「アンフォゲッタブル」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|松宮宏

「アンフォゲッタブル」

【ネタバレ有り】アンフォゲッタブル のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:松宮宏 2019年4月に徳間文庫から出版

アンフォゲッタブルの主要登場人物

鳥谷 書太郎(とりたに しょたろう)
引退した元潜水艦エンジニア。頑固だが、ジャズ好きの一面を持つ。

佐藤 栞(さとう しおり)
保険の外交官。ジャズミュージシャンとしても活躍している。

海音寺 安史(かいおんじ やすし)
元やくざのフリーター。ジャズが好きで独学でトランペットを練習している。

池波 欽二(いけなみ きんじ)
元やくざのフリーター。金に目がない。

アンフォゲッタブル の簡単なあらすじ

元町の商店街にあるジャズ喫茶・JAMZが再開発により、立ち退きの危機に瀕します。真っ先に手を差し伸べたのは、暴力団の組長でした。しかし、資金繰り問題やSNSによる風評被害によって、どんどんJAMZは窮地に陥ります。はたして、ジャムズは無事に再建することができるのでしょうか。ジャズを愛する神戸市民の団結と音楽愛を描く物語です。

アンフォゲッタブル の起承転結

【起】アンフォゲッタブル のあらすじ①

退屈な日常

鳥谷書太郎は、潜水艦エンジニアの仕事を引退してから、退屈な日常を送っていました。

やることがなくてついいら立ってしまい、家の前の幼稚園の騒音や通行者の交通マナーにいちゃもんをつけてはトラブルを起こし、そのうっぷんを妻に当たり散らしていました。

そんな時、書太郎の家に保険の外交官・栞がやってきます。

書太郎の妻は栞と仲良くなり、生命保険を契約しますが、書太郎は不満げです。

そんな時、書太郎がジャズ好きなことを知った栞は鳥谷夫婦を自分が出演するライブイベントに招待します。

会場は神戸元町の商店街にあるJAMZ。

書太郎は、栞が予想以上に演奏がうまかったこと、出演者の中に有名なジャズアーティストがいたことに感激し、邪険に接していた栞とも距離を縮めます。

書太郎の妻も、いつもより機嫌のよい夫を見て喜びます。

しかし、その次の日、書太郎の体調が悪くなります。

急いで病院に行くと、癌が見つかりました。

心配になった妻は自分も検査を受けてみると、妻も癌がありました。

鳥谷夫婦の余命は二人とも同じぐらいでした。

夫婦は、これからは生きたいように生きようと決意をします。

【承】アンフォゲッタブル のあらすじ②

JAMZの危機

鳥谷夫妻が訪れたJAMZは、商店街の再開発により、立ち退きの危機を迎えていました。

JAMZの女主人は自分の年齢のことも考えて、引退を決意していましたが、馴染みの客の湊が再開発後のテナントを借りてJAMZを存続させようと持ち掛けます。

しかし、湊は暴力団の組長であり、表向きはそのような活動はできません。

湊はJAMZに海音寺安史と池波欽二の二人を送り込みました。

彼らは元やくざでチンピラ風の風貌をしていますが、現在はどこにも属さずフリーターをしていました。

彼らは、その特徴的な外見を武器に「忖度ブラザーズ」とネット上で呼ばれる有名人でした。

安史と欽二は組長に言われるがまま、ネット上でクラウドファンディングを行って資金繰りを行い、JAMZが存続できるように働き始めます。

ジャズを愛する安史はこの仕事にのめりこんでいきますが、音楽にそれほど興味を持てない欽二はあまり乗り気ではありません。

しかし、暴力団が後ろに控えているということもあり、二人は必死に働きました。

また、JAMZの素晴らしさに感化された書太郎も出資をしたり、要人を紹介したりと、積極的に協力しました。

【転】アンフォゲッタブル のあらすじ③

崩壊と再建

資金繰りもうまくいき、暴力団から派遣されてきた料理人も揃え、JAMZは問題なく再開できるか、というときに問題が発生しました。

SNS上で、「JAMZには暴力団員が出入りしているのではないか」という噂が流れたのです。

これにより、テナント主からはJAMZの撤退要請が入りました。

安史と欽二は自分たちの怪しげな見た目も悪かったと反省しますが、暴力団の組長は一度も見せには訪れていないし、この噂はデマであると憤ります。

唯一の暴力団関係者は料理人だけですが、料理上手の彼を辞めさせるわけにはいきません。

そんな時、料理人は数日の休みを取り、組から破門されて戻ってきました。

これでJAMZからは暴力団の影は完全に消え去りました。

JAMZの女主人は行政にその経緯を報告し、テナント主からも契約継続の約束を取り付けることに成功します。

JAMZはこれを機に店の名前を「バードランド」に変え、料理人をもう一人雇い、どんどん人気店にのし上がってきました。

【結】アンフォゲッタブル のあらすじ④

幸せな別れ

バードランドはどんどん発展していき、最上のジャズを聴かせ、かつ料理もとてもハイレベルな店だと評判になりました。

しかし、その成功を見届けるとすぐに、書太郎の妻と書太郎は相次いで亡くなってしまいました。

二人とも癌を患ってはいましたが、苦しまずに安らかな最期でした。

JAMZからバードランドへの変遷を見守った人たちは、彼らの死を悼みました。

そんな中、プロのミュージシャンに憧れていた栞と安史が、ジャズを勉強しにアメリカに留学することになります。

店を手伝っていた欽二もいなくなり、バードランドは一度に寂しくなりましたが、女主人はいつでもみんなの帰りをあたたかく待ち続けています。

一定の状態にとどまらずに、常に変化を遂げることこそが、ジャズだからです。

一年後、アメリカから凱旋帰国した栞と安史は、素晴らしいジャズプレイヤーへと進化していました。

その夜は、神戸にジャズを愛する者たちが集まり、一晩中楽しいセッションを繰り広げたのでした。

アンフォゲッタブル を読んだ読書感想

実際のジャズミュージシャンがたくさん登場するので、ジャズを親しんだことがある人にはとても楽しい一冊だと思います。

私は兵庫県出身でジャズ経験者なのですが、比較的マイナーな関西出身ミュージシャンまで登場していたので驚きました。

曲の解釈などもたくさん盛り込まれているので、勉強にもなる一冊です。

しかし、ジャズを知らない人でも、あるジャズ喫茶の再建をめぐる物語として楽しめるかと思います。

かなりボリュームのある本なのですが、軽い語り口とキャラクターのおかげでサクサクと読み進めることができました。

続編もいつか読めたらいいな、と期待しています。

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