「震える牛」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|相場英雄

震える牛 Kindle版 相場英雄

著者:相場英雄 2012年1月に小学館から出版

震える牛の主要登場人物

田川信一警部補(たがわしんいち)
警視庁捜査一課継続捜査班

矢島達夫理事官(やじま)
事件発生当初に第二強行犯担当管理官として指揮を取っていた

鶴田真純(つるたますみ)
日本実業新聞からネットメディアへ転身した記者

宮田次郎捜査一課課長(みやたじろう)
現在の田川の上司

滝沢文平(たきざわぶんぺい)
オックスマート取締役経営企画部長

柏木友久(かしわぎともひさ)
オックスマート社長、創業者

柏木信友(かしわぎのぶとも)
オックスマートスーパー事業本部長

赤間裕也 (あかまゆうや)
獣医

西野守(にしのまもる)
産業廃棄物処理業者

増渕恵三 (ますぶちけいぞう)
納入している牧場主

増渕恵子(ますぶちけいこ)
信友の愛人 増渕恵三の娘

震える牛 の簡単なあらすじ

巨大ショッピングモールを経営する企業と、そこへ納品する食肉卸会社、そして衰退する地域の商店街などを扱った小説です。

警視庁捜査一課の継続捜査班田川信一警部補が主役の三部作の一作目となります。

本作が出版されたころに、狂牛病や食品偽装などが話題になっていました。

震える牛 の起承転結

【起】震える牛 のあらすじ①

強盗事件

警視庁捜査一課の継続捜査班の田川警部補のもとに、2年前に都内の居酒屋で起きた、強盗殺人事件が回ってきます。

目出し帽をかぶったアジア系外国人風の男が「マネー、マネー」と言いながら、店長に切りつけ、さらに居合わせた客二人に切りつけ殺害し、お金と財布を奪っていった事件でした。

田川警部補が当時の捜査資料の写真や生き残った店長の傷跡を見ると、逆手で刃物を持って切りつけた跡が残っていたので、外国の軍隊経験者が犯人ではないかとのことでした。

しかし近くのスナックに聞き込みに行くと、事件が起きた頃に路地を走って逃げた男が、待っていたベンツに乗って逃走したことが解ります。

金に困った外国人がベンツで逃走というのは不自然ですので、殺害された産廃業者の西野の長野県の実家に聞き込みに行きます。

西野の母親は、彼が近く大金が入るようなことを言っていたことを話します。

そこでも巨大ショッピングモールが出来て、商店街が寂れていました。

【承】震える牛 のあらすじ②

巨大ショッピングモール

一方、ウェブメディアの鶴田記者はショッピングモールの出店料の一覧表を入手し、オックスマートの経営陣に取材します。

鶴田記者の妹は自営業を営む相手と結婚しましたが、ショッピングモールの進出で売り上げが減ったために、その後、様々な困難に遭っていたのでした。

オックスマートの経営陣が言うには、リーマンショック以降、ショッピングモールも売り上げが低迷し、大手の製造小売りチェーン店や大型書店、レンタルショップチェーンは自ら建物を地方の道路沿いに出すようになり、今でもショッピングモールに出店しているのは業界二番手、三番手となっているとのことでした。

田川警部補は食肉卸や食肉加工をしているミートステーションの元社員と会い、ショッピングモールや安いチェーン店で出されている肉製品は牛100%などと表示されていても、牛の各部署を余さずに使い、味と食感は様々な添加物で誤魔化しているので、作っている企業の社員は食べないことを知らされます。

一つ一つの添加物では人体に害はなくても、複合するとどのような影響を与えるのかは、誰も知らないとのことでした。

【転】震える牛 のあらすじ③

和牛

田川警部補が高級和牛を育てている牧場に聞き込みに行くと、2年かけて肥育しても、1頭当たり100万円くらいの利益にしかならず、牛が何らかの病気などになると大損害になるとのことを教えられます。

獣医師の赤間は老衰か狂牛病かのどちらかが原因で震えているらしい牛を見つけましたが、その後、どのように処分されたのかが調べても不明なのでした。

そのため取引先のオックスマートの責任者の信友に会おうとしていました。

問題の牛は産廃業者の西野が信友に依頼されて密かに処分していたのでした。

しかし西野は信友を強請ってきたため、信友は赤間獣医師と西野を同じ居酒屋に呼び出し、強盗に見せかけて2人とも自分で殺害したのでした。

信友は入社したころ食肉処理部門でも働いたので、その時に刃物を逆手で持つ使い方を学んだのでした。

田川警部補は偶然立ち寄った近所の商店街のお肉屋さんが逆手で牛肉の解体用の刃物を持つのを見て、誰が犯人かを気付くのでした。

【結】震える牛 のあらすじ④

隠ぺい

殺害現場の居酒屋に行く前に、信友は車を盗んで用意していましたが、他の人にそれを盗まれたので、愛人のベンツで迎えに来てもらっていたのでした。

創業者と比べると信友は何かと能力が落ちるので、社内でも信友が後を継ぐことを疑問視する人が居るので、誰にも相談できず一人で犯行を計画・実行したのでした。

さらにそれを嗅ぎつけた食肉卸業者にも彼は脅されていたのでした。

そして様々な食用に適さない肉を加工して食用に混ぜる機械を大量購入することを迫られていました。

衰退する日本市場よりも、同じようなショッピングモールがこれから大量にできる中国市場を彼らは狙っているのでした。

オックスマート取締役経営企画部長の滝沢や社長の友久は会社を守るために、信友を切り捨てることにします。

また、警察幹部も大手のオックスマートの経営が揺らぐと、大量の失業者を産み、社会問題になるため、事件の幕引きを決めます。

矢島管理官も自分の失点にならないよう暗躍しているのでした。

震える牛 を読んだ読書感想

食肉偽装がメディアで取り上げられていたころには、食用に適さない肉が様々な方法で食材に混ぜられていることが報道されましたが、その後はどうなったのだろうと考えさせられました。

何らかの方法や添加物が規制されても、他の方法や添加物が考案されていそうです。

日本製のものは何かと安くて品質がいいとされてきましたが、それを食べ物にも求めるのは問題が大きすぎそうです。

それを販売する企業の広告を扱う大手のメディアも、知っていてもなかなか報道しにくのかもしれません。

著者の相場英雄さんは地方のメディア出身とのことで、地方経済や暮らしがこの20年でどのように変化してきているのかに詳しいようです。

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