「夜葬」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|最東対地

夜葬 (角川ホラー文庫)

著者:最東対地 2016年10月にKADOKAWAから出版

夜葬の主要登場人物

朝倉三緒(あさくらみお)
番組制作会社ポジットの若手女性社員。顔がくり抜かれた死体が連続で発見された奇妙な事件についての特番チームに抜擢され事件に関わっていく。

袋田巽(ふくろだつばさ)
同じく番組制作会社ポジットの社員。朝倉の相棒として行動を共にする。

坂口寛治(さかぐちかんじ)
朝倉三緒、袋田巽の上司。二人を手助けしてくれる。

市原史一(いちはらふみかず)
警視庁捜査一課の刑事。顔くりぬき事件についての捜査を行なっている。

夜葬 の簡単なあらすじ

栃木県の山奥の寒村に伝る風習”夜葬”は、死者の顔をくり抜いて白米を盛って親族で食べ、くり抜いた顔は地蔵ににはめ込んで弔う儀式で、顔をくり抜かれた死者は「どんぶりさん」と呼ばれていました。

しかしそれはある媒介を元に暴走を始めます。

番組制作会社の朝倉三緒は連続で発生している”顔くりぬき事件”の特集番組を組む為に相棒の袋田巽と共にこの事件に関与していきます。

第23回日本ホラー小説大賞の読者賞受賞作です。

夜葬 の起承転結

【起】夜葬 のあらすじ①

伝染する恐怖の始まり

物語は”夜葬”の説明と真北健という少年から始まります。

健は帰宅途中に立ち寄ったコンビニエンスストアで気付かないうちにリュックに紛れ込んでいた【最恐スポットナビ】という一冊の雑誌を万引きしてしまいます。

帰宅後最恐スポットナビの【どんぶりさん】という特集ページに目を通した直後、健のスマホに文字化けした不可解なメッセージが届きナビが開始されます。

ナビが目的地に到着した時、『おかわりありますか』の言葉と共に健の目の前にどんぶりさんが現れ健は顔をくり抜かれてしまいます。

場面は変わり東都テレビの報道室で番組制作会社ポジットの社員達が集まり【顔くりぬき事件】の特集番組を組むための会議を行なっていました。

会議によって朝倉三緒、袋田巽がチームメンバーに選ばれ情報収集を始めます。

すると事件について重要な情報を持つ黒川敬介という男が現れ、死体は園芸用のシャベルで顔を抉り取られていること、事件のルーツは【鈍振村】と呼ばれる栃木県の限界集落の風習であることを伝えると不思議なナビの音声と共に去っていき、そのまま黒川敬介は失踪、その後顔をくり抜かれた状態で死亡しているのが福岡県の山中で発見されます。

貴重な情報源を失い困惑する二人を他所にまたしても事件は発生します。

今度の犠牲者は松永亮(まっちゃん)という男性動画実況配信者で、最恐スポットナビを手にし掲載されていた福岡県の山中の心霊スポットでどんぶりさんの犠牲になってしまいます。

黒川の死で二人の元に警視庁捜査一課の真壁駿が事情聴取のために尋ねてきます。

彼も最恐スポットナビを手にしており黒川と同じようなナビの音声と共に二人の元から去り失踪してしまいます。

警視庁捜査一課の市原史一が真壁の失踪と事情聴取で二人の元に訪れた同時刻、ニュースでは松永亮の遺体発見が取り上げられていました。

【承】夜葬 のあらすじ②

真相を探して

場面は松永亮の葬式会場に移り、亮の甥である誠也は亮の部屋で最恐スポットナビを見つけ父・俊成に見せます。

その後市原が葬式会場に訪れ俊成に亮の遺体は練馬で発見された事を告げ帰ります。

市原が去った後、誠也と俊成のスマホに文字化けメッセージが届きナビが開始され、二人は失踪してしまいます。

直後、会場付近で顔をくり抜かれた真壁の遺体が発見されます。

また場面は変わり青山有加里という女性ランナーが登場します。

有加里は足を痛めており治癒する方法を探す為に図書館を訪れます。

そこで最恐スポットナビを目にし好奇心で手に取ってしまいます。

帰宅後借りた覚えのない最恐スポットナビが手元にあることに気付いた有加里のスマホに文字化けメッセージとナビが入っており、ナビは徐々に自分に近付いて来ます。

恐怖と混乱で有加里は逃げ出し友人、夕季の元へ転がり込みますが捨てたはずのスマホが手元に戻っており、ナビの音声が更に恐怖を掻き立て有加里はまた逃走します。

逃走し続けた先で三緒と巽に出会い3人は見えない恐怖から逃走します。

有加里から話を聞いた三緒は最恐スポットナビが事件の鍵であると踏み市原と坂口へ電話をかける為、巽は買い出しの為に席を外してしまいます。

一人になった有加里の元へどんぶりさんが現れあっという間に有加里は姿を消すのでした。

有加里を捜索する三緒と巽の前に顔をくり抜かれた誠也と俊成の遺体が出現します。

同日、夕季の玄関に最恐スポットナビが出現すると同時に市原から電話があり最恐スポットナビは市原の手に渡ります。

最恐スポットナビから事件の情報収集をする市原に三緒から有加里が失踪し変わりに誠也と俊成の遺体を発見した事を告げられ、協力者の坂口とも連絡を取るようにと連絡先を教えられます。

