【ネタバレ有り】i のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:西加奈子 2016年11月にポプラ社から出版
iの主要登場人物
ワイルド・曽田・アイ(ワイルド・曽田・アイ)
主人公。シリアで生まれたが、裕福なアメリカ人の父と日本人の母のもとに養子に迎えられる。
権田 美菜(ごんだ みな)
高校でアイと出会い、親友になる。レズビアンで、留学を期にロサンゼルスに拠点を移す。
佐伯 ユウ(さえき ゆう)
フリーのカメラマン。デモ活動を機にアイと出会い、結婚する。
i の見どころ!
・考えすぎてしまうアイの気持ちの変化
・アイとユウの恋愛模様
・苦しみを乗り越えた先のアイとミナの友情
i の簡単なあらすじ
養子としてアメリカ人の父と日本人の母に育てられたアイは、中学から日本での生活を始めます。
周囲はアイに優しくしてくれましたが、シリア人のアイは、同級生との容姿の差から、「自分はどこにも属さない」という気持ちを抱えています。
高校生になったとき、「この世界にアイ(虚数)は存在しません」という数学教師の言葉に衝撃を受けます。
その後も自分のアイデンティティについて考え続けるアイですが、親友や恋人との出会いによって、少しずつ、自分が解放されていくのを感じます。
i の起承転結
【起】i のあらすじ①
アイは、シリアで生まれましたが、裕福なアメリカ人の父と日本人の母によって容姿に迎えられます。
それは贅沢で幸せな暮らしでしたが、アイは偶然両親によって選ばれただけで、本当はシリアで貧しい暮らしを強いられていたかもしれない、という思いが常にあり、両親に甘えることができませんでした。
自分の幸せが、誰かの不幸の上に成り立っているような気がしていたのです。
アメリカで暮らしていたアイですが、中学生からは日本で生活するようになりました。
アメリカはいろんな人種や生き方が混じり合っていましたが、日本は確立された規律の上で生活をしなければなりません。
帰国子女が多くいる学校でしたが、それでもシリア人のアイの見た目は目立ち、養子という存在も珍しいものでした。
友達はできましたが、アイはどのグループにも自分は属していないような気がして、心の底から馴染めることはできませんでした。
高校生になったとき、数学教師が虚数の説明に使った、「この世界にアイは存在しません」という言葉がどうしても耳から離れず、アイは今後の人生において、ずっとその言葉が胸に居座るようになります。
素晴らしい出会いもありました。
ミナという親友ができたのです。
今まで出会ったクラスメイトとは違い、ミナとアイは心を許し合うことができました。
【承】i のあらすじ②
アイは勉強ができました。
特に、数学に魅せられていました。
受験勉強の結果、アイは国立大学の数学科に通うことになりました。
ミナは通っていた付属の大学に進みました。
大学生になっても、二人は仲が良いままでした。
そんな時、アイはミナから秘密を打ち明けられます。
それは、ミナは女の子が好きというセクシャリティを持っているということでした。
アイは驚きますが、現在交際している女性もいるというミナの告白を嬉しく思います。
ミナはしばらくするとその女性とは別れてロサンゼルスに留学し、そのまま帰ってきませんでした。
現地では新しい恋人との暮らしを楽しんでいるようで、アイとはスカイプで連絡を取り合いました。
アイはミナの自由な生活を応援しますが、そのころ、両親は仕事の関係でアメリカに行くことになります。
大学での勉強があるアイはそのまま東京に残りますが、一人暮らしによってどんどん生活が荒れていきます。
そんな時に、東日本大震災が発生しました。
アイは揺れる家の中で、はっきりと死にたくないと思いました。
しかし、今までシリアの貧しい生活や同時多発テロから逃れて生きてきたという負い目から、両親のいるアメリカには行かずに、このまま日本で暮らし続けるという選択をします。
余震や放射能の影響を心配する両親は嘆きましたが、ミナだけはそのアイの思いを理解してくれました。
しかし、日本に残ったところで何も自分にはできることがないと気付いたアイは、自分の気持ちの行き場のなさにふさぎ込んでしまいます。
自堕落な生活によって太った体はどんどん痩せていきました。
【転】i のあらすじ③
ある日、アイは偶然脱原発のデモに遭遇します。
その流れに飲まれてアイはデモに参加することになりました。
そこで出会ったのがユウです。
ユウは四十代で、二回の離婚歴がありましたが、二人は強く惹かれ合い、すぐに結婚することになりました。
ユウはアイの考えすぎる性格を尊重してくれました。
アイはユウとの恋愛や新しい生活が忙しくなったために、大学を休学します。
しかし、その手続きでゼミに行ったとき、数学科の教授から「アイ(虚数)は存在する」という言葉を聞きます。
その言葉によって、アイは自分の存在が認められたような気分になりました。
アイは、両親と血が繋がっていないことを気にしていました。
そのため、早くユウとの子どもが欲しいと願います。
アイとユウは子作りを始めますが、なかなか授かりません。
病院に行くと、アイに問題があることがわかり、二人は人工授精を始めます。
しばらくするとアイは子どもを授かりますが、死産に終わってしまいます。
この出来事が、アイの孤独感を深めます。
ユウも悲しんでくれましたが、男性にはわからない苦しみだとアイは思い、一人でふさぎ込みます。
【結】i のあらすじ④
ミナには不妊治療の話をしていましたが、妊娠と死産のことは伝えていませんでした。
しばらくミナからの連絡が途絶えていたある日、アイはミナから恋人が家を出ていったことと、ミナが妊娠しているということを聞かされます。
ミナはニューヨークで同級生の男性と出会い、初めて関係を持ってしまったのです。
ミナは恋人を裏切ってしまったことを後悔していて、子どもは中絶するつもりだとアイに話します。
アイは怒りの感情を抑えることができずに、ミナに許すことはできないと告げます。
ミナは初めてアイの妊娠と死産のことを知り、狼狽しますが、アイのために自分の決断を変えることはないと決心します。
アイとミナは今までずっと寄り添って生きてきた分、この決別した状態は非常につらいものでした。
しかし、アイはどうしてもミナの行動が許せませんでした。
しかし時間が経つにつれて、ミナのことを恋しく思う自分にも気づきます。
そんなアイを見かねたユウは、アイにミナのもとへ行くことを勧めます。
ロサンゼルスに向かったアイは、ミナからやはり子どもを産むつもりだと告げられます。
アイは、ミナの裏切りは許せるものではないが、その決断は尊重に値するものだとして、新しい二人の友情が再び始まったのでした。
i を読んだ読書感想
文章から大きなパワーを感じられる、読み応えのある一冊です。
人種問題や差別問題など、様々なテーマが一人の女性を通して描かれているので、考えさせられることがたくさんありました。
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