豆大島の海岸で流星群が目撃されて詰めかけた観光客が海の家を押し潰してしまい、従業員らしき少女が病院に搬送されたそうです。

みんなのふこう を読んだ読書感想

お気に入りのラジオを聞きながら部屋でゆったりとしていると、自分だけの時間を満喫しているような気持ちになるでしょう。

そんなリラックスタイムに流すにはふさわしいとは言えない、ココロちゃんに襲いかかる不幸の数々には驚かされました。

怪しげな薬物の密造に加担させられたかと思えば、保険金目的で命まで狙われてしまうなど息をつく暇もありません。

次から次へと悲惨な目に遭うココロを見て滑稽さを感じてしまうのは、まさに「他人の不幸は蜜の味」です。

女同士の熱い友情でハッピーに締めくくるかと思いきや、最後までハラハラドキドキさせてくれます。

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