著者:リー・カーペンター 2014年8月に早川書房から出版
11日間の主要登場人物
サラ
主人公 ジェイソンの母 シングルマザー 対外政策の論文の編集者
ジェイソン
サラの一人息子 高校生の時に9.11を体験し、海軍兵学校に入学し、卒業後にシールズ隊員になる。サラが大学在学中にデイビッドと出会いジェイソンが産まれたが、サラは結婚しなかった。
デイビッド
政府の中東に関する対外政策を実行する部署で働いていた。サラより10歳以上年上。
11日間 の簡単なあらすじ
郊外の家で一人で暮らし、対外政策に関する論文を編集することを仕事にしているサラですが、そこに軍から、一人息子のジェイソンが中東で作戦中に行方不明になったことが伝えられます。
そこから、二人の間でやり取りされた手紙やメールでこれまでの事が語られていきます。
11日間 の起承転結
【起】11日間 のあらすじ①
サラは郊外の家で一人で暮らし、論文の編集をしていますが、そこに軍から一人息子のジェイソンが作戦中に行方不明になっていることが伝えられます。
そこから、サラが大学に在学中に政府機関でアルバイトをしていた時に出会ったデイビッドという職員と関係を持ち、19才でジェイソンを産んだ時のことがサラからジェイソンへの手紙で語られます。
ジェイソンを産んだ後も、二人は結婚せず、デイビッドは仕事で海外を飛び回っていて、時たまサラの住む家に来る以外は、デイビッドの学校時代からの仲間で対外政策に関わる人たちがサラをいろいろと手伝ったり、アドバイスをするのでした。
時たまデイビッドはまとまった額のお金を送ってきたりしますが、家庭での生活にはほとんど関わらず、仕事の事で各地を転々としているのでした。
デイビッドも周囲の友人も、将来、ジェイソンが自分たちと同じような仕事をすることを望んでいて、そうなるためのアドバイスをサラにします。
【承】11日間 のあらすじ②
ジェイソンが高校に入ったころに9.11のテロが起き、ジェイソンはとてもショックを受けため、高校卒業後は普通の大学ではなく海軍兵学校に入ることを決めます。
そのころ父親のデイビッドが死去したことが二人に伝えられますが、詳細は知らされません。
ジェイソンは成績優秀だったので、いろいろな進学先がありましたが、海軍兵学校を選び、卒業後にシールズへの入隊を志願します。
入隊者の選抜のための選別訓練では、本人が希望して選別訓練に挑んでいることから、本人が無理だと思えばいつでも置いてある鐘を鳴らして辞められるようになっています。
その中でほとんどの志願者が自ら鐘を鳴らして辞めてゆく中、ジェイソンは最後まで残るのでした。
シールズはもともと第二次大戦で、島嶼への上陸作戦の際にサンゴ礁などで戦闘前に多くの溺死者を出したことで作られた組織ですので、訓練も水中での工作の基礎から学ぶことになり、そののちに現代の特殊部隊としての戦闘訓練に入るのでした。
【転】11日間 のあらすじ③
サラはジェイソンに関する連絡を家で待つなか、出征中に行方不明になった兵士の母親ということで、近所の人たちや地元の警察の人たちはいろいろと手助けしてくれますが、マスコミも家の前に張り付き、本人は大変居心地が悪い思いをします。
軍隊からはジェイソンと同僚だった兵士が派遣され、サラと共に過ごすことになります。
彼も戦闘中に片目を失っていました。
シールズでのジェイソンの任務の様子が少しずつ解るにつれ、ジェイソンは戦闘中でも周囲にいる無関係な子供にも気を使い行動していたことが明らかになります。
そして、ジェイソンの事を軍から教えられていくうちに、以前に亡くなったとされていた父親は、本人が担当していた中東の街に住み、仕事を続けていることが解ります。
ジェイソン達シールズが行っていた作戦は、テロ容疑者を海外で拉致したり、抹殺することも任務としてあったので、家族にも詳細は知らされないのでした。
そのためサラもどこでどういった経緯でジェイソンが行方不明になったのかも知らされないのでした。
【結】11日間 のあらすじ④
サラは中東のある場所の病院へ軍の飛行機で着きますが、そこには軍により回収されたジェイソンが入院しているのでした。
ジェイソン達シールズのチームは事前に襲撃するのと同じ建物を作り、予行演習を重ねていましたが、実際に襲撃した際に、他の兵士がチェックした部屋から赤ん坊の泣き声が聞こえたため、ジェイソンが見に行きましたが、それ以後は他の兵士が彼を探しても見つからず、戦闘中行方不明として部隊は撤収して、後から様々な方法で探していたのでした。
襲撃する相手はテロ容疑者のため、戦時法の適用外で、さらにドローンによる空爆により関係のない民間人も多数亡くなったり、大けがをしていたりするので、相手のテロ組織も米兵には人道的な対応をしないのでした。
米国の戦争やテロとの戦いが拡がり、様々な国や地域にいる相手をシールズなどが襲撃することで、軍人やテロリスト、双方への協力者などが入り乱れているので、米軍も兵士の家族にすら詳しいことは説明できない状況になっているのでした。
11日間 を読んだ読書感想
母親のサラと息子のジェイソンの手紙やメールでのやり取りを中心に語られて行く物語ですが、様々な神話の一部や詩の引用が多く、淡々として静かに進んで行きます。
これまでの戦争文学というと、従軍した経験のある男性が書いたものが多かったですが、本作は女性作家の書いた母親から見た戦争の話なので、独特のものになっています。
そのためミステリー小説やミリタリー系の小説を期待して読むと肩透かしを食うでしょう。
現代は様々な情報通信技術が広まったため、軍関係者は軍事行動に関して周囲の親族にすら話せないという状態になっているという辺りが、いかにも現代の戦争を扱った小説らしいところでした。
ハリウッド映画によく出てくるシールズですが、戦地で戦う隊員ではなく、本国で待っている家族を主に扱った小説です。
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