著者:東野圭吾 2010年1月に光文社から出版
カッコウの卵は誰のものの主要登場人物
緋田宏昌(ひだひろまさ)
スキーの元オリンピック日本代表選手。緋田風美の父親。
緋田風美(ひだかざみ)
新世開発のスキー部に所属。宏昌と智代の娘でFパターン遺伝子を持っている。
緋田智代(ひだともよ)
風美の母。風美が2歳になる前に自死。
柚木洋輔(ゆずきようすけ)
新世開発スポーツ科学研究所の副所長。もともと大学の准教授で遺伝子の研究に取り組んでいた。
鳥越伸吾(とりごえしんご)
新世開発スキー部ジュニアクラブに所属する中学生。Bパターン遺伝子を持っている。
カッコウの卵は誰のもの の簡単なあらすじ
緋田宏昌は元オリンピックのスキー日本代表選手です。
彼はある日新世開発スポーツ科学研究所の柚木洋輔という人物から、宏昌と娘の風美の遺伝子を調べたいと頼まれます。
しかし宏昌はそれを断ります。
娘の風美は天才スキーヤーでしたが、そこには誰にも知られてはいけない秘密があったのです。
その折に、新世開発スキー部に風美をメンバーから外すように指示する脅迫状が届きます。
その後、風美が乗る予定だったバスが事故を起こして、負傷者が出てしまいます。
カッコウの卵は誰のもの の起承転結
【起】カッコウの卵は誰のもの のあらすじ①
緋田宏昌の娘、風美が誕生したのは宏昌がヨーロッパに練習に行っていた19年前のことです。
そして、母の緋田智代は風美が2歳になる前にマンションから飛び降り自殺をしていました。
宏昌が遺品の整理をしていると、智代の遺品の中から「新生児行方不明事件」という記事を発見します。
事件の発生日は風美の誕生日と非常に近いことがわかります。
胸がざわついた宏昌がその記事の事件について調べてみると、智代は流産をしていたことが判明しました。
では一体、風美は誰の子供なのだろうか、と考える宏昌。
記事によると、行方不明になった新生児の父は上条伸行という男で、彼は建設会社の社長をしているそうです。
その折に、新世開発スキー部に一通の脅迫状が届きました。
「風美をメンバーから外して、ワールドカップにも出場させるな」という内容です。
さらに、「指示に従わなければ風美の身に危険が及ぶ」とも書いてありました。
そして、宏昌のもとには上条伸行が接触してきました。
彼は持参した遺伝子と風美の遺伝子をDNA鑑定にかけてほしいというのです。
さらに、彼には白血病の息子がいることが発覚します。
宏昌は「上条が自分に近づいてきたのは息子を治療するため」だと予想します。
【承】カッコウの卵は誰のもの のあらすじ②
風美が乗車する予定だったバスが交通事故を起こします。
たまたま、風美が携帯電話を忘れてそのバスに乗車していなかったため、風美が負傷することはありませんでした。
しかし、風美のファンだと身分を偽ってバスに乗車していた上条伸行は意識不明の重体となります。
警察はこのバス事故と脅迫状に関連があるとして、調査を始めます。
すると、上条が所持していたパソコンから脅迫文がみつかりました。
一方、DNA鑑定の結果が出ました。
上条が持参した血から風美と同じFパターン遺伝子が検出され、その血の女性が風美の母親であることがわかりました。
風美の両親は上条夫婦だったことになります。
しかし、それに違和感を覚える宏昌。
上条伸行の見舞いに来た伸行の妻・世津子の顔が全く風美に似ていないのです。
さらに、世津子の血液型がAB型だとわかります。
AB型の親からO型の風美が生まれることはありえないのです。
果たして、風美の真の両親は誰なのでしょうか。
【転】カッコウの卵は誰のもの のあらすじ③
風美がもつFパターン遺伝子は母親から受け継がれたものです。
柚木はDNA鑑定の結果から、緋田智代に興味を持ち始めます。
柚木は入手した智代の写真に平行棒が映っていることに気づきます。
Fパターン遺伝子は器械体操をすることにも向いているのです。
しかし、その写真の中で実際に器械体操をしていたのは智代ではなく彼女の友人の畑中弘美という人物でした。
畑中について調べると、彼女は風美にそっくりの容姿で、既に亡くなっていました。
弘美は19年前に自分の家に火をつけて女児とともに亡くなったそうです。
そして弘美はその事件の前に女児を出産していたそうです。
その女児こそが風美なのではないか、と柚木は真相にたどり着きます。
風美の父親が上条伸行で母親が畑中弘美だというのです。
しかし、意識不明だった上条の容態は急変し彼は亡くなってしまいました。
しかしまだ、脅迫状の送り主が誰だったのかわかっていません。
一体、脅迫状の送り主とその目的は何なのでしょうか。
【結】カッコウの卵は誰のもの のあらすじ④
風美が所属する新世開発スキー部のジュニアクラブに、鳥越伸吾という中学生が所属していました。
伸吾は金銭的な理由からやりたくもないクロスカントリーをやらされています。
しかしアーティストになることが彼の本当の夢でした。
そして、脅迫状の事件について伸吾の父親の克哉が自首してきます。
風美が乗車する予定だったバスに細工をしたのも彼だということです。
克哉は、自分が金銭的に不安定なせいで息子がクロスカントリーをやらなければならないことに罪悪感を感じていました。
その折に彼にメールと特殊な機会、さらに100万円の報酬が届きます。
風美を負傷させろ、そうすれば息子をクロスカントリーから解放して克哉の職も保障するという内容のものでした。
結果、彼はその指示に従って犯行を行いました。
では、克哉に犯行を指示したのは誰だったのか。
それは上条伸行の息子の文也でした。
文也は母の世津子に風美の正体がバレることを恐れていました。
結果的に、世津子は真実を知ることなく、すべての事件が解決しました。
文也は真実を隠し通すために遺書を用意して自死します。
真実は文也が宏昌に書いた手紙にのみ書かれていました。
その手紙の最後には「どうか最後まで風美の父親でいてください」と書かれていました。
カッコウの卵は誰のもの を読んだ読書感想
東野圭吾さんらしい、非常に凝った内容の長編小説です。
風美の真の両親はいったい誰なのか、じっくりと考えながら読むと面白いです。
物語の展開がころころと変わっていくのに、話に一貫性と説得力があるのは東野圭吾さんだからこそなせる業です。
物語の中には複数の謎が隠されています。
一回読んだだけで理解するのは難しいので、複数回読んで少しづつ謎を解き明かしていくのが良いかもしれません。
最後に書かれる文也が宏昌にあてた手紙は、「家族とはいったい何なのか?」と考えさせられます。
一つの答えを与えず、示唆的な結末を提供してくれるのもこの小説の面白いポイントです。
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