「今昔百鬼拾遺 鬼」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|京極夏彦

「今昔百鬼拾遺 鬼」

【ネタバレ有り】今昔百鬼拾遺 鬼 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:京極夏彦 2019年4月に講談社タイガから出版

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今昔百鬼拾遺 鬼の主要登場人物

呉美由紀(くれみゆき)
中等部三年の女学生。所属していた学校で凄惨な連続殺人事件に巻き込まれたため女学院へ編入した。背が高く快活な少女。

中禅寺敦子(ちゅうぜんじあつこ)
昭和中頃にして珍しい職業婦人。科学雑誌の記者をしており、先に起きた連続殺人事件にも関わっていた。今回美由紀から相談を受ける形で事件に関わっていく。

片倉ハル子(かたくらはるこ)
美由紀の女学院内唯一の友達であり高等部の先輩。生前、軽度の恐慌状態に陥っており何かに怯えていた。

宇野憲一(うのけんいち)
十九の青年。片倉ハル子と交際関係にあったと噂されているも真偽は不明。ハル子を日本刀で切り殺したと自白する。

片倉勢子(かたくらせいこ)
三十程の女性。ハル子の母親であり、下谷にある刀剣屋の店主。未亡人。

今昔百鬼拾遺 鬼 の簡単なあらすじ

昭和の辻斬りに殺された片倉ハル子。生前不可解な事を口走っていた彼女に違和感を覚えた呉美由紀は、記者・中禅寺敦子に相談を持ち掛けました。「先祖代々片倉の女は切り殺される定め」と怯えていたハル子は通り、日本刀で切り殺されました。殺害現場にいた男がハル子を殺したと自白しますが、彼女の母親もまた同様にハル子を殺したと言います。事件に関わった一同を集め中禅寺敦子が事件の全容を明かします。

今昔百鬼拾遺 鬼 の起承転結

【起】今昔百鬼拾遺 鬼 のあらすじ①

昭和の辻斬り

「学友の先輩が殺された」記者である中禅寺敦子に話を持ち掛けたのは、過去に凄惨な連続殺人事件に巻き込まれ目の前で何人もの親友の死を見てきた呉美由紀でした。

昭和の辻斬りとまことしやかに囁かれていた連続殺傷事件は美由紀が通う全寮制の女学校のすぐ傍で起きたものでしたが、先輩、片倉ハル子の怯え方が他の生徒のソレとは全く違っていたことに引っかかりを感じ、敦子に相談します。

昭和の辻斬りというのは被害者は既に六人、内四人が死亡という凶悪な事件でした。

ハル子が斬られた時、ハル子と交際の噂が立っていた宇野憲一という青年とハル子の母親である片倉勢子も一緒におり、宇野が「ハル子を殺した、他の六人も殺した」と自白しました。

しかし警察の話を聞いているうちに、殺害の瞬間を目撃してはいない勢子、明らかに研がれていた刀と研ぐ技術を持ち合わせていない宇野、夜中宇野が刀を持ち出していたにも関わらず不審に思わなかった母子、低身長の人間が切ったとしか思えない切り口、と次々に不可解な点が浮かんできます。

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【承】今昔百鬼拾遺 鬼 のあらすじ②

鬼の刀の因縁

後日、片倉家の隣人であり、片倉ハル子の祖母と懇意にしていた保田という老婆から話を聞いた美由紀は敦子に片倉の女系の因縁について話します。

片倉ハル子の祖母である片倉柳子は日本の芸者でそれは大層美人な人だったそうなのですが悪質な客に付きまとわれ、その客依田儀助によって斬り殺されてしまいます。

依田が柳子殺害に使用し日本刀はいわくつきの刀であり、鬼の刀と呼ばれていた物のようでした。

柳子の兄である片倉利蔵の後妻の娘、片倉静子も片倉刀剣に押し入った強盗により斬り殺されました。

先の柳子の事件に使用された刀は寺に供養され売り払われたのですが、鬼の刀と呼ばれる妖刀は二振りあり、どうやらその片割れがあったのが片倉刀剣に偶々あったそうです。

これは偶然ではない、やはり妖怪や良くないものが絡んでいると睨む美由紀に敦子は柳子の前はどうだったのかと聞くと、もともと鬼の刀の因縁は片倉家のものではなく、片倉の世話になっていたお涼さん、片倉柳子の母親の家のものだったと言います。

お涼さんの母は、父親によって斬り殺され、父親はそのまま梁で首を吊って自殺したのでした。

その殺害に使われた刀を形見として片倉家に持ち込んだのがお涼さんでした。

その話を聞いた敦子は美由紀に、そのお涼さんも切り殺されたのかと尋ねます。

しかし保田の話すところ、お涼さんは享年六十くらいで亡くなったそうで、殺されたならばそんな言い方はしないから違うのだろうと美由紀は言います。

ならば昭和の辻斬りとハル子も強盗に殺された静子も邪恋により殺された柳子も呪いでも祟りでもなく単なる偶然であると敦子は結論付けました。

しかし敦子自身そうは言ったもののどうにも鬼の刀という不吉な関連に漠とした疑問を持っていた。

【転】今昔百鬼拾遺 鬼 のあらすじ③

研ぎ師と刀

昭和の辻斬りに使われた刀と研いでいた老人大垣喜一郎、そこは宇野の暮らしていた家でもあり、大垣喜一郎の父親が敗戦直後の街を徘徊していた欠食児童を自分の孫だと勘違いし拾ってきたのが宇野でした。

