「パラドックス13」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|東野圭吾

パラドックス13

著者:東野圭吾 2014年5月15日に講談社から出版

パラドックス13の主要登場人物

久我冬樹(くがふゆき)
本作の主な主人公。警察官で所轄の巡査。誠哉の弟。P-13現象により、無人の東京に取り残される。

久我誠哉(くがせいや)
冬樹の兄。警察官で管理官。P-13現象により無人の東京に取り残される。

中原明日香(なかはらあすか)
女子高生。P-13現象により無人の東京に取り残される。

富田菜々美(とみたななみ)
看護師。P-13現象により無人の東京に取り残される。

河瀬(かわせ)
ヤクザ。インフルエンザに罹っていたところ冬樹たちに助けられる。P-13現象により無人の東京に取り残される。

パラドックス13 の簡単なあらすじ

日米共同研究により、P-13現象という日本時間3月13日午後1時13分13秒から13秒間、予測できない何かが地球で起きる事が分かりました。

P-13現象が起きる当日、誠哉と冬樹は強盗殺人事件の犯人を追っていて、二人とも拳銃で撃たれますが、冬樹が我にかえるとそこは無人の東京でした。

生き延びる中で他の13人との出会いと別れを繰り返し、悪化していく状況の中で分かった事は、この世界はパラドックスの辻褄合わせのためにあり、13人は現象が起きた際に亡くなっていた事、またもう一度P-13現象が起きる事でした。

再び現象が起きた時世界は修正され、生き残った人だけが元の世界で生きている世界へと変わったのでした。

パラドックス13 の起承転結

【起】パラドックス13 のあらすじ①

 

3月13日午後1時13分13秒

日米共同研究により、P-13現象という日本時間3月13日午後1時13分13秒から13秒間、予測できない何かが地球で起きる事が総理へと伝えられました。

専門家の話を聞くところによると、何かが起きるが人々は実感出来ない、歴史に関わる事が13秒の間に起きてしまうとどうなるか分からないという事でした。

混乱を防ぐため国民へは伝えず、事故や事件が何も起きないように国で徹底する事となりました。

P-13現象が起きる当日、警察官の誠哉は強盗殺人事件の犯人をもう少しで捕まえられるという所まで来ていました。

その最中、上司から午後1時13分前後は動くなと指示を受けましたが、犯人を逃がすわけにはいきません。

さらに所轄の弟・冬樹が犯人逮捕しようと乱入します。

一度は誠哉に止められますが、制止を振り切り犯人を捕まえようと飛び出してしまいます。

逮捕目前で誠哉が犯人に拳銃で撃たれ、直後に冬樹も拳銃で撃たれてしまいます。

しかし打たれたはずの冬樹が我に返って目の当たりにしたのは、人も動物も消えた無人の東京でした。

【承】パラドックス13 のあらすじ②

 

残された13人

さっきまで人がいた気配がありますが、全ての人や動物だけが突然消えてしまったような世界で、他の生存者を冬樹は探しました。

やがて母と娘の親子、太った青年と出会い、ラジオから聞こえる呼びかけに応じて東京駅に行くと、会社員の男性2人、老夫婦、看護師の富田菜々美、女子高生の中原明日香と兄・誠哉と合流しました。

至る所で火災が起き、地震も起きる中で、より安全な場所を探して移動していると、赤ん坊を発見したり、怪我で意識の無くなった老夫婦の奥さんの安楽死を決断したりしました。

老夫婦の主人は、特殊な状況での道徳とは何かをみんなに問いかけます。

移動中、誠哉は様子を見に行った警視庁本部と総理官邸でP-13現象の存在を知り、総理官邸に対策本部が設置されていた事を知りました。

上司から受けた「動くな」という指示とP-13現象が今回の件に関係していると踏んだ誠哉は、避難場所にも最適だと、みんなで総理官邸を目指す事を提案しました。

【転】パラドックス13 のあらすじ③

 