そして場面は坂口へと移ります。

三緒の話から最恐スポットナビについて調べている坂口のガラケーに市原から文字化けしたメッセージが届くのでした。

【転】夜葬 のあらすじ③

終結を求めて

三緒と巽は親子の顔面くり抜き死体の取り調べが終わった後に坂口と連絡を取り、最恐スポットナビの出版元であるヴィンチ出版へと3人は向かうことになります。

一方の市原は音信不通になってしまっていました。

ヴィンチ出版に辿り着いた3人は最恐スポットナビはヴィンチ出版から発売されておらずパソコンのデータには最恐スポットナビを発売するための内容のデータはあったと言う事実と、存在しない本を手にした者が次々と変死している事を知ります。

最恐スポットナビのデータと既に出版されていた三冊のホラー単行本を持って3人はヴィンチ出版を後にします。

データは三緒と巽が誤って鈍振村の記事を見てしまわないように注意を払った坂口が、三冊の本は三緒が持ち帰りました。

帰宅した三緒は持ち帰った本の一冊を読み始めます。

まるで鈍振村の内容のような記事に差し掛かった時、三緒のスマホに文字化けしたメッセージが送られて来たのです。

なんと持ち帰った三冊はテーブルの上に置かれ、三緒は知らぬ間に最恐スポットナビを手にし、読んでしまっていたのです。

すぐさま目的地が三緒のいる場所に設定されナビが開始されます。

三緒は恐怖におののきながらも冷静に分析し、どんぶりさんに居場所が特定されてはいけない事と誰かと一緒にいる間は特定されていてもどんぶりさんは現れない事を考え出します。

そしてメッセージに返信してみると何が起こるのかを思い付いた三緒は「私のところには来ないでください」と返信します。

すると目的地が変更され巽が次の目的地に設定されてしまい夜葬はさらに暴走を始めるのでした。

目的地変更にも関わらず三緒の手元に残る最恐スポットナビ、どんぶりさんに追われる巽は力を合わせ負の連鎖を断ち切る為に鈍振村へと向かいます。

【結】夜葬 のあらすじ④

終わらぬ恐怖

鈍振村に辿り着いた三緒と巽は最恐スポットナビに掲載されている情報以外に夜葬を終わらせる手がかりがないか探し始めます。

鈍振村の公民館で発見した日誌、最初に出会った黒川敬介の話と最恐スポットナビの内容から三緒は”使者の顔をくり抜きそれを【どんぶりさん】と呼ぶこの村には火葬は無く土葬が主流だった為、顔をくり抜くのも穴を掘るのもシャベルを使用していたが、そのシャベルをヴィンチ出版の人が持ち出した事で夜葬が暴走を始めてしまったので、シャベルを元に戻せば終わらせられるのではないか。

【どんぶり地蔵横の墓】に答えがあるのではないか”と言う仮説を立てます。

地蔵を見つけた二人の元にどんぶりさんの位置を告げるナビ音声が響き、やがてそれは夜葬についての解説変わっていきます。

どんぶりさんに追いつかれた巽はどんぶりさんが持っているであろうシャベルを取り戻す為に立ち向かい、三緒は地蔵の元へ向かいます。

地蔵に辿り着いた三緒の目の前には有加里の遺体と、顔をはめ込まれた地蔵群がありました。

すると市原の顔がはめ込まれた地蔵が三緒に話しかけます。

市原の言う通りに動き、やはりあるべき場所にシャベルがない事を確認した三緒の背後に「おかわりありますか」の言葉と共に巽が現れます。

シャベルを受け取った三緒が元の場所に戻すと、巽の顔が剥がれ落ちるのでした。

場面は坂口へ変わります。

坂口は会社のために最恐スポットナビのデータを東都テレビの長尾総一郎と渡してしまいます。

長尾は一連の事件を特番にし放送するのでした。

後に長尾の前に少年が現れ最恐スポットナビのどんぶりさんのページを読むようにせがみます。

その記事を丁寧に読んであげた長尾のスマホに「夜葬が、開始されました」のアナウンス、直後文字化けメッセージが届くのでした。

動揺する長尾の前に顔をくり抜かれた三緒が現れ、そして長尾は姿を消してしまうのでした。

夜葬 を読んだ読書感想

想像しただけで背筋か凍るような忌まわしい風習”夜葬”が何処にでも存在するようなホラー雑誌が媒介となり、スマホには文字化けした不可解なメッセージと何かが徐々に自分の居場所に近づいてくる事を告げるナビゲーションが届くと言う、自分の身の回りに当たり前に存在しているもの二つが恐怖を運んでくる内容に、しばらくの間はスマホの通知が怖くなります。

めまぐるしく変わってゆく展開と恐怖を引き立たせるストレート且つ細かな情景描写がじわじわと迫りくる恐怖を引き立て夜葬の暴走の根源を紐解いていくので一度読み進めると気になって最後まで読み切ってしまいたくなります。

ホラーストーリーがお好きな方にはお勧めしたい作品です。

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