「トリニティ、トリニティ、トリニティ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小林エリカ

「トリニティ、トリニティ、トリニティ」

著者:小林エリカ 2019年10月に集英社から出版

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トリニティ、トリニティ、トリニティの主要登場人物

私(わたし)
物語の語り手。浄水器のカートリッジを製造する会社に勤務。わかれた夫との間に1女を授かる。

母(はは)
私の母親。 レース編み教室の講師を退職して現在は無職。

娘(むすめ)
私の娘。中学生。

妹(いもうと)
私の妹。 ウェブ製作会社の社員。

光子(みつこ)
母の友人。 アンティークショップの経営者。

トリニティ、トリニティ、トリニティ の簡単なあらすじ

トリニティと呼ばれる新種の病気に冒された高齢者たちが、奇行を繰り返すようなったのは原発事故の直後からです。

トリニティたちはオリンピックに合わせて大規模なテロを計画していて、私の母もそのひとりとして加担してしまいます。

開会式当日に失踪した母を追って私が会場へたどり着いた時には、既にテロが成功していたのでした。

トリニティ、トリニティ、トリニティ の起承転結

【起】トリニティ、トリニティ、トリニティ のあらすじ①

 

ふたつのオリンピックに挟まれた1軒の家

離婚して他に行く当てもお金もなかった私は娘とふたりで実家に居候していましたが、2019年の秋に母が庭で転倒して骨折してしまいました。

歩けなくなった母はすぐにいろいろなことが思い出せなくなり、リハビリに通わせつつ介護が必要になっていきます。

家を更地にして土地を高値で売却して、広々としたタワーマンションに引っ越すことを思い付いたのは私の妹です。

独り暮らしのために家賃を払い続けるのが勿体ないという妹は、マンションであれば同居して母の面倒を見ることを了承してくれました。

1964年の東京オリンピックの年に建てられた家は、再びオリンピックが開催される2020年に呆気なく取り壊されます。

毎日のデイサービスによって少しずつ足が良くなっていた母が、再び転んで入院したのはオリンピック開会式の日です。

薄暗い6人部屋の病室には妹と13歳になった娘がパイプ椅子に腰かけて、ベッドの正面に設置されたテレビで聖火リレーを眺めていました。

この日は国民の祝日でしたが、私は妹と娘をベッドサイドに残したまま出勤しなければなりません。

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【承】トリニティ、トリニティ、トリニティ のあらすじ②

 

不幸の石の輝きに魅せられた人々

私の勤め先は浄水器のカートリッジを製造している小さなメーカーで、オリンピックに合わせて健康支援キャンペーンをやっているために大忙しです。

埼京線に乗って会社へ向かう途中で、私は黒く光った塊を握り締めて座席に座った70歳くらいの男性を目撃しました。

「不幸の石」だと勘違いした乗客のせいで車内には緊張感が高まりますが、ただのチョコレートだと分かって騒ぎは収まります。

この街のあちこちで老人たちが不幸の石を持ち歩くようになったのは、大きな地震と原子力発電所の事故があった9年前からです。

放射性量の高い物質に執着してしまう新種の病気は、「トリニティ」と呼ばれるようになりました。

中には国会議事堂前で放射能に汚染された一万円札をまき散らしたり、福島第1原子力発電所に押し入ったり逮捕者まで出始めています。

容疑者がみな一様に「聖ヨアヒムの谷からやって来た」と主張していることから、警察は何らかのテロ組織との繋がりを捜査中です。

聖ヨアヒムとはチェコのプラハから車で3時間程度離れた場所にあり、母はこの場所へ私が出産する直前に光子という友人と一緒にアンティークの買い付けに行ったことがあります。

【転】トリニティ、トリニティ、トリニティ のあらすじ③

 

狙われた祭典

見知らぬ番号の着信があったために昼休みに通話ボタンをおしてみると、母の弟子だと名乗る女性とつながります。

光子が経営するアンティークショップを手伝いながら、母がレース編みの講座を開いていたのは今から10年以上前のことでした。

電話をかけてきたのは、長らく更新されていなかった母のブログに奇妙な書き込みを発見したからです。

母のホームページにスマートフォンからアクセスしてみると、トリニティによるオリンピック開会式へのテロ予告が書き込まれていました。

投稿日は2020年の7月24日の12時00分になっていて、母はかなり前からこの日のこの時間に公開すべく予約投稿の設定をしていたようです。

直後に妹からはメッセージが入り、母が娘のスマートフォンを持ち出して病室を抜け出したことを知らされます。

娘のスマートフォンには位置情報を発信する機能が組み込まれているために、iPadがあれば追跡が可能です。

無断で早退してタクシーに飛び乗り、開会式の会場である新国立競技場へと向かっている母を追いかけます。

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【結】トリニティ、トリニティ、トリニティ のあらすじ④

 

見えないものたちの逆襲

首都高の出口が見えた辺りで渋滞に巻き込まれたために、私はタクシーを飛び出して高速道路を裸足で走り出しました。

服装は白いレーヨンのブラウスで右手には折れた銀色の日傘を握りしめているために、聖火をもたらすギリシャ神話の女神・ ヘスティアのように見えるでしょう。

端末の位置情報をたどり青山門の前に落ちていた娘のスマートフォンを拾い上げ、画面上の時計の数字が5時29分に変わった瞬間に私は全てを悟ります。

人類が初めての原子爆弾実験に成功したのが1945年7月16日5時29分、場所はニューメキシコ州トリニティのホワイトサンズ実験場。

その時の爆発で地面に穿たれた穴の大きさと、私が目の前にしている新国立競技場の円周はまったく同じ大きさです。

壮大なテロはまぎれもなく成功したようで、どこからともなく地面が深く掘られていくような音が聞こえてきます。

見えない怒りや忘れられた過去の哀しみを、目に見える形で表現することこそがトリニティたちの真の目的です。

闇の中に埋もれていたものたちが光に照らされていくかのように、空が今にも燃え上がりそうな色に染まっていくのでした。

トリニティ、トリニティ、トリニティ を読んだ読書感想

著者の代表作「マダム・キュリーと朝食を」は、ラジウムの分離に成功した科学者への敬愛に満ちていました。

本作品ではそのキュリー夫人がラジウムを取り出した、不幸の石が物語の大きなキーワードになっていて面白いです。

聖火ランナーによってオリンピック会場へと運ばれるトーチが、放射能の光のようで不吉な予感が高まっていきます。

「母」「私」「娘」と固有名詞を排した3世代の女性たちの人生が、未曽有のテロ事件へとリンクしていく展開もスリリングです。

歴史上の過ちを忘れて原子力発電に頼り続けている、いま現在の世界への痛烈なメッセージには考えさせられました。

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