P-13現象とは

総理官邸を目指す途中に寄ったホテルで、インフルエンザにかかったヤクザの河瀬と出会います。

ヤクザという事で助けることを反対する者もいましたが、特殊な世界では一人の人間でしかなく、どんな人間でも危害を加える人でなければ良いとして、助けることにしました。

他の生存者が次々にインフルエンザにかかる中、冬樹と明日香がなんとか治療薬を手にいれますが、老夫婦の主人が命を落としてしまいます。

さらに総理官邸を目指して再び移動をする中、度重なる地震と大雨で足場が崩れ、青年も消えてしまいます。

みんなが項垂れる中、誠哉からこの世界はパラドックスの辻褄合わせに作られたものだと聞かされます。

総理官邸に到着した一行が見たものは、P-13現象の資料でした。

資料を読み解いたところ、何も起きなければ時間は普通に流れていくだけだが、P-13現象が起きるとその後の13秒間は宇宙からすっぽり抜け落ちてしまうと言います。

13秒後の26秒には、13秒前にタイムスリップして物質も精神も元に戻ることになるのですが、最大の問題はP-13現象中の13秒間に存在しないもの(死者)はタイムスリップの対象にならないため、数学的矛盾(パラドックス)を回避するための現象が起きると言います。

その回避現象が今冬樹たちのいる世界で、元の世界で冬樹たち13人は亡くなった存在だとわかりました。

納得する人、ショックを受ける人など様々で、悲しみから菜々美が自殺を図りますが、誠哉に止められ思い留まります。

やがて食料も尽きるであろう状況に、誠哉から、生き延びるために食料も人口も増やして新しい世界を作るという提案が上がります。

人口を増やすという言葉に対して明日香を中心に女性陣は反発し、別行動を考え始めます。

【結】パラドックス13 のあらすじ④

 

再び起きるP-13現象

暴風雨と地震が起き続けている事から、これらは本来なら存在しないはずの自分たちを消すために起きているのではないかと誠哉は考え始めます。

みんなが不穏な空気になっていると、暇つぶしにとP-13現象の資料を読み解いていた河瀬から、もう一度P-13現象が起きる事が分かったと告げられます。

次のP-13現象は、前回消失した13秒間という歪みを補正する現象だと言います。

河瀬は、前と同じように13秒間の間に死ぬ事で元の世界に戻れるのではないかと仮説を立てました。

それを聞いた一行は仮説を信じて動く人、ありえないと否定する人と様々で、皆の気持ちはバラバラになっていきます。

結局、誠哉率いる5人はこの世界で生きていくため、より安全な場所を求めて出発し、冬樹や明日香、河瀬など5人は総理官邸に残りP-13現象で死ぬ選択をしました。

その後再度地震が起き官邸は崩れ、出発したはずの誠哉たちも身動きが取れず戻ってくる事となりました。

地震で会社員の男性一人が天井の下敷きで亡くなり、次のP-13現象まで22時間となったその時、水柱に襲われ菜々美が流されます。

誠哉が助けに行き菜々美は無事でしたが、建物が崩れて誠哉は助かりませんでした。

その後も度重なる地震と洪水、雷や雹が降る絶望的な状況で冬樹は、宇宙が世界の矛盾である自分たちを消そうとしているこの世界で生き延びたら、再び矛盾が生じて元の世界に戻れるのではないかと思い立ちます。

生き延びようと冬樹がみんなに声をかけたその直後、再びP-13現象が起き、意識は消え、最後まで生き延びた人々は、別世界に居た記憶がない状態で3月13日1時13分13秒の元の世界に戻ったのでした。

別世界で亡くなった人だけが居ない世界に変わり、冬樹は病院の待合室で明日香と出会います。

冬樹の持っていた雑誌をあげた事で明日香は今度お礼すると言い去っていき、冬樹は病院に来る楽しみが出来たと思うのでした。

パラドックス13 を読んだ読書感想

パラドックス13は、東野圭吾作の小説が多数ある中でも少しSFチックな作品です。

P-13現象という謎の現象に13人の人間が巻き込まれ、無人の東京をさまよう中で赤ちゃんから老人まで立場の違う様々な人が関わり、道徳とは、倫理とは、善悪とは何かを考えていくというような作品です。

常識が覆るような衝撃的な展開で、もし自分が主人公たちと同じようにP-13現象に巻き込まれたとしたら、どんな行動をとっただろうとどうしても考えさせられました。

意識不明のご老婦の安楽死を決断する、少ない赤ちゃんのミルクを盗んだ青年をどうするかなど、どれだけひどい状況も、普段当たり前に「悪で道徳的ではない事」も、特殊な環境下では完全に悪とは言えなくなってしまうなんて、想像もできないような事でした。

P-13現象というものは架空の話ですが、普段考えられない状況や物事を考えられるというのは小説の醍醐味なのではないかと思いました。

題材としては少し重たい話ですが、話の面白さに一気に読めてしまうので、まだ読んだ事のない人に是非読んで欲しいと思います。

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