「こんなにも優しい世界の終わりかた」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|市川拓司

市川拓司「こんなにも優しい世界の終わりかた」

【ネタバレ有り】こんなにも優しい世界の終わりかた のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:市川拓司 2013年8月に株式会社 小学館から出版

こんなにも優しい世界の終わりかたの主要登場人物

吉沢(よしざわ)
主人公 争いごとの苦手な奥手な青年 迫りくる世界の終りに、思い人と再会するために旅をする

白川(しらかわ)
おしとやかな女性 吉沢とは恋人以上友達未満の仲 しかし吉沢のことが大好き

吉沢の父(よしざわのちち)
時計職人 変わり者だが、吉沢に愛情を一心に注いだ立派な父親

瑞木(みずき)
旅の途中で吉沢と出会った男 世界が終わる前に愛する人と再会したいという吉沢と目的が同じで意気投合する

こんなにも優しい世界の終わりかた の簡単なあらすじ

世界の終りがやってきた..青い光が空から降り注ぎ、その光を浴びるとすべてが止まってしまう..人もモノも動物も..吉沢は世界が終わる前にどうしても最愛の人である白川に会いたくて旅に出ます。奥手な若者が世界の終りがやってきたことで初めて自分の気持ちに素直になり、愛する人を求めて旅をするお話です。はたして吉沢は白川と再会することができるのか?

こんなにも優しい世界の終わりかた の起承転結

【起】こんなにも優しい世界の終わりかた のあらすじ①

青い光

世界の終りがやってきました。

突然空から青い光が降り始め、その光を浴びたモノは凍り付いたように動かなくなってしまうのです。

吉沢は青い光を避けながら愛する人白川に会うために旅をしています。

道中で瑞木という男と意気投合し、一緒に旅をします。

吉沢は奥手な性格で白川に思いを告げることができませんでした。

瑞木も同様に愛する人にひどい態度をとってしまい、けんか別れになってしまった過去があり、恋人に謝るために旅を続けています。

瑞木は普段は粗野で乱暴な男ですが、旅のパートナーの吉沢に対して親切に接してくれます。

空から降り注ぐ青い光が、人々を穏やかな気持ちにし、本来もっている優しい面を表にだすことができるのです。

奥手な性格のために白川に思いを告げることができなかった吉沢..天邪鬼な性格のために愛する人を傷つけてしまい、後悔を抱えた瑞木世界の終りがやってきたことで自分の気持ちに素直になることができた2人は、世界を終わらせる青い光に奇妙な感謝の情を抱くのでした。

【承】こんなにも優しい世界の終わりかた のあらすじ②

回想

吉沢は白川と出合った頃を回想します。

2人が出会ったのは学生時代、同じクラスで隣の席になったことがきっかけでした。

白川はクラスでもマドンナ的立場の女性でしたが、吉沢とは波長が合い、2人は友達以上恋人未満の関係になります。

吉沢の父は時計職人で妻を亡くしていました。

白川の母は看護師で父はいません。

吉沢の父は変わり者ですが、息子には惜しみない愛情を注ぎ、吉沢もまた父のことを誇りに思っていました。

白川の母は病院に勤めていて、医師の男性と恋仲になります。

白川はその男性を先生と呼び、父と呼ぶことはできませんでした。

白川の母と先生は複雑な関係で、自分が先生にふさわしくないと思った母は白川を連れて街を出て行ってしまいました。

吉沢は白川との別れを惜しみながら、再会の約束を交わします。

白川母娘の行方を探して先生が吉沢の元に訪ねてきます。

愛する人を繋ぎ止めておくことのできなかった者同士、吉沢と先生は友達になります。

吉沢は白川との約束を守り、先生に居場所を教えませんでした。

先生もまた白川母の意をくみ、機が熟せばまた会うことができるだろう..と思い、帰ってゆきました。

【転】こんなにも優しい世界の終わりかた のあらすじ③

幸せな記憶

しばらくの時間が流れ、吉沢は父と同じように職人の道を歩みだしました。

自分の工房を持つようになり、アパートで独り暮らしをしています。

白川が吉沢の住む町に戻ってきました。

勉学のために半年間だけの短期滞在です。

吉沢と白川はまた昔のような穏やかな時間を過ごし、少しづつ距離を縮めてゆきますが、時間が流れたことで、白川は別の男と婚約してしまっており、もう吉沢のモノにはなりません。

恋人のような時間を堪能した後、白川は再び吉沢の元を去ってゆきました。

時は現在に戻り、瑞木は旅の末に恋人の元にたどり着きました..しかし、時はすでに遅し..瑞木の恋人は青い光に包まれてしまい、動かぬ人になってしまいました。

嘆き悲しむ瑞木..瑞木は動かなくなった恋人に感謝と謝罪の言葉を述べて最後の一時を恋人に寄り添って過ごすことにします。

瑞木は吉沢に発破をかけ、吉沢は白木を探す旅を続け、苦難の末に白木の住む町にたどり着き、白木と再会することができたのでした。

【結】こんなにも優しい世界の終わりかた のあらすじ④

こんなにも優しい世界の終わりかた

白木と再会した吉沢は、白木に思いのたけをぶつけ、白木もまた吉沢を想い慕う気持ちを告げ、2人の関係はようやくあるべき姿になったのでした。

吉沢の苦しく険しい旅は終わりを迎え、吉沢の苦労は無事報われたのでした。

白木に吉沢は父の最後を語ります。

吉沢の父は吉沢を守り、白木と再会させるために犠牲になったのです。

父の深い愛情と犠牲を一心に受けた吉沢は父のことを誇りに思うのでした。

吉沢の父と懇意にし、仲のよかった白木は吉沢父の最後に涙を流します。

そんな白木に吉沢は父から渡された手紙を見せるのでした。

吉沢の父は白木宛に手紙をしたためており、吉沢のことを末永くよろしく頼むと言う内容で、手紙と一緒に吉沢の父と母の結婚指輪が入っていました。

吉沢と白木は海に出て、2人でボートにのり、水平線の果てへと去ってゆきます。

青い光を見つめながらこんなにも優しい終わり方があるのかと満足で優しい気配に包まれて2人の物語は終わりを告げるのでした。

こんなにも優しい世界の終わりかた を読んだ読書感想

最初から最後まで穏やかな雰囲気に包まれた珍しいお話だと思いました。

吉沢はとても内気な男で自分の気持ちを素直に表現できすに、愛する人に自分の側にいて欲しいと告げることができません。

この吉沢という男は現代の草食系と呼ばれる男子諸君を象徴したような存在だと思います。

そんな吉沢が世界の終りが訪れたことで、どうしても愛する人に気持ちを伝えないと死にきれないと思い、行動に至ったことでこの物語は始まります。

世界を終わらせる青い光の正体や謎は最後まで明かされることがなく、終始一貫して不思議で幻想的な雰囲気を保ったまま物語は進行します。

最初から最後まで穏やかに物語が進み、吉沢父の息子や嫁を思う強い気持ちがヒシヒシと伝わってきたのが一番印象的でした。

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