「秘密」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

秘密(東野圭吾)

【ネタバレ有り】秘密 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:東野圭吾 1998年9月に文藝春秋から出版

秘密の主要登場人物

杉田平介(すぎたへいすけ)
本作の主人公。自動車部品メーカーの生産工場に勤務する技術者で妻の直子と娘の藻奈美との間で葛藤する

杉田直子(すぎたなおこ)
平介の妻。スキーバスの転落事故により命を失う。

杉田藻奈美(すぎたもなみ)
平介の娘。スキーバスの転落事故に合うが、奇跡的に一命をとりとめる

梶川幸広(かじかわゆきひろ)
スキーバスの運転手

根岸文也(かじかわふみや)
幸広の息子、藻奈美の婚約者

秘密 の見どころ!

・平凡な家族を襲う予想外の出来事

・答えの出ない問題に直面した父親の葛藤

・夫を思う、妻の深い愛情

秘密 の簡単なあらすじ

杉田平介は自動車部品メーカーの生産工場に勤務する技術者です。

妻(直子)と娘(藻奈美)との3人でつつましくそして幸せに暮らしています。

そんなある日、直子と藻奈美がスキーバスでの転落事故に遭います。

藻奈美は一時は回復不可能と告げられますが、その後奇跡的に一命をとりとめます。

しかし、直子は亡くなってしまいます。

ところが、藻奈美がようやく意識を取り戻した時、驚くべきことが起こります。

藻奈美の体に宿っていたのは、直美の意識でした。

平介はこの驚くべき現象に途惑いますが、この事態を周囲に気付かれないように、父と娘としての生活を始めます。

しかし、この偽りの生活は、藻奈美の体が成長するにつれて苦しいものになります。

そして、二人の心のずれが限界を迎えようとした時、藻奈美の体から直子の意識が消え、藻奈美の意識が戻ってきたのでした。

秘密 の起承転結

【起】秘密 のあらすじ①

体は娘、心は妻の不思議な現象

主人公・杉田平助は自動車部品のメーカーで働く平凡な39歳です。

妻の直美と11歳の娘・藻奈美とつつましいながらも幸せな生活を送っていました。

しかし、ある冬の日、直子の実家に行くために直子と藻奈美が乗ったスキーバスが、崖から転落してしまうのです。

二人は病院に運ばれますが、直子は亡くなってしまいます。

藻奈美も一時は回復不能だと告げられますが、その後、奇跡的に一命をとりとめます。

平介は祈るような気持ちで藻奈美の目覚めを待ちます。

しかし、その平介を衝撃が襲います。

目覚めた藻奈美の意識は、直子のものだったのです。

予想もしていなかった出来事に平介は混乱しますが、周囲の人にこの事態を知られてしまわないように、平静を装って父と娘として生活をしていこうと決意します。

この奇妙な生活に慣れてくると、平介は娘と妻の二人が帰ってきたようで、幸せを感じます。

しかし、その気持ちも長くは続きませんでした。

平介が妻を愛そうとしても、その妻の体は11歳の娘のものなのです。

直子の方から誘ってくることもありましたが、どうしても平介には親近相姦をしているような気持ちになってしまい、積極的になることはできません。

この状況を振り払うために、平介は心は直子であるにも関わらず、藻奈美に対するような態度で接するようになります。

そうしていくうちに、自然と直子と平介の間には、距離が生まれてしまいます。

しかし、直子が同級生の男の子に会ったりすると、やはり男としての嫉妬心が芽生えてきて、看過することができません。

平介はそのジレンマに苦しむようになります。

一方で直子は、夫である平介が、自分と距離を置こうとすることに悲しみを覚えつつも、戻ってきた青春時代のキラキラした日々に喜びます。

学生時代にできなかったことに挑戦したり、若い友人たちと交流したりと、毎日充実した日々を送ります。

【承】秘密 のあらすじ②

バスの転落事故が起きた背景

ある日、平介は妻を亡くした事故の被害者の会に出席します。

その会には、事故を起こして、そのまま亡くなった運転手(梶川幸広)の妻である梶川征子も出席していました。

征子は、夫の起こしたこの大変な事故について謝罪します。

しかし、多くの犠牲者を生んだ事故を起こした幸広を、誰も決して許そうとはしません。

被害者の会の解散後、帰宅しようと駅に向かっていた平介は、偶然新宿駅で体調が優れないのか、ふらふらと倒れてしまう征子を見かけます。

見過ごすことができなかった平介はすぐに彼女に駆け寄り、タクシーで自宅まで送り届けます。

それを機に平介は、征子と時々連絡を取り合うようになることになります。

そして次第に、平介は、征子から家庭内の話も聞かされるようになります。

征子は、スキーバスの事故が起こった背景についても言及しました。

