「切り裂きジャックの告白」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|中山七里

切り裂きジャックの告白

【ネタバレ有り】切り裂きジャックの告白 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中山七里 2013年4月に角川書店から出版

切り裂きジャックの告白の主要登場人物

犬養隼人(いぬかいはやと)
警視庁の刑事で、階級は警部補。物静かだが、確かな観察眼をもったベテラン刑事。

高野千春(たかのちはる)
移植コーディネーターで、決して許されない行為をする。

鬼子母涼子(きしぼりょうこ)
体操選手だった息子の母親で、息子を亡くす。息子がドナーカードを持っていたため、高野千春に説得されて受け入れる。

真境名孝彦(まじきなたかひこ)
臓器移植を推進しており、手術の腕はすばらしい。

真境名陽子(まじきなようこ)
麻酔医で、夫の孝彦の手術の際は、必ず麻酔医として参加している。

切り裂きジャックの告白 の簡単なあらすじ

この「切り裂きジャックの告白」は、土曜ワイド劇場「特別企画」としてテレビドラマ化もされたことがあります。

かつてイギリスを震撼させたジャックの名を語った連続殺人事件が日本でも起こります。

事件としては、遺体の臓器をすべて摘出するといった人の行いとは思えないような恐ろしさがあります。

しかし、ストーリーの土台には、「臓器移植」という現代の医療が描かれており、大変読み応えのある作品となっています。

切り裂きジャックの告白 の起承転結

【起】切り裂きジャックの告白 のあらすじ①

臓器が盗まれた遺体たち

東京・埼玉県で連続して臓器が抜き取られた遺体が発見されるという事件が発生します。

まず最初に発見された遺体の身元は、六郷由美香という女性でした。

その身体はむやみに切り開かれておらず、Y字切開という手法を用いられていたことから、犯人が医学に精通している人間ではないかと警察は推察します。

時を同じくして、新聞社に「ジャック」と名乗る人物から「犯行はまだまだ続く」という不気味な声明文が送りつけられます。

そして、次のターゲットとなったのが半崎桐子でした。

広域で起きた事件により、警視庁の犬養と埼玉県警の若手刑事古手川がバディを組んで捜査にあたります。

「なぜこの二人が被害にあったのか」という点に注目すると、被害者二人が同じ移植コーディネーター高野千春のもと、移植手術を受けていたことがわかりました。

一体から複数人に臓器移植されることから、3番目の被害者として、具志堅悟もまた無残な遺体となって発見されてしまいます。

【承】切り裂きジャックの告白 のあらすじ②

怪しい二人

犬養たちは、最初被害者全員とコンタクトをとる立場にいた移植コーディネーターの高野千春を疑います。

それは彼らが彼女に接触した時に、まるで何かを隠すようなかたくなな態度だったからです。

しかしながら、実は犬養の娘もまた腎臓移植を受けなければならない立場にあることから、移植手術待ちのレシピエントたちのために懸命に働き、ドナーの親族に罵倒されても何度も説得を繰り返し、なんとしてでも命のバトンをつなごうとしている人が、果たして人を殺めるだろうかと迷いが生じます。

そして、まっすぐな刑事犬養は彼女の心を解きほぐし、隠していたことを聞き出します。

それは、彼女の職業上決して破ってはいけないルール「ドナーの遺族に、レシピエントたちの情報を伝える」というものでした。

高野千春は、自分がドナーの身体の一部を受け継いだ者たちの個人情報をその母である鬼子母涼子に伝えてしまったがゆえに、彼女を殺人鬼に変えてしまったのではないかと不安な日々を送っていたのです。

【転】切り裂きジャックの告白 のあらすじ③

最後のレシピエント

鬼子母涼子の息子の心臓の移植を受けた最後のレシピエントは、高校生の三田村敬介でした。

その貴重な情報を得ることができた犬養たちは、敬介の住む街へと急ぎます。

敬介の最寄り駅に、なんと鬼子母涼子の姿を発見し、犬養たちは身柄を確保し、重要参考人として署で彼女の取り調べを行うことになりました。

これといったアリバイもないため多くの警察関係者は彼女が犯人ジャックであると決めつけるのですが、犬養だけは彼女と話しているうちに、「彼女は犯人ではないのではないか」と感じ始めます。

それは、犯人に結び付く確固たる証拠が挙がっていないというだけでなく、「Y字切開」をただの主婦にできるのか、臓器をきれいに抜き去る技術があるはずがないと思ったからでした。

他に犯人がいると判断した警察は、敬介の囮になるという申し出を受けて、犯人確保に乗り出します。

そして、ついに真犯人ジャックから敬介に「ドナーの情報を知りたくば来い」という接触があります。

【結】切り裂きジャックの告白 のあらすじ④

ジャックの正体

警察をまかせようと敬介を巧みに誘導するジャックの策略により、敬介は一人になったところを医療用メスで襲われます。

間一髪、犬養たちはその場を阻止し、ジャックこと真境名医師を捕らえることができました。

古手川たちにより取り調べがなされますが、一向に犯行動機を語ろうとしない彼に、医療ミスという言葉を投げかけます。

すると、自分の使用したメスが菌に侵されていたため、それが発覚しないようにレシピエントたちの臓器を奪ったと独白を始めました。

そんな真境名医師に面会を求めた妻の陽子は、毒入りの注射器で夫を殺害しようとします。

彼女の行動に不審を感じた犬養はもう一度事件を整理します。

すると、最初の被害者の犯行時刻時には、真境名医師にはアリバイがあることが判明したのです。

そこから、本当のジャックは、妻の陽子であることがわかります。

彼女は麻酔科医として移植手術に参加したのですが、誤って医療ミスをしてしまい、それを隠すためにレシピエントたちの命を奪っていたのでした。

こうして連続殺人事件は無事解決し、最後のレシピエント敬介がトランペットの練習をしているところに鬼子母涼子が現れます。

彼の好意で胸に耳を当てさせてもらった彼女は、心臓の強く打つ音を聞いて、息子が生き続けていることを嬉しく思うのでした。

切り裂きジャックの告白 を読んだ読書感想

移植は「命のバトン」だと思うので、今回の犯人の動機には腹立たしさを感じてしまいます。

それはやはり医者という命を救う立場で、かつ移植の現場に立ち会っていたにも関わらず、自分たちのことしか考えていなかったからです。

犯人の独白で終わっていたら後味が悪いところでしたが、最後の場面が救いの場面になったと思います。

やはり、ドナー患者の家族は「移植」という道を短い時間の中で選択するので、「これで良かったのか」との自問自答の日々が続くでしょう。

人の為になり、しかも愛する人の一部が生き続けていることがわかり母親もようやく救われて良かったと、読了後、胸が温かくなりました。

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