「カササギ殺人事件(上・下)」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アンソニー・ホロヴィッツ

カササギ殺人事件

著者:アンソニー・ホロヴィッツ 2018年9月に東京創元社から出版

カササギ殺人事件(上・下)の主要登場人物

スーザン・ライランド(すーざん・らいらんど)
クローヴァーリーフ・ブックスの文芸部門の編集者

チャールズ・クローヴァー(ちゃーるず・くろーう゛ぁー)
クローヴァーリーフ・ブックスの最高経営責任者

アラン・コンウェイ(あらん・こんうぇい)
カササギ殺人事件の作者

アティカス・ピュント(あてぃかす・ぴゅんと)
カササギ殺人事件に登場する名探偵

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カササギ殺人事件(上・下) の簡単なあらすじ

2019年に「このミステリーがすごい!」や「本屋大賞翻訳小説部門」で1位になるなどした小説です。

編集者の女性の物語の中に「カササギ殺人事件」という小説が組み込まれていて、「カササギ殺人事件」と「編集者が巻き込まれる事件」、1度に二つの犯人当てが楽しめる作品です。

カササギ殺人事件(上・下) の起承転結

【起】カササギ殺人事件(上・下) のあらすじ①

「カササギ殺人事件」容疑者

ロンドンに住む編集者のわたしは、名探偵アティカス・ピュントの第9作「カササギ殺人事件」を読み始めました。

物語は、メアリ・エリザベス・ブラキストンの葬儀が行われるところから始まります。

メアリはどんなことにでもしゃしゃり出る人で、村人からは好かれていませんでした。

忠実に仕えていたサー・マグナス・パイでさえも葬儀に出席しません。

メアリが亡くなったことで気を揉んでいる人たちがいます。

メアリに見られていたかもしれない物を気にしているロビン・オズボーン牧師。

薬を紛失してしまったエミリア・レッドウィング医師。

メアリに罪を責められた骨董品屋のジョニー・ホワイトヘッド。

浴室の棚に何かを隠したマグナスの双子の妹クラリッサ。

5歳下の男性と密会するマグナスの妻フランシス。

メアリはマグナスの家政婦で、掃除機をかけていたときに階段から落ちてしまい死亡したのです。

警察はただの事故として処理します。

しかし、村人たちは折り合いが悪かった息子ロバートが殺したと噂し、婚約者のジョイが探偵アティカス・ピュントに捜査の依頼をしたのです。

一度は断ったピュントですが、マグナスが無残な殺され方をして発見されたので、助手のフレイザーを連れパイ屋敷へと向かいます。

警察は空巣に遭遇したと考えているようです。

メアリを発見したとき、庭園管理人のブレントがガラスを割って屋敷に入ったので、葬儀の日に空巣に入られていたのです。

ピュントは、この事件の担当で旧友のチャブ警部補と合流し、マグナス筆跡の走り書きのメモと脅迫文と暖炉の中の紙の破片を見つけました。

パイ屋敷を後にしたピュントたちは、村の掲示板にロバートのアリバイを訴えるジョイの声明文を目にします。

その声明文は、マグナスに送られた脅迫状と同じタイプライターで打たれたものでした。

【承】カササギ殺人事件(上・下) のあらすじ②

「カササギ殺人事件」真犯人

余命3カ月の宣告を受けていたピュントは、頭痛に襲われ目を覚ましました。

しかし、1時間後にはきちんとした格好で警察の協力という形で捜査を始めます。

レッドウィング医師は紛失した薬のことをメアリに相談していました。

ブレントは牧師を探すオズボーン夫人に出くわし、酒場でキーキーと特徴的な牧師の自転車音を聞いていました。

牧師はマグナスがディング・デルといわれる森を売ろうとしていることを聞き、心を整理するために教会へ行っていたそうです。

ジョニーはブレントが持ち込んだ古代ローマのバックルを買い取っていました。

それはマグナスが所有する盗まれたコレクションの一つでしたが、屋敷の庭園にある湖の近くで拾ったとブレントは言っています。

その頃、レッドウィング医師は危篤状態の父から、マグナスが先に生まれたと嘘の出生届を書いたと聞かされピュントに相談します。

財産なしで放り出され屈辱を味わわされてきたクラリッサは自殺するために診療所から薬を盗んだことを認め、掃除婦のウィーヴァ—はディング・デルが切り倒されてしまうことに抗議するために、診療所のタイプライターで脅迫文を書いたことを明らかにします。

