「火星無期懲役」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|S・J・モーデン

「火星無期懲役」

【ネタバレ有り】火星無期懲役 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:S・J・モーデン 2019年4月に早川書房から出版

火星無期懲役の主要登場人物

フランク(ふらんく)
元工務店経営者。息子にドラッグを売った売人を射殺して服役中。

アリス(ありす)
元医師。不法に多数の患者を安楽死させて服役中。

ゼロ(ぜろ)
小柄な若者。元ドラッグの売人。

デクラン(でくらん)
囚人。火星ではフランクの補佐を担当。

ブラック(ぶらっく)
火星移住プロジェクトの監督者。

火星無期懲役 の簡単なあらすじ

時は2048年、刑務所に服役中のフランクは面会人から奇妙な提案を持ちかけられます。

それは刑務所から出してやる代わりに、ゼノシステムズ・オペレーションズ社の火星開拓事業に協力しろというものでした。

フランクは契約書にサインをします。

それから半年間の訓練をこなして、フランクと6人の仲間は火星に向けて飛び立ちます。

しかし、火星で開拓作業を始めて間もないうちからに二酸化炭素中毒や、薬物の過剰摂取などで次々とメンバーが死んでいきます。

やがてフランクは、一連の仲間の死は誰かが意図的に仕組んだものだと考えるようになり、ことの真相を探ることを決意します。

火星無期懲役 の起承転結

【起】火星無期懲役 のあらすじ①

選ばれた囚人

フランクは、息子にドラッグを売っていた売人を射殺したことで、残りの人生を一生刑務所で過ごす運命にありました。

しかし、ある日、彼の元に面会人がやってきます。

面会人はゼノシステムズ・オペレーションズ社という宇宙開発事業をしている会社の代理人でした。

その男からフランクは驚きの提案を持ち掛けられます。

刑務所から出してやる代わりに、火星開拓計画のメンバーになれというのです。

火星を開拓する際には住居がどうしても必要になります。

そのため、ゼノシステムズ・オペレーションズ社はかつて工務店で腕を振るっていたフランクの技能に目をつけていたのです。

しかし、囚人という扱いは変わらないので、プロジェクトが終わっても火星に一生残らなくてはならないという条件がありました。

フランクは思い切ってその提案に同意します。

後日、フランクは刑務所から連れ出され、会社が用意した訓練施設で半年間のハードな訓練をこなしていくこととなりました。

訓練施設ではともに火星に行くメンバーとも顔合わせをします。

元医者のアリス、元運転手のマーシー、ネオナチとして捕まったゼウス、薬の売人だったゼロ、ハッカーのディー、自分の過去を語りたがらないデクラン、彼らは全員囚人です。

このメンバーに監督者のブラックを加えたメンバーが火星開拓の先鋒を務めることになります。

火星に出発する前に、ブラックはフランクに取引を持ち掛けます。

ブラックは囚人たちに囲まれて火星に行くことに不安を覚えており、自分が無事に火星から帰れるかどうかわからないと感じていました。

そこでブラックは、一番信用できるフランクに、自分を守ってくれるなら、プロジェクトが終わって帰るときに、こっそりとフランクも一緒に連れて帰ると約束します。

フランクは再び息子に会えるということで、ブラックの提案に飛びついたのでした。

【承】火星無期懲役 のあらすじ②

火星で死んでいくメンバー

フランクたちは冷凍カプセルに入れられて、宇宙船で火星へと送られました。

冷凍カプセルから目覚めたフランクでしたが、火星について早々問題が発生していました。

宇宙船とは別に運ばれてきていた物資が、予定の落下地点から大きく外れて、バラバラに火星に落下したというのです。

ブラックに命じられて、フランクはマーシーとともに、まずはバギーのコンテナに向かいます。

宇宙服の酸素の残量に気をつけながら、二人はバギーが入ったコンテナにたどり着き、車両を組み立ててから宇宙船へと戻ります。

しかし、その帰り道にマーシーの宇宙服の二酸化炭素排出装置が壊れ、彼女は死んでしまうのでした。

運転手がいなくなったことで、フランクはディーとコンビを組んで、残りの物資をバギーで集めて回ります。