実は、幸広は、別れた奥さんとその息子に仕送りをするために、無理を押して超過労働をしていたのです。

それによる過労が事故の原因だったのです。

その話を聞いた平介は、幸広に対して不思議な感情を持つようになります。

今までは、平介にとって幸広は、何よりも大切な家族を奪った憎むべき存在でした。

しかし、その幸広も家族を愛する一人の父親でした。

その人間像を知ることで、平介は幸広に対しての憎しみが薄れていくことに気付きます。

【転】秘密 のあらすじ③

夫であることを断ち切らねばならない切なさ

幸広に対する憎しみが薄れても、平介と直美の意識を持つ藻奈美との暮らしは正解を見つけることができませんでした。

平介は、妻である直子への想いを振り切るかのごとく、バス事故後に親しくなった藻奈美の担任・多恵子に想いを寄せていきます。

しかし、藻奈美の体に残る直子の意識のことを考えると、多恵子との恋に積極的になることはできませんでした。

この状況で誰かを愛してしまうことは、直子に対する裏切りだと考えたのです。

平介は、多恵子との恋を諦め、自分の気持ちにふたをします。

また、その一方で直子は高校へ進学します。

そして、出会った相馬というテニス部の先輩に恋心を抱くようになります。

直子と相馬との仲は順調に近づいていき、クリスマスにデートをする約束をします。

もちろん、この約束は平介には内緒でした。

しかし、平介は直子に盗聴器を仕掛けていました。

平介は、直子と夫婦として生活することは諦めていましたが、妻への思いは捨てきれていませんでした。

この思いがつのったあまり、あまりにも充実した学生生活を送る直子への不信感へと変わり、盗聴器をしかけるまでに至ったのです。

もちろん二人の逢瀬はすぐに平介に知られてしまいます。

そしてクリスマスの日。

相馬と直子が待ち合わせの場所で落ち合うと、そこに平介がやってきます。

直子は思いがけない平介の登場に呆然とします。

平介は相馬に、藻奈美は相馬とは違う次元に生きていると告げ、強引に直子を連れて帰ります。

家に帰り、納得がいかないままの直子に対して、平介は自分だって教師の多恵子に気がありながらも、直子を思うがために一歩も前に進まなかったことを説明します。

その気持ちを知った直子は平介に夫婦としての関係を提案し、二人はベッドに入ります。

しかし、心は直子でも体は藻奈美であるその体に、平介は触れることもできず、虚しく時間だけが過ぎていきます。

平介はそこで自分は男として直子を幸せにできないことを知るのでした。

【結】秘密 のあらすじ④

直子が残した最後の秘密とは

その後、平介は偶然、スキーバス事故を引き起こした幸広の息子が、幸広と血が繋がっていなかったということを知ります。

しかし、幸広は血の繋がらない息子を愛し、息子に多額の教育費を送り続けていたのです。

その生き様に心を打たれ、自分も心から直子の幸せのためにどうすれば良いかを考えるようになっていきます。

すると同じ頃、不思議な現象が藻奈美の体にも起こり始めます。

藻奈美の意識が戻り始め、直子と藻奈美の2つの人格が入れ替わるようになっていくのです。

その後、事故を起こした運転手幸広の息子、文也とも偶然出合う機会があり、平介はこれは運命であると感じるようになります。

ある日、藻奈美に頼まれて直子との思い出の場所、山下公園を訪れます。

ベンチで海を見ながら、平介と直子の思い出の曲である松任谷由実の曲を流すと、突然また直子の人格が現れ、「ありがとう。

さようなら。

忘れないでね」と告げ、直子はそのまま現れなくなってしまいます。

平介は驚き、悲しみますが、その後は平介と藻奈美の平和な生活が続きました。

そして数年後。

藻奈美は文也という男性との結婚が決まります。

式で使う時計を直すために時計店へ訪れた平介は、直子が生きている時テディベアに縫い込んだ指輪を藻奈美が取り出して自分の指輪用に作りかえさせたことを知ります。

平介はそこで直子の人格は実は消えておらず、平介と永遠の別れを告げるためあえて演技をしていた最後の秘密を知るのでした。

秘密 を読んだ読書感想

私は娘を持つ父親としてこの作品を読んだ時、いずれ娘が嫁いでいくことの辛さと、いつか家内と死に別れる二つの辛さを経験したようなとてつもなく切ない気持ちになり思わず泣いてしまいました。

また東野圭吾さんがこの作品を書いた年齢は今の私と同じ40歳くらいの年齢と知り、同じ年齢でこれだけの死生観を持たれていたと思うと本当に驚きました。

この本を読見終わった時には本当に切なく胸が苦しくなりましたが、それと同時に生きていくことの厳しさと、孤独さも感じました。

今生きていることに感謝して家族を愛し、一日一日を大切に生きていきたいと思っています。

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