著者:道尾秀介 2005年1月に幻冬舎から出版
背の眼【上・下】の主要登場人物
真備庄介(まきびしょうすけ)
過去に嫁を事故で亡くしたことから幽霊の存在について研究している、イケメンオカルト研究者です。
道尾秀介(みちおしゅうすけ)
30代のホラー作家で東京都に住んでいますが、元々の出身は三重県です。ミステリーものの物語が好みです。
北見凜(きたみりん)
真備の心霊研究所で助手を務めているアルバイトです。霊感が強く他人の心や過去を知る事が出来ます。
歌川春芳(うたがわはるよし)
白峠村という村で「あきよし荘」という宿を経営する男性です。しかし村へ移住してから直ぐに嫁を白血病で亡くしています。
呂坂幹男(ろさかみきお)
白峠村の隣町のに住んでいる男性。母親を精神的に虐待し彼女が鬱から自死させてしまいます。その後に母親の遺書を見て自分も自殺してしまいます。
背の眼【上・下】 の簡単なあらすじ
道夫が聞く「レエオグロアラダロゴ?」という言葉が全ての始まりです。
この村では子供が神隠しにあうという出来事が度々起こっています。
道夫が歩いた川縁はまさに神隠し事件の一番初めの犠牲者の少年の頭が発見された場所だったのです。
道夫は怖くなってしまいます。
そこで道尾は東京へ逃げ帰り、幽霊について研究する知り合いの真備に体験談を持ちかけます。
真備は丁度、白峠村と愛染町で続いている自死した人物の知り合い達から同じ様な案件について相談を受けています。
自死した人々が死の寸前に写真を撮った場合は、背中に不気味な目が映っています。
自死はその目が死を招いたのではないかという噂が二つの町村では広まっていきます。
背の眼【上・下】 の起承転結
【起】背の眼【上・下】 のあらすじ①
道夫が聞く「レエオ・・・グロ・・・アラダ・・・ロゴ?」という言葉が全ての始まりです。
白峠村に来た道尾はたまたまそれを川縁で聞いてしまいます。
この村では子供が神隠しにあうという出来事が度々起こっています。
そう…道夫が歩いた川縁はまさに神隠し事件の一番初めの犠牲者の少年の頭が発見された場所だったのです。
道夫が聞いた謎の声は果たして、その子供の幽霊のものなのか?道夫は怖くなってしまいます。
そこで道尾は東京へ逃げ帰り、幽霊について研究する知り合いの、真備に体験談を持ちかけます。
同時期に真備は丁度、白峠村と愛染町で続いている自死した人物の知り合い達から同じ様な案件について相談を受けています。
かつて事故で亡くした妻の霊に何としても会いたいという理由で幽霊を研究する真備にとっては、またとないチャンスです。
そこで、義理の妹である助手やホラー作家の道夫を連れ、異色の三人組は白峠村へ怪奇現象の調査に向かいます。
【承】背の眼【上・下】 のあらすじ②
白峠村と愛染町で写真を撮影した場合は背中に目が写ってしまい、そしてその目を背中に写した人物は直ぐに自死してしまうという謎の現象の噂で町村は持ちきりのはずです。
実際に、事実として真備の元にはその異様な噂を確かめて欲しいという依頼が来ていますし、道夫自身も不気味な声を数回聞いているのです。
しかし、町や村の住人は意外にも冷静な人物が多く、この怪奇現象を信じている人は余り居ないようです。
そもそもこんなホラーや幽霊の類の現象なんてあるはずが無いと信じていました。
むしろ現実的に考えれば、目と自殺の関係性は薄いのでは無いかというのが町村の人達の考えです。
偶々写真の人物が何か悩み事を抱えていた為に自死しているという理由付けの方がよほど自然だというのが町村の人々の見解です。
ある意味で普通は不気味がるはずなのに、異様な冷静さが町村の人々の中には雰囲気として流れています。
それは逆に異様といえる雰囲気でもあります。
【転】背の眼【上・下】 のあらすじ③
町村では自死などは軽視されていました。
そもそも自死は個人の事情と片付けていたのです。
しかし、歌川の嫁の死、糠沢の孫の神隠し、愛染町で自死する呂坂…と事件は続いて行きます。
そしてその遺体を見つけてしまった亮平君など、次々に町村の様々な人々が登場していきます。
そして村社会故にその関係性は深く密なものであります。
町村の神隠しは2年間続いていき、更なる悲劇が続いていきます。
しかし、事件の結末は単なる人間の狂気です。
そもそもの原因は歌川の嫁が白血病で死んだ事に起因していたのです。
嫁の病死に絶望した歌川は神隠しと称して数々の子供達の首を刈り取っていったのです。
歌川の狂気はやはり本人の心持が大きく、自分の嫁の病死を受け止められなかった事にあります。
歌川春芳は嫁を失った絶望に打ちひしがれ、やがて第二の人格として嫁の人格が芽生えます。
「何故自分だけ死んだのか?」というその怨念にも似た人格は、子供達を殺して行くことで恨み辛みを発散させようとしていきます。
結局子供達の2年間に及ぶ神隠しの真相は、死に対する絶望を他人を傷つけて癒すという醜悪な人間の仕業です。
【結】背の眼【上・下】 のあらすじ④
狂人となった犯人歌川の正体については一種の憑依現象でした。
あるいは精神的に錯乱した人間の狂気が神隠しの動機です。
歌川にはあくまで覚えの無い殺人という結末になります。
なにせ歌川自身の人格が神隠しを実行していたわけではないのです。
しかし道夫の聞いた声の正体は何だったのかという疑問や、写真に写っていた背中の目の正体は何だったのかという疑問が残ります。
幽霊は本当に存在するのかを調べることが幽霊研究家の真備の関心の中心であり、幽霊が存在したとすれば自分の妻にもう一度会いたいというのが彼の最大の目標です。
その為に今回起こった怪奇現象の調査を行なったのです。
ただ、結果は神隠しは人為的なものであるという結末です。
しかし、真備にとって唯一光明をもたらす人物が登場します。
少年です。
彼は真備に「ずっと近くで見守っている」という言葉を送ります。
この言葉で真備は救われます。
自分には…見えないし聞こえないが、確かに妻が霊体として存在する可能性が示唆されたのです。
背の眼【上・下】 を読んだ読書感想
ホラーかつミステリーかつサスペンスな物語なのに、最後はほっこりした気持ちになる物語は初めて読みます。
作中では中盤は怖目の描写や次々と人々が死んでいくため、陰鬱な気分になりますが、主要な登場人物の霊感関連の特殊能力には驚かされます。
しかし、肝心の主人公は霊感ゼロであるのがこの物語のキモなのかなとも思います。
怪奇現象は結局は霊の仕業でも天狗の仕業でも無く、人を殺すのは人であるという部分もリアリティを感じます。
正直、歌川を極悪人だと言い切れない部分も人情味があります。
そして、ラストの少年の言葉に真備が救われるシーンは感動的です。
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