コンテナの中に入っていたソーラーパネルが破損していて、十分な電力が確保できないなど障害が出てきますが、メンバーは知恵を絞って問題を解決しようとします。

しかし、メンバーに更なる悲劇が訪れます。

ある朝、起きてこないアリスの様子をフランクが見に行くと、彼女は薬物を過剰摂取して死んでいたのです。

【転】火星無期懲役 のあらすじ③

疑念を抱くフランク

アリスの死は自殺だと判断されました。

彼女は医者で薬品を管理する立場にあったので、好きなように薬を使えたのです。

残りのメンバーたちは、マーシー、アリスの死に衝撃を受けつつも、ブラックにせっつかれて開拓事業を続けていきます。

住居スペースと農業用の施設の組み立ても完了し、基地が軌道に乗り始めます。

ところが、誰かが無断でバギーを使用したり、薬品がなくなるということが起き始めます。

フランクはブラックがコソコソと行動しているときがあると気づき、彼が夜な夜な宇宙船に行って薬物にふけっているのではないかと怪しむようになります。

そんな疑念を抱くなか、三人目の犠牲者が出てしまいます。

作業場を訪れたフランクは、様子がおかしいと気づきます。

作業場のエアロックを無理やりこじ開けると、そこにはゼウスが横たわっていました。

宇宙服を着ていない状態で、火星の大気にさらされた結果死亡したのです。

この死にフランクは疑問を抱きます。

宇宙服も着ないでエアロックにいたことは明らかに不審な点でした。

フランクは、ゼウスの死は殺人の可能性があるとブラックに訴えますが、相手にされません。

さらに、ディーが通信室で二酸化炭素中毒で死亡し、残りのメンバーは4人になってしまいます。

【結】火星無期懲役 のあらすじ④

最後の取引

もはや一連の死が事故、自殺と言ってはいられません。

フランク、ゼロ、デクランは話し合いの場を設けますが、互いを疑うあまり口論に発展してしまいます。

ところがその席で驚きの事実が判明します。

ブラックは「自分が無事に地球に帰れるなら、秘密裡に宇宙船に乗せてやる」という約束を、他のメンバーにもしていたのです。

フランクはようやくブラックが自分たちをだましていたことに気づきます。

彼は最初から約束を守るつもりはなかったのです。

そのとき、ブラックが現れ、施設に銃弾が撃ち込み始めました。

メンバーを次々に殺していたのはブラックだったのです。

フランクとデクランはバギーに乗って逃げようとします。

ですが、デクランはブラックの銃弾によって倒れます。

フランクはゼロと協力してブラックを倒そうとしますが、ゼロはブラックの約束を頑なに信じており、ナイフを持ち、半狂乱になってフランクに襲い掛かります。

フランクはゼロとの格闘の末、ナイフを奪ってゼロの胸につきたてました。

フランクはその場で死んだふりをして、やってきたブラックをやり過ごします。

ブラックがいなくなったところで、フランクは基地のブレイカーのスイッチをすべて消し、ブラックが点検にやってくるのを待ち構えました。

そして、やってきたブラックが背後を見せたところで、持っていたメスを彼の腿につきたてました。

フランクは何度も何度もメスを振るい、やがてブラックは動かなくなりました。

こうして火星にたった一人きりになったフランクは、ゼノシステムズ・オペレーションズが最初から囚人を使い捨てにするつもりだったと知ります。

怒りに燃えるフランクは「兆単位をかけた基地を破壊されたくなければ、自分を地球に連れて帰り、自由を保障しろ」とゼノシステムズ・オペレーションズにメッセージを送るのでした。

火星無期懲役 を読んだ読書感想

SFとミステリをみごとに融合させた作品です。

火星という未知の世界に基地を建てていく描写は濃密で、細部にリアリティが宿っています。

作者はこの作品を執筆するにあたって大量の文献を読み、航空宇宙工学を学んでいる息子に計算までしてもらったそうです。

こうしたこだわりが説得力のある描写に繋がっているのでしょう。

細部だけでなく物語の根幹も読みごたえがある展開となっています。

仲間が一人、また一人と死んでいくなか、主人公が疑念を抱きやがてそれが疑心暗鬼へと成長していき、物語は徐々に緊迫感が増していく様子は見事です。

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