「河童」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|芥川龍之介

「河童」芥川龍之介

【ネタバレ有り】河童 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:芥川龍之介 2017年8月に青空文庫から出版

河童の主要登場人物

僕(ぼく)
物語の語り手。自称河童の国から帰ってきた男。事業に失敗して現在は入院中。

チャック(ちゃっく)
河童。僕の主治医。

バッグ(ばっぐ)
河童。漁師。

ゲエル(げえる)
河童。ガラス会社の経営者。

トック(とっく)
河童。僕の友人。詩人。

河童 の簡単なあらすじ

上高地の温泉宿から穂高山へ登ろうとしていた「僕」は、河童を追いかけていうちに彼らの世界に迷い込んでしまいます。「特別保護住民」として河童たちと交流を深めていた僕が帰郷を決意したのは、1匹の河童の自殺にショックを受けたからです。人間の世界に戻りながらも一向に溶け込むことができない僕は、とある病院に強制的に入院させられてしまうのでした。

河童 の起承転結

【起】河童 のあらすじ①

穂高から河童の世界へ転がり込む

僕が上高地の温泉宿から穂高山へ登ろうとしたのは3年前のことで、梓川沿いのルートを進んでいました。

午後1時過ぎになると深い霧に包まれて見通しが悪くなったために、水際の岩に腰掛けて昼食を取ります。

腕時計のガラス板に不思議な生き物の姿が映ったために振り返ってみると、そこで僕が目撃したのは絵本や絵画に出てくるあの河童です。

逃げ出した河童を夢中になって追いかけていた僕は、熊笹の茂みに足を取られて穴の中に転げ落ちてしまいました。

しばらくしてから意識を取り戻すと、たくさんの河童に取り囲まれています。

節々が傷んで動きがとれない僕の手当てをしてくれたのは、鼻眼鏡を掛けたチャックという名前の河童です。

1週間ほど経過すると体調も回復してきた僕は、「特別保護住民」の認定を受けてチャックの隣の家で暮らすことが決まりました。

僕の家は河童サイズのためか少し窮屈でしたが、銅版画が飾られていてピアノも置いてあり思いのほか快適です。

バッグという穂高岳で遭遇したあの河童から、僕は彼らの言語を教わります。

【承】河童 のあらすじ②

河童たちの知られざる暮らし

チャックの話では河童の体重は20ポンドから30ポンド(約9キロから13キロ)ほどで、頭の真ん中には楕円形の皿があり皮膚の色は周囲に応じて変化する保護色です。

財布や小物入れは腹部の袋にカンガルーのように収納していて、皮膚の下は分厚い脂肪で覆われているために真冬でも服を着ていません。

河童の使う言葉を覚えてきた僕は、日常会話くらいは交わせるようになりました。

彼らの風俗や習慣も理解し始めていきますが、人間界の常識とは凡そかけ離れています。

河童の子供は生まれながら歩いたり喋ったりできるようで、安楽死を望む赤ちゃんもいるくらいに知能が高いです。

ゲエルという河童が経営するガラス会社では、解雇された社員たちを肉に加工して食べてしまいます。

産児制限や労働者と殺法によってその種族数がコントロールされているために、人口問題も心配ありません。

僕は河童肉のサンドイッチをゲエルから差し出されますが、思わず逃げ出してしまいました。

【転】河童 のあらすじ③

友の死と元の世界への帰還

数多くの河童を紹介された僕でしたが、その中でも特に忘れられないのが詩人のトックです。

自宅まで招かれたために遊びに行くと、狭い部屋の中で執筆活動に励んだりタバコを吸ったりと自由気ままに暮らしていました。

トックとは心から信頼し合えるようになりましたが、間もなく彼はピストルで自分の頭を撃ち抜いて自らの人生を生涯を終わらせてしまいます。

トックの家に幽霊が出るといった話が流れ始めたのは、それから1週間ほど後のことです。

さっそく町の本屋で新聞や雑誌を購入してみると、そこには確かにトックの幽霊の写真が載っていました。

こういった記事を読んでいるうちに僕は次第に気分が落ち込んできて、この国に居ることもすっかり嫌になってしまいます。

バッグ教えてもらったのは、町はずれに住んでいて1番の物知りな年寄りの河童のことです。

長老の家の天井からは1本の綱はしごが垂れ下がっていて、それをよじ登って僕は元の世界に帰ることにしました。

【結】河童 のあらすじ④

人間の世界に溶け込めない僕

河童の国から帰ってきた僕でしたが、人間の皮膚から立ち込める体臭には一向に慣れることができません。

会話の際には河童語を使ってしまうために、周りの人たちからは何かと奇妙な視線を感じるようになりました。

会社を立ち上げますが1年ほどで失敗してしまい、チャックやバッグたちの顔が見たくなってしまいます。

中央線に乗って穂高地方へ向かう途中でパトロール中の警察官から職務質問を受けますが、河童に会いに行くという僕の話はまるで信じてもらえません。

ついに東京の外れにある病院の閉鎖病棟に入院することになり、僕に割り振られたナンバーは第二十三号です。

院長のS博士から早発性認知症の病名を告げられた時には30歳が過ぎたばかりでした。

病室のベッドの上で河童たちのことばかりを延々と考えていた僕は、月明かりの射し込むある夜にバッグの訪問を受けます。

確かにトックの詩集をお見舞いの品として受け取ったはずでしたが、次の日の朝には古ぼけた電話帳に変わっているのでした。

河童 を読んだ読書感想

日本文学を代表するほどの小説家が、大真面目に河童の社会システムについて延々と語っているために笑わされました。

のどかな大自然に包まれた穂高の山々から、突如として河童の世界へ迷い込んでしまう思わぬ展開に引き込まれていきます。

会社をクビになった途端にサンドイッチにされてしまったり、生まれてすぐに安楽死を施される場面もありブラックユーモアもたっぷりです。

荒唐無稽なストーリーの中にも、河童を通して人間の世界が抱えている問題や矛盾を鋭くしてしているために考えさせられます。

長野県松本市にあるという観光スポット、「河童橋」にも一度足を運んでみたくなりました。

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