研ぎ師の仕事はどうやらせても駄目だったようで仕方なしに工場へ勤めさせても上手くいかず家から追い出したと大垣は語ります。

敦子と美由紀は人を斬った刀と知って研いだのかと問いましたが、大垣は犬を斬ったか豚を斬ったか何を斬ったかなど分からないと言います。

宇野は育ててもらった恩から大垣を庇っているのではないかと敦子は考えました。

問い詰めても糠の釘だった大垣の態度は鬼の刀について尋ねる一変しました。

鬼の刀を買ったのは自分の親父である。

大垣は鬼の刀の所以をとつとつと語りました。

鬼の刀の鬼とは土方歳三のことであり、お涼さんは土方に父が母を斬った刀で自分を殺して欲しかったと語っていました。

何でも首吊りは醜い、死ぬなら母を斬ったこの刀で死にたいと言っていたのです。

しかしお涼さんの思惑とは違い、土方はお涼さんを斬りませんでした。

すると次は大垣の元へ来て娘を斬った刀を譲ってくれと頼んだのでした。

柳子を斬った刀を供養する際に寺が血や脂が付いたままでは供養出来ぬと大垣のところへ刀を持ち込まれ、供養を終えた後に再び大垣の元へ刀が返されたのでした。

母親を斬った刀と共に生きて次は娘を斬った刀を寄越せと言ったのだからお涼さんは相当参っていたのだろうと大垣は言います。

大垣喜一郎の父親は刀を渡し、そのすぐ後にお涼さんは逝ってしまいました。

所以を聞いた敦子は話を切り上げ宇野が大垣の元には来ていないという証言から大垣が誰かを庇っていると推察し問いました。

すると奥の部屋から片倉勢子が姿を現し、自分が、自分こそが昭和の辻斬りでありハル子を殺したと言ったのです。

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【結】今昔百鬼拾遺 鬼 のあらすじ④

ハル子の凶行

勢子はハル子を殺したと自白しますが、着物に返り血が一切なかったことから敦子はそれが嘘であると見抜きます。

普通の服ならともかくとして、着物はそう簡単に屋外で着替えられるものではないからです。

すると凶器の日本刀には運搬の際に必要な登録証がないことが勢子の証言から判明します。

刀が不法所持のものであるとわかるとますます運搬方法に苦しみます。

しかし実際刀は持ち運ばれていたのではなく、ずっと研ぎ師の大垣の元に置いてあった事が分かると、警察はやはり勢子の自白は虚偽であり、宇野を庇っているに過ぎないのではないかと言います。

しかし敦子は宇野が刃物恐怖症であったことを研ぎ師の仕事が勤まらなかった事や工場勤務が出来なかったことから見抜きました。

加えて勢子からも宇野は外食をしてもナイフやフォークを握ることはなかったとの証言を得、宇野が犯人ではないと敦子は確信しました。

宇野が犯人ではない、しかし勢子も大垣も違う、となると誰なのか。

敦子は、昭和の辻切りは片倉ハル子であると断言しました。

和服とは違い学校の制服であればスカートから体操着等の洋服に着替えることは難しくありません。

しかしハル子は生前殺されると怯えていたのであって、殺してしまうと怯えていたわけではありませんでした。

そこは夢見がちな少女故に、虚妄に、片倉の因縁に囚われてしまったというのです。

敦子自身も彼女の真意は測れず動機は推測に過ぎません。

犯行日と学校の休みが重なっていたこと、宇野と勢子がハル子の凶行に気が付き、止めようとして揉みあっている内にハル子を斬ってしまったことが分かります。

その後ハル子の罪を被ろうとした勢子が警察にハル子の変わりに自分を捕まえろと詰め寄ります。

しかし美由紀が説得し支離滅裂になりながらも感情のままに説法し事件関係者の心裡を解きほぐし事件を収束させました。

今昔百鬼拾遺 鬼 を読んだ読書感想

長編作品の番外編ということで中禅寺敦子を主人公に書かれたこの作品は、いつもの京極夏彦の大作とは違い、とてもエネルギッシュなものの印象を受けます。

恐らく主人公兼語り部が敦子と美由紀だからなのだと思います。

拝み屋は出てこない、つまり憑き物落としもない。

と思いきや呉美由紀がその役割を担っています。

敦子と美由紀が不完全ながらもミステリー小説の探偵役を二人一組で遂行しているのがとても可愛らしく、凄惨な殺人事件や昭和中期の陰湿さとの温度差がとても京極さんらしい作品でした。

歴史や時代、実在の登場人物や事件を絡めてくる。

するとこの小説内の事件が本当にあったことのように感じられるのもまた京極堂シリーズの魅力の一つです。

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