【ネタバレ有り】サニーサイドエッグ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 2007年8月に東京創元社から出版
サニーサイドエッグの主要登場人物
最上俊平(もがみしゅんぺい)
主人公。英会話教材のセールスマンを退職した後に探偵になる。
村島茜(むらしまあかね)
最上の助手。ニューヨークのパブリックスクールを休学中。
長尾千春(ながおちはる)
小料理屋を切り盛りする。
三上正道(みかみまさみち)
東亜開発の社長。
斎藤隆司(さいとうたかし)
三上の部下。
サニーサイドエッグ の簡単なあらすじ
動物の失踪事件を主に手掛けている最上俊平は、同時期にふたりの依頼人から猫探しを頼まれます。ひとりは小料理屋を営む年若い女性の長尾千春、もうひとりは表向きは会社を経営する社長ながらも裏の顔を持った三上正道。新しい相棒と力を合わせて居なくなった猫の捜索を開始した最上は、ふたつの依頼の思わぬつながりに気が付くのでした。
サニーサイドエッグ の起承転結
【起】サニーサイドエッグ のあらすじ①
ハードボイルド小説に憧れて探偵になった最上俊平でしたが、舞い込んでくる事件は相変わらずペットに関する相談がほとんどでした。
9月ある日の朝にオフィス兼自宅のキッチンでサニーサイド・アップ(片面だけ焼いた目玉焼き)を作っていると、居なくなった飼い猫を探して欲しいという若い女性が訪ねてきます。
依頼人の名前は長尾千春、職業は小料理屋「あすなろ」の経営、猫の名前はリュウで3歳のオス、品種はロシアンブルー。
依頼を引き受けた最上は市営の衛生施設や民間の動物保護センターを回ったり、ポスターを作って街中に貼って回ったりしますが一向に手掛かりをつかむことができません。
いったんは引き上げて対策を練り直すことにした最上が事務所のデッキチェアで見たのは、髪の毛を金髪に染め上げた女の子です。
ニューヨークのパブリックスクールを休学中でアルバイトを探しているという村島茜は、どう見ても18歳未満でしょう。
未成年者に関する労働基準法の特別保護を持ち出して採用を渋る最上でしたが、猫と会話ができると言い張る彼女の熱意に負けてしばらくの間お試しで助手として雇うことにしました。
【承】サニーサイドエッグ のあらすじ②
次の日に夜遅くにはまたしても行方不明になった猫の捜索依頼が、東亜開発という団体から持ち込まれてきます。
5階建ての雑居ビルにベンツで案内された最上が対面したのは、明らかに反社会的勢力の親分らしき三上正道という中年男性です。
妻が飼っていた猫を3日以内に見つけた場合は150万円を上回る破格の報酬が手に入りますが、失敗すれば何をされるか分かりません。
三上の年若い子分・斎藤隆司が猫を逃してしまった張本人で、顔面がやたらと腫れ上がっているのは兄貴分たちからこっぴどく痛めつけられたからでしょうか。
斎藤から詳しく聞き出した話によると逃げた猫の名前はチョコビーで、品種はロシアンブルーで3歳とのことです。
三上の妻の携帯電話の中に残っていたチョコビーの画像をプリントアウトしたものが、次の日には手際よく最上のオフィスまで届けられました。
千春から預かっていたリュウの写真を隣に並べて見比べてみると、全く同一の猫だと判明します。
【転】サニーサイドエッグ のあらすじ③
もしも猫を発見した場合は最初に依頼を受けた千春に引き渡すのか、それとも報酬が高額で逆恨みが怖い三上に渡すのか。
悩みながらも懸命な捜索活動を続けていた最上は、茜の助けもあって4日目にしてロシアンブルーの捕獲に成功しました。
猫を入れたキャリーバッグを両手で抱きかかえた最上が向かった先は、オープン前で明かりの付いていないあすなろです。
店内で恋人の斎藤と駆け落ちの準備をしていた千春は、リュウを抱きしめながら全てを打ち明けます。
かつて自分が三上の愛人だったこと、手切れ金の代わりとしてこのお店をもらったこと、斎藤とは生まれ故郷が同じこともあって深い仲になったこと。
リュウの首筋には三上の悪行を記録したマイクロチップが埋め込まれているために、千春は猫を手放して斎藤とふたりだけで故郷に帰ってやり直すことにしました。
リュウを千春から受け取った最上は、人質として三上の事務所に置いてきた茜を助けに大急ぎで駆け付けます。
【結】サニーサイドエッグ のあらすじ④
三上からするとマイクロチップさえ取り戻すことができれば、リュウには特に用はありません。
最上は150万円の報酬をキッパリと断って、茜と手術を受けてチップを除去したリュウを受け取り事務所を立ち去りました。
緊張の糸がほぐれた茜は、思わずこれまでは隠していた素顔を最上の前にさらけ出します。
ニューヨークの日本人学校でショットガンを発射して放校処分を受けたこと、父親の再婚相手から虐待を受けていたこと、カウンセラーからは解離性同一性障がいの診断を受けたこと。
自分がいつか他の誰かを虐待してしまう可能性を恐れている茜に対して、最上が送ったアドバイスは「サニーサイドを向け」です。
その時々で居場所を変える猫のように常に太陽を背にして歩け、そうすれば目は自然にひなたを向くようになる。
以前から後見を託されていた親戚に茜が引き取られていった後に、最上はリュウを自然に返します。
ひとりになった最上は昨夜の残りのご飯の上に、サニーサイド・アップを乗っけて食べるのでした。
サニーサイドエッグ を読んだ読書感想
相も変わらず地味なペット探しに追われている、主人公・最上俊平のさえない探偵の日々には笑わされました。
前作「ハードボイルド・エッグ」では明治生まれの80代の女性が探偵の相棒を務めていましたが、本作品では10代の村上茜をヒロインに迎えていてフレッシュな味わいがあります。
一見すると無関係にも思える小料理屋の妙に色っぽい女主人と、強面な組長とのふたつの依頼が交錯していく展開もスリリングです。
才能を発揮して予想外なほど事件解決に貢献した茜がラストで見せたあどけない表情と、最上が彼女に送ったメッセージが感動的でした。
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