そして、パイ屋敷で見つけたマグナス筆跡の走り書きのメモは嘘の出生届のことだったのでした。

ピュントはメアリの夫マシューに会いに行きます。

マシューはメアリのことでマグナスに会いに行きますが相手にされませんでした。

一度はその場を去ったものの、再び戻ったとき応答がなく郵便受けの蓋を開け中を覗いたら、そこらじゅう血だらけだったということです。

帰途についた車の中で「マシューこそ、この事件のきっかけを作った人物。

自分の妻を殺したのだ」とピュントは断言しました。

【転】カササギ殺人事件(上・下) のあらすじ③

消えた結末と作者の死の謎

わたしというのは、編集者のスーザン・ライランドのことです。

結末部分がないことに腹を立てていたところ「カササギ殺人事件」作者のアラン・コンウェイが自宅の屋上から転落し亡くなるというニュースが飛び込んできました。

しかも、上司のチャールズ宛に遺書が届いていて、8月27日アランが死ぬ3日前、チャールズはアランと会員制クラブで会食をし原稿を受け取っていたのです。

新作の題名を変えた方がいいというチャールズにアランは怒りだし、そのまま別れたということでした。

遺書には、会食での非礼を詫びるものと癌に侵され余命6カ月であること、恋人を遺言から外すこと、そして自殺をほのめかすことが綴られていました。

スーザンはチャールズの執務室を出るとき、遺書は手書きなのに封筒の表書きはタイプで打たれていることに違和感を持ちます。

そして、結末部分の原稿を探すためパイ屋敷のモデルであろうアラン宅で、関係が冷え切っていた恋人のジェイムズ・テイラーと会い、アランの弁護士と姉クレアに会いますが原稿を見つけられないでいました。

着想を盗まれたウェイターや映画プロデューサーなど、スーザンはさまざまな人々に会いアランは殺されたのではないかと思い始めます。

そんなとき、スーザンはプロポーズされクレタ島へ移住するという恋人の言葉が重くのしかかります。

アランの財産はテイラーが受け取ることになりました。

彼はピュントの助手ジェイムズ・フレイザーのモデルだと言います。

クレアはクラリッサに。

アランの葬儀で説教をしたロブスン牧師はオズボーン牧師に。

金銭問題で揉めたジョン・ホワイトはジョニー・ホワイトヘッドに変えられていました。

アランは周囲のすべての人間、すべてのものごとを、あからさまに小説に利用していたのです。

「カササギ殺人事件」の登場人物はすべて鳥の名が付けられていて、スーザンは作品に対する無造作なあつかいにがっかりするのでした。

【結】カササギ殺人事件(上・下) のあらすじ④

ふたつの真実

ピュントはアランの元妻メリッサが考えついたもので、ピュントがヒットしたせいでアランは本来書きたかったものを書けなくなっていました。

偶然チャールズの個人秘書を務めていたジェマイマに出会ったスーザンは、彼女が8月25日に郵便でアランの原稿を受け取りチャールズに手渡していて、8月28日突然解雇されていたことを知ります。

スーザンはチャールズの執務室へと急ぎ、抜き取られた結末部分を見つけたところでチャールズが現れました。

アティカス・ピュントのシリーズ全9作のタイトルの頭文字を取ると「あなぐらむとけるか」というメッセージが現れます。

そのアナグラムはアティカス・ピュントに隠されていました。

それは、女性嫌悪を凝縮したような、むき出しの敵意が込められている言葉。

アランはピュントを生み出した日から計画していて、このことを公表するつもりでいました。

アランが書いた遺書は、ピュントがフレイザーに宛てた手紙を抜き取り3ページ目に加え、アランが自殺したように見せかけたのです。

チャールズは自首を勧めるスーザンに殴りかかり火を放ちます。

不意打ちで迎えに来た恋人に助けられたスーザンは、肋骨が2本折れ頭蓋骨にヒビが入っていました。

その後チャールズは収監され、スーザンは結婚しクレタ島でホテルを経営しています。

「カササギ殺人事件」はスーザンがかつて働いていたオリオン・ブックスが出版することになりました。

メアリの事故は、夫からかかってきた電話を取りに行ったときに掃除機のコードに足を引っかけ転がり落ちたものでした。

メアリは、弟を怒りで溺死させてしまっていた息子の凶暴性を知っていて、自分に危害が及ぶと考え、真実を書いた手紙を自分の死後開封するようにマグナスに託していました。

マグナスの事件は、疑われてしまうと思ったロバートが、空巣に見せかけ屋敷に侵入し手紙を見つけられず、マグナスを殺害し証拠隠滅を図ったものだったのでした。

カササギ殺人事件(上・下) を読んだ読書感想

「カササギ殺人事件」上巻を読み終えた後、その続きを読む気満々だった私は、下巻を開いたときにスーザンが語りだしたので大変驚きました。

登場人物が多く、それぞれの関係性を整理しながら読んでいて、冒頭でスーザンらしき女性が人生のすべてが変わってしまったと語っていたことをすっかり忘れていました。

「カササギ殺人事件」の舞台は、アランの姉とかつての妻が住んでいた街がモデルで、物語にはアランの人生が織り込まれています。

スーザンが訪れる場所は、「カササギ殺人事件」で読んだ教会や広場や酒場が広がり、そこから感じるのはデジャヴです。

さっき読んだなと気持ち悪さを感じながらも、別の新しい事件が始まったことで、ページをめくる手は止まりません。

こちらの事件も登場人物が多く関係性が複雑なので整理したいのですが、この先どんな展開になるのか、犯人は誰なのか、ピュントの謎解きはどうなったのかなどを早く知りたくて一気読みです。

このようなミステリ小説は初めてで、読んでいてこんなに興奮したのも初めてです。

一気読みの後に整理して、改めて読み直して、やっと興奮が収まりました。

2度、3度読んで面白さが深まりました。

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