「制裁」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム

「制裁」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム

【ネタバレ有り】制裁 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム 2017年2月に早川書房から出版

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制裁 の主要登場人物

エーベルト・グレーンス(えーべると・ぐれーんす)
ストックホルム市警の警部。

フレドリック・ステファンソン(ふれどりっく・すてふぁんそん)
作家。ルンドに娘を殺害される。

ベルント・ルンド(べんると・るんど)
護送中に逃走した連続殺人犯。

スティーグ・リンドグレーン(すてぃーぐ・りんどぐれーん)
アスプホース刑務所の囚人。

ラーシュ・オーゲスタム(らーしゅ・おーげすたむ)
検察官。

制裁 の簡単なあらすじ

護送中のベルント・ルンドが逃走しました。

彼は女児ばかりを狙う連続殺人犯でした。

ルンド逃走後、作家ステファンソンの娘が行方不明になり、のちに遺体のなって発見されます。

ルンドの仕業でした。

ステファンソンはルンドを探し、彼を射殺します。

ステファンソンは逮捕されましたが、一審で無罪判決が下ったことで、スウェーデンの秩序が揺らぐ事態が発生したのです。

制裁 の起承転結

【起】制裁 のあらすじ①

 

娘を失った親

ベルント・ルンドという女児ばかりを狙った連続殺人犯が護送中に逃走します。

この一件で警察は上へ下への大騒ぎです。

ルンドが逃走した後、作家のフレドリック・ステファンソンの娘マリーがいなくなりました。

警察に駆け込むステファンソン、懸命の捜索にも関わらず、マリーは遺体となって発見されます。

マリーの遺体には強姦された痕跡がありました。

グレーンス警部はこの一件がルンドの仕業ではないかと疑います。

警察は、ルンドの行方を捜しますが、娘を殺されたステファンのなかで、ある感情が膨らんでいました。

復讐です。

ルンドは警察の手抜かりで逃走したので、ステファンソンはもはや警察を信頼していませんでした。

彼は自らの手でルンドを殺すことにしたのです。

彼は物置から埃被った銃を取りだし、ルンドがやってきそうな場所で待ち伏せをすることにしました。

ステファンソンが選んだのは学校の周辺でした。

ルンドが狙うのは常に少女だったからです。

果たして、ステファンソンの期待通り、ルンドが姿を見せたのです。

ステファンソンは彼に向って引き金を引きました。

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【承】制裁 のあらすじ②

 

私刑と判決

ステファンソンが放った弾丸はルンドを撃ち抜き、彼は死亡しました。

ステファンソンはそのまま警察に逮捕されてしまいます。

しかし、ステファンソンは後悔の色などみせません。

被害者の父が、邪悪な連続殺人犯を射殺したというセンセーショナルなニュースは、瞬く間にスウェーデンに広がりました。

マスコミはステファンソンを子供を救った英雄のように伝え、国民はステファンソンの私刑を支持するようになったのです。

一方、アスプホース刑務所のなかでも、このニュースが話題になりました。

しかし、囚人たちのボス的存在であるスティーグ・リンドグレーンは、面白くありません。

彼は女児が強姦殺人されるような事件を憎んでおり、たとえどんなニュースであってもそれを耳にしたくはなかったのです。

そのため、ステファンソンのニュースもことごとく避けるようになりました。

ステファンソンの起訴を担当することになった検察官のラーシュは、市民から嫌がらせを受けるようになりました。

検察官に危害が及ぶほど、スウェーデンはステファンソンを支持するようになっていました。

この異様な雰囲気は陪審員にも影響し、一審において、ステファンソンに無罪の判決が下ったのです。

【転】制裁 のあらすじ③

 

秩序を失うスウェーデン

スウェーデンは私刑を認めておらず、本来なら無罪判決はありえないことでした。

ラーシュは当然控訴します。

しかし、この判決に沸き立ったのが一部のスウェーデン国民です。

彼らはこの判決を過大解釈し、変質者を殺しても罪にならないと受け取ったのです。

ベングト・セーデルルンドは、タルバッカ村の建設業者です。

彼の隣人であるヨーランは過去に女子学生に性器を見せびらかして、問題になったことがありました。

ベングトはステファンソン裁判の判決を受けて、仲間とともにヨーラン殺害に乗り出したのです。

ベングトはヨーランの家を燃やし、闘犬をけしかけて彼を殺害します。

そして、これが正義だと言わんばかりに自分で用意した判決文をその場で読み上げました。

ベングトは逮捕されますが、釈放されて当然という態度をとり続けます。

この一件だけでなく、スウェーデンでは変質者が制裁される事件が相次ぐこととなりました。

スウェーデンの秩序が揺らぐなか、ステファンソンの裁判が再び行われました。

そして、二審にしてようやくステファンソンに有罪が下りました。

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【結】制裁 のあらすじ④

 

私刑の結末

このころのステファンソンはすでに何もかもどうでもよくなっていました。

彼の弁護士が控訴を提案しても無気力です。

ステファンソンはアスプホース刑務所に収監されることになりました。

ステファンソンを支持する人間は依然として多く、アスプホース刑務所の前では大勢の市民が座り込みをして、ステファンソン有罪の抗議をしていました。

スティーグ・リンドグレーンはこの騒ぎはなんだと思い、仲間の話を聞ききます。

しかし、断片的な会話を聞いただけなので、彼は幼児性愛者が連れてこられたと勘違いします。

その手の変態を憎むリンドグレーンは、その新参者を殺害することを決めます。

ステファンソンが刑務所にやってきて、シャワー室にいるときに、リンドグレーンは、ステファンソンを殺害したのです。

この一件はすぐに刑務所内に知られることとなり、容疑者とされたリンドグレーンのもとに、グレーンス警部がやってきます。

ステファンソンのことをまるで幼児性愛者であるかのように罵るリンドグレーンを前にして、グレーンス警部は首を傾げます。

グレーンスがステファンソンの素性を教えると、リンドグレーンはようやく、子供を救った英雄を殺したことに気づき、絶叫するのでした。

制裁 を読んだ読書感想

本書はグレーンス警部シリーズの第一作目に当たる作品ですが、面白い面白くないという次元で語る作品ではないでしょう。

社会や秩序について深く考えさせられる作品なのです。

スウェーデンは死刑制度がなく、終身刑であっても模範的な態度をとっていたらいつかは釈放され、さらに日本と比べて刑期が短いという傾向があります。

この話の土台には、死刑がない国で更生の見込みがない人間が殺人を繰り返したら、という仮定があります。

作者は、本書で無秩序を描くことで、たとえどんな悪人に対しても私刑を行ってはいけないと警鐘を発していると感じました。

日本では馴染みがありませんが、スウェーデンの一部地域には自警団が存在します。

この自警団は地域パトロールのような穏やかなものではなく、団体によっては武装して独自の価値観に基づいた自衛行為を行っているのです。

スウェーデンのこうした社会背景があるからこそ、この本が生まれたのではないでしょうか。

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