【ネタバレ有り】さよならバースディ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 2008年5月に集英社から出版
さよならバースディの主要登場人物
田中真(たなかまこと)
本作の主人公。霊長類研究センターにてバースディに言語習得実験を行う。
藤本由紀(ふじもとゆき)
大学院生で真の研究を手伝う。真と付き合っている。
バースディ(ばーすでぃ)
ボノボという種類の猿。言語習得実験では90以上の単語を習得する。
神田祐介(かんだゆうすけ)
ライター。バースディの言語習得実験や霊長類研究センターについて真に取材する。
安達(あだち)
助教授。言語習得実験プロジェクトの創始者。一年前に自殺。
さよならバースディ の簡単なあらすじ
主人公の田中真は、霊長類研究センターでボノボのバースディに言語習得実験を行っています。研究は順調に成果をあげます。そんな中、実験のアシスタントで恋人でもある藤本由紀に、真はプロポーズをします。ところがその晩、由紀は転落死してしまいます。自殺か、他殺か。真は真相を突き止めるため、由紀の転落を目撃していたバースディに聞き出そうと奮闘します。そして、衝撃のラストへと導かれます。
さよならバースディ の起承転結
【起】さよならバースディ のあらすじ①
田中真は、ボノボのバースディに言語習得実験を行っています。
その実験の進捗状況を報告するため、数人の教授やライターの前で実際に実験の様子を公開します。
バースディは人間の3歳児程度の言葉の聞き取り能力があります。
また、約90の単語を記憶しています。
真の問いに対し、ボノボは特製のキーボードを打って回答します。
このキーボードは、アシスタントの藤本由紀が作製した物です。
進捗状況報告の実験は、大成功を収めます。
実験終了後、真はライターを名乗る神田祐介の取材を受けます。
取材の中で、真は実験の目的や内容の紹介をします。
神田は生物学や言語学に詳しいわけではないため、簡単に説明します。
実験の創始者、安達にふれた時、神田はそれまでの説明よりも強く反応します。
安達は一年前にバースディの檻の前で自殺しており、神田はそのことを知っていたからです。
一通り取材が終わり、神田は取材メモを整理し勉強し直してから再訪すると告げ別れます。
【承】さよならバースディ のあらすじ②
バースディは更に多くの言語を習得し、実験は順調に進んでいます。
ある日、真はアシスタントで恋人でもある由紀と特別なディナーに行く約束をします。
その日の勤務中、動物達の檻がある飼育舎で神田に遭遇します。
研究と直接関係の無い飼育舎に興味を示す神田を、真と由紀は不審に思いつつ神田を追い出します。
一年前に安達が飼育舎で死んでから、関係者以外立入禁止になったのです。
その後、真は教授に呼ばれバースディをシンポジウムで公開することを提案されます。
それに対し、真は反対します。
もう少しデータを揃えてからの公開、もしくはビデオ映像の公開を提案します。
ところがビデオ映像は由紀が反対していると教授は言います。
結局、別日にまた話し合うことになりました。
その夜、真は由紀とディナーを食べながら、バースディの公開や安達の死について話をします。
由紀は「安達は自殺ではないのでは」と疑っているのです。
それらの話の後、真は緊張しながら由紀にプロポーズをします。
由紀は「博士論文で今は忙しい。
待って欲しい」と答えます。
帰りに駅まで送ると、二人は口づけをして別れます。
指輪はまだ受け取って貰えませんでしたが、真は手応えを感じて喜びます。
そして、居酒屋で酒を一人で飲んで帰ります。
【転】さよならバースディ のあらすじ③
翌朝、真に研究センターから連絡が入ります。
研究センターで由紀が昨晩死んでしまったという知らせでした。
転落死でした。
警察は自殺と判断して処理をします。
由紀が対人恐怖症を患っていたこと、以前にも自殺を試みたことがあることを真は聞かされます。
それでも、真は由紀の自殺を信じられず、その晩の真相を知りたいと願います。
その時ふと思い出します。
バースディは由紀の転落死を目撃していたのです。
真はバースディからその晩のことを聞き出そうと試みます。
その結果、「死ぬ前に誰かから電話がかかって来たこと」と「電話の後に由紀が泣いていたこと」が判明します。
その一方で、真は神田から霊長類研究センターが不正に資金を受給していることを聞かされます。
安達の死後、内部告発の文書を神田が受け取ったのです。
神田が霊長類研究センターを訪問する真の目的は、その不正受給の調査でした。
真は神田に協力を申し出ます。
そして、自分にその文書を送るよう願い出ます。
【結】さよならバースディ のあらすじ④
神田から郵送された告発文書を読み、真はそれを書いたのが由紀であると確信します。
同時に、安達と由紀がかつて男女関係にあったことも理解します。
郵便物を確認していると、バースディ用の新しいプログラムのDVDが届いていることに気づきます。
由紀が真へ送ったのです。
その一方で、由紀の最後の電話について更に分かったことがありました。
大友という教授が電話の主だったのです。
真は大友を問い詰めます。
すると、大友は「バースディの言語習得はいかさまだ」「由紀には今更抜けられないと伝えただけだ」と答えます。
大友を殴り、真はDVDを持ちバースディと共に研究室へ向かいます。
DVDの新プログラムをバースディ用の機械が読み込みます。
そして、真はバースディのキーボードの秘密を知ってしまいます。
それは、予め問に対する答が用意されていて、人間には聞こえない周波数の音でバースディに伝えられていたのです。
進捗状況報告の場で成功したのは、そのいかさまのおかげだったのです。
由紀は安藤のためと思って、研究成果が出るようキーボードに細工をしました。
しかし、安藤はそのことに気が付き自殺をしました。
由紀は安藤の死が自分のせいであると苦しみます。
その苦しみに耐えきれず、あの晩に自殺したのでした。
全てを知り、バースディの実験は終わりました。
真はバースディをアフリカへ返す決意をします。
さよならバースディ を読んだ読書感想
先が気になってページをめくる手が止まらない、極上のミステリーです。
決して短くない長編ミステリーですが、長さを感じさせません。
愛する人を突然失ってしまった悲しみに暮れながらも、真相を知ろうともがく真をついつい応援してしまいます。
動物実験が本作で大きく取り上げられていますが、バースディと真の交流は温かなものです。
バースディが真に答えようとする姿は健気で感動します。
愛くるしいバースディの描写に、読んでいて心が和みます。
最後の由紀の死の真相を知った後は、悲しみが押し寄せます。
読み終えるまでに、様々な感情を呼び起こす1冊です。
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