【ネタバレ有り】ノーサイドゲーム のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:池井戸潤 2019年6月にダイヤモンド社から出版
ノーサイドゲームの主要登場人物
君嶋 隼人(きみしま はやと)
主人公。トキワ自動車アストロズ・ゼネラルマネージャーに就任する。
滝川 佳一郎(たきがわ けいいちろう)
君嶋のライバル的存在。
脇坂 桂一郎(わきさか けいいちろう)
経営戦略室長。君嶋にとって頼れる上司。
柴門 琢磨(さいもん たくま)
城南大学ラグビー部の監督を解任され、アストロズの監督に就任する。
ノーサイドゲーム の見どころ!
・アストロズ優勝とラグビーの復興にむけての君嶋の奮闘
・ラグビーチーム、アストロズの手に汗握る試合模様
・トキワ自動車内の覇権争い
ノーサイドゲーム の簡単なあらすじ
主人公・君嶋はトキワ自動車の本社、経営戦略室に勤務する経営のプロですが、社内の企業買収問題に反対したことをきっかけに横浜工場の工場長に左遷されてしまいます。
工場長は、会社が抱えるラグビーチーム・アストロズのゼネラルマネージャーを兼任することが定められていました。
アストロズが抱える目下の問題は、新監督探しと大赤字からの脱却。
社内の覇権争いや、選手の移籍問題も勃発する中、君嶋はアストロズの日本一を目指して奮闘します。
ノーサイドゲーム の起承転結
【起】ノーサイドゲーム のあらすじ①
君嶋はトキワ自動車の本社にある経営戦略室に勤務しています。
経営のプロとして社内のあらゆる案件を精査する立場にあるのですが、ある時、君嶋のもとに企業買収の話が持ち込まれます。
それは、トキワ自動車が工業用オイルメーカー、カザマ商事を買収しようというものでした。
その案を出したのは、常務取締役営業本部長の滝川。
君嶋とは馬が合わず、天敵のような存在です。
君嶋はその買収計画に対して、反対を唱えます。
というのも、カザマ商事の買収価格が一千億円という、あまりにも常識外れな高額だったからです。
君嶋の反対のお陰で企業買収の話は再検討になりましたが、君嶋には予想外の展開が待ち受けていました。
突然上司に呼び出された君嶋は、横浜工場の工場長への異動を言い渡されます。
それは完全なる左遷でした。
この左遷を企てたのは滝川かと苦い思いを噛みしめながら、君嶋は横浜工場に向かいます。
工場長の仕事は、工場管理の他に、トキワ自動車が抱えるラグビープラチナリーグ・アストロズのゼネラルマネージャーを務めることでした。
前任者による引継ぎが進むにつれて、君嶋は絶望を覚えます。
アストロズは年間十六億円の予算を必要としており、そのほとんどが赤字だったのです。
このまま赤字が続けば、アストロズが廃部を迎えるのは素人の君嶋から見ても明らかでした。
その上、アストロズの監督が突然辞任したため、急いで新監督を探さなければならないという状況でした。
また、以前はリーグ優勝争いをしていたアストロズも現在は高齢化が進み、毎年順位を落としています。
危機感を覚えた君嶋は、まず予算問題をなんとかしようと思い立ち、ラグビーの試合運営などを行う日本蹴球会に意見書を提出します。
そもそも日本蹴球会の運営がうまくいっておらず、チケット販売の仕方や、広報のやり方を変えることで、少しでも赤字を減らそうとしたのです。
しかし、日本蹴球会は部外者には辛辣で、聞く耳を持ちません。
次に君嶋は、新監督探しを始めました。
前任者から引き継がれた候補者は二人。
面接をする君嶋ですが、二人とも適任であるとは思えない人材でした。
そんな時、君嶋は偶然、城南大学ラグビー部監督の柴門が解任されたことを知り、オファーをかけます。
実は、君嶋と柴門は大学の同級生だったのです。
【承】ノーサイドゲーム のあらすじ②
行き場を失った柴門は、喜んでアストロズの監督に就任するかと思われましたが、現実は違いました。
柴門はオファーをすぐに断ったのです。
君嶋が不思議に思って前任者を訪ねると、以前にもアストロズは柴門に監督業を打診したのだといいます。
しかし、同時に別の監督にも同じオファーをして契約をしてしまったのです。
ダブルブッキング犯してしまったアストロズは柴門に謝罪をしましたが、いまだに柴門はそれを許していないのです。
このトラブルを引き起こしたのは君嶋の天敵・滝川だったのです。
しかし、柴門の能力を諦めきれない君嶋は、過去の不手際を詫び、柴門のもとに出向いて口説き落としました。
最終的に同級生のよしみで折れた柴門ですが、監督を決めるのは選手だと言い張り、選手一人ひとりに対して各自のプレーを分析した内容の手紙を送ります。
それを読んだ選手たちはいたく感動し、晴れて柴門はアストロズの監督に就任したのでした。
