【ネタバレ有り】ジャイロスコープ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:伊坂幸太郎 2015年7月に新潮社から出版
ジャイロスコープの主要登場人物
浜田(はまだ)
浜田青年ホントスカの主人公。本当っすかが口癖。
稲垣(いながき)
相談屋をしている頭と体のバランスが悪い男。浜田青年ホントスカ、後ろの声がうるさいに登場。
山本(やまもと)
普通のサラリーマンで、妻子持ち。駅までバス通勤している。
松田(まつだ)
サンタクロースの会社でプレゼント準備部門のリーダーとして働いている。よくミスをする。
ジャイロスコープ の簡単なあらすじ
本当っすかが口癖の浜田青年が相談屋の稲垣との出会いアシスタントとして働くこととなる「浜田青年ホントスカ」、もしもあの時こうしていればという思いと本当にやり直せた場合を描く「if」、サンタクロースの会社が出てくる「一人では無理がある」、新幹線の後ろの席での会話が気になって仕方がない「後ろの声がうるさい」など全7編の短編集です。
ジャイロスコープ の起承転結
【起】ジャイロスコープ のあらすじ①
蝦蟇倉市へとやってきた浜田はこの先どうするか悩んでいました。
とりあえずはビジネスホテルに宿をとったものの、家出後数日が経過しておりクレジットカードも止められる可能性がある為、早々に仕事を見つける必要がありました。
ホテル近くのスーパーの駐車場を歩いていると頭と身体のバランスが悪い男に呼び止められます。
思わずあっと声を出す浜田ですが、男はそのような反応に慣れているらしくあまり気にする様子はありませんでした。
稲垣と名乗った男はスーパーの駐車場脇で相談屋をやっており、最近助手に逃げられたのでもしやる事が無いなら助手にならないかと誘ってきます。
稲垣の話を聞きつつ歩くうち、気がつくと稲垣の事務所に入っていました。
とりあえず一週間は稲垣の仕事を見て、その後でやってくる客の相談に乗って欲しいと頼まれます。
怪しげな話に口癖の本当っすかを連発する浜田ですが、当ても無かったために稲垣の元で働くことにします。
稲垣はやってくる相談者の悩みが軽くなるようなアドバイスをしていきますが、中には明らかに犯罪を教唆するようなアドバイスまでありました。
一週間後、やってきた客は稲垣本人でした。
浜田は冗談かと思いますが、稲垣はこれまでの経緯を明かし始めます。
実は浜田は東京の金持ちの息子で、誘拐を計画していた男から稲垣に相談があったそうです。
稲垣は口車に乗せて一週間監禁するための提案をすると、その役をやって欲しいと頼まれました。
このため、一週間の間浜田に助手をやってもらい監視していたのでした。
浜田にも秘密があり、実は浜田本人でなく殺して入れ替わっていました。
さらに浜田誘拐に協力している稲垣の殺人も依頼されており、どうやって殺そうかと考えていた所に稲垣本人から助手にならないかと誘われて驚いていたと話します。
稲垣は殺すなら殺せば良いとアドバイスしますが、何となく殺す気になれず稲垣と共に蝦蟇倉市を離れることにしました。
【承】ジャイロスコープ のあらすじ②
もし、あの時、ああしていればどうなったのか、と想像することは誰にでもあり、山本もそうでした。
いつも通りに家を出てバス停の向かい側までたどり着いたところで老婆がキョロキョロしているのを見かけます。
朝早くに何か困っているのかなと思ったものの、バスが近づいてきたのを見て山本は会社に遅刻しないように老婆は無視してバスに乗ることにします。
しかし、バスに乗ってしばらくすると後ろの方が騒がしくなります。
何事かと振り返ると男が女性に刃物を突きつけていました。
山本はバスジャックに遭遇してしまい、頭が真っ白になりますが、周りの人も同じようで女性を助けようと動く者はいませんでした。
バスジャック犯は乗客に通報するな、勝手に動くなと脅しながら前へと進んでいき運転手にバスを停めるよう指示します。
停車後、男は全員降りろと言われ、山本は犯人を止める最後のチャンスだと思いながらも家族の顔が浮かび自分は生きて帰らなければと自分自身を納得させます。
しかし、その後の人生はこの事を後悔し続けて生きることになりました。
山本はいつも通りに家を出てバス停の向かい側までたどり着いたところで老婆がキョロキョロしているのを見かけます。
山本はバスに乗り遅れるのも気にせずに老婆に声をかけると、コンビニを探していると言うので道を教えます。
バスにも間に合い乗り込むとバスジャックが起きます。
乗客の男は犯人に挽回の機会をくれてありがとうと感謝し、皆で協力して犯人を取り押さえます。