監督問題は解決しましたが、君嶋にとって、まだまだ問題は山積みでした。
アストロズの巨額の赤字の原因は、そもそもチケットの売れ行きが悪いことでした。
日本蹴球会に掛け合ってもうまくいかなかったことから、君嶋は自分たちでファンを獲得して、チケットを自分たちで売れるような環境を目指すことにします。
まずは、地域との結びつきを大切にしようと、アストロズはボランティアや地域交流を頻繁に行うようになります。
柴門による厳しい練習で疲弊している選手たちは、ボランティアをするような余裕はありませんでしたが、廃部の危機を避けるために少しずつ協力的になります。
そのおかげで、アストロズにはファンが増えていきました。
【転】ノーサイドゲーム のあらすじ③
アストロズが少しずつ軌道に乗ってきたある日、君嶋は上司の脇坂に本社に戻ってこないかと問われます。
その理由は、以前買収額の高さを理由に頓挫したカザマ商事買収問題が再び動き出したというのです。
買収額は八百億まで値下がりし、これなら問題ないだろうと経営戦略室も判断したものの、この案件は経営のプロである君嶋に任せたいというのが脇坂の本音でした。
突然の話を受けて、君嶋は逡巡します。
今はアストロズの成長を見ていたいという気持ちもありました。
ですが、この話を断ってしまえば、本社に戻るチャンスはなくなります。
君嶋は少し考える時間をもらうことにしました。
そんな時、君嶋のもとに不穏な情報が入ってきます。
カザマ商事が扱っているバンカーオイルがある座礁事故に関わっているかもしれないというのです。
実際に調査は行われ、カザマ商事が卸したバンカーオイルによって事故は起きたという調査結果も出ているそうです。
このままでは、カザマ商事はその責任を問われるかもしれません。
しかし、そんな情報はトキワ自動車内には伝わっていませんでした。
トキワ自動車がこのまま何も知らずにカザマ商事を買収すれば、賠償問題に巻き込まれるかもしれません。
疑問を持った君嶋は、真相を探るために調査に関わった研究室の大学教授のもとに向かいます。
大学教授は、バンカーオイルと座礁事故には何の因果関係もなかったと言い張りました。
しかし、実際のデータを扱った研究室の学生は因果関係を証明したと言っています。
何かが隠されていると感じた君嶋は、カザマ商事の代理人に会いに行きます。
そこで明かされたのは、調査結果改ざんの事実でした。
何者かがバンカーオイルと座礁事故の因果関係を隠すために、研究室の教授に大金を渡して口止めを行ったのです。
事実を一つ一つひも解いていくと、口止めを行ったのは君嶋の上司・脇坂しかいませんでした。
君嶋は慕っていた上司が汚いことをしていたと知り落胆しますが、安心してアストロズを運営できるような会社にするために、脇坂を告発します。
【結】ノーサイドゲーム のあらすじ④
脇坂を告発したことで、企業の買収問題も解決し、トキワ自動車には平和が訪れました。
改めて君嶋は本社移動を断り、アストロズの活躍と、ラグビーの復興に力を入れようと考えます。
買収問題の間にも、柴門と選手たちの過酷な練習と地域参加活動は続いていました。
そして、少しずつ日本蹴球会にも変化が現れます。
昔ながらのやりかたにこだわり続け、君嶋の意見を徹底的に排除した日本蹴球会会長は会員の多数決により除名され、ラグビー復興にむけての働きが始まりました。
アストロズの選手は、今後の不安定さを理由に移籍する者もいましたが、次第に君嶋や柴門の熱意に動かされ、本気で日本一を目指すようになりました。
練習試合では、今までとは違う本格的なプレーができるようになり、新入りの選手も目を見張るような活躍を見せています。
アストロズには、サイクロンズというライバルがいました。
サイクロンズの方が規模が大きく、下馬評では日本一はサイクロンズが勝ち取ると言われています。
しかし、アストロズは決して諦めませんでした。
来る日も来る日も練習を重ね、ファンを獲得するためにボランティアに励み、地域に根付いたチーム作りに邁進します。
そしてついに、柴門が監督に就任して二年目。
アストロズは日本一の栄冠を手にするのです。
ノーサイドゲーム を読んだ読書感想
池井戸潤らしい、ビジネスとスポーツの熱い部分が存分に盛り込まれた物語です。
ラグビーのルールも知らず、ビジネスの能力もないまま読み始めたのでついていけるか不安でしたが、とても読みやすくて、読了後には自分も日本一になれたかのような爽やかさがありました。
登場人物は「良い人」「悪い人」にカテゴライズすることができなくて、実際の職番の人間関係を見ているようで、すごく共感できました。
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