事件はちょうど20年後に前と同じ犯人が起こしたもので、山本を始め犯人を取り押さえた乗客は前の事件での不甲斐ない対応を後悔していた仲間でした。
【転】ジャイロスコープ のあらすじ③
林衿子は深夜に娘の梨央からの電話で目が覚めます。
何か大変な事があったのではないかと悪い予感を抱きながら電話に出ると、梨央は以前ストーカー被害にあっていた事を覚えているかと聞いてきます。
結婚、出産と共に引越ししたため、付きまとわれることは無くなったのですが、たまたまレンタルビデオ屋に行った際、そこでバイトをしていたストーカー男と再会し、男は個人情報を調べて家にやって来るとメールしてきたそうです。
衿子はどうする事も出来ず、とにかく警察に連絡するよう言って電話を切ります。
10分後、梨央からストーカーを退治したと連絡が入り、衿子は安堵します。
サンタクロースは実在しないが、システムは存在します。
会社ではなくNGOのようなもので、そこで働く人には賃金が支払われます。
採用はスカウトにより行われ、サンタクロースを必要としている子供を調査する部門、プレゼントを準備する部門、配達する部門や人事部門などに別れて仕事をしています。
普通の人には関係が無く、誰からもプレゼントを貰えない恵まれない子供達にプレゼントをあげるのが仕事です。
プレゼントを準備する部門のエリアリーダー松田は、よくミスをすることで有名でした。
鉄板を準備しろと言われて本物の鉄の板を準備してしまうような勘違いをしてしまうようなところがあります。
梨央の向かいの部屋に住む少年は、父子家庭で夜は少年1人で過ごすような家庭でした。
梨央がストーカーに襲われ逃げていた物音に驚き、少年はサンタクロースからのプレゼントを持って外に出てきました。
少年が包みを開けると鉄板が入っており、梨央はその鉄板を使ってストーカーを撃退します。
まさかサンタクロースが少年にプレゼントをくれたのかと考える梨央ですが、一人で世界中の子供に配るなど現実的には無理だと思います。
【結】ジャイロスコープ のあらすじ④
東京行きの新幹線はやぶさの中、私は買いたい車の事を考えています。
最近は仕様やデザイナーの記事などを読んでは物欲を必死に抑えていました。
後ろの席に座っている中年男性の横に若い男がやってきて、女優がこの車両に乗っていてそれを観察するのに良い席だからと中年男を納得させて隣に座ります。
中年男は女優が交際しているという噂について喋り出すと、記者らしき若い男も答えます。
そこから二人の会話が始まりますが、若い男は幼い頃に父親が離婚して出ていったらしく、中年男は高校で教師をしているようです。
巨体に芸術家のような鋭い目つきのアンバランスな男が急に私の隣に座ってきます。
男は、車内販売が来たのを避けるために座ったようで、ついでに私に話しかけてきます。
男は相談屋をやっているので何か悩みがあれば答えると言われたため、私は車を買うかどうかで迷っていることを相談します。
男は、それならば買う方が良いと答えます。
買っても買わなくても人生大差無いので、我慢するよりは買った方が良いというアドバイスでした。
東京駅に着くと記者は中年男に不躾に隣に座った詫びをします。
私は女優を一目見たいと思い、女優らしき人に近づいて確認すると女優などではありませんでした。
記者が間違っていたのだと思っていると、ちょうど記者が歩いてきました。
その顔を見ていると、車のデザイナー記事で見た顔だと閃き、つい私は話しかけてしまいます。
若い男は記者ではなくデザイナーであり、中年男と話したかったので嘘をついたと告白します。
私は訳が分からなかったものの、我に返り会社に戻ります。
新幹線の車内では、清掃係が中年男が書いたメモを拾っていました。
そこには、幼い頃に別れた息子への感謝と深い愛情が書き連ねられていました。
ジャイロスコープ を読んだ読書感想
全7話構成の短編集ですが、最後の「後ろの声がうるさい」は文庫本として出版するにあたって書き下ろされた作品です。
他の6話に関わるような内容が出てくる総集編のようになっています。
私は記者を装ったデザイナーと中年男の関係について最後まで知ることはありませんでしたが、二人が実は親子でありしかも二人ともそれに気づいて会話を楽しんでいたと分かるととても微笑ましく感動できる話になっています。
他の短編でも、驚愕のラストやほっこりするラストなど、短い中に笑いも感動も詰まっている作品ばかりですのでどれも楽しく読むことが出来ます。
サンタクロースが実在しないが会社としてサンタクロースを行うシステムが存在するという話など、独特な伊坂ワールドが簡単に楽しめますのでとてもオススメの短編集です。
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