【ネタバレ有り】なかよし小鳩組 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 1998年10月に集英社から出版
なかよし小鳩組の主要登場人物
杉山(すぎやま)
主人公。 ユニバーサル広告社のクリエイティブ・ディレクター。
石井(いしい)
ユニバーサル広告社の社長。
小鳩源六(こばとげんろく)
小鳩組の組長。
河田薫(かわだかおる)
小鳩の子分。
高橋早苗(たかはしさなえ)
杉山と前妻との間に生まれた娘。
なかよし小鳩組 の簡単なあらすじ
弱小広告プロダクションに勤めている杉山は、プライベートでもお酒に溺れて妻子に捨てられて自堕落な毎日を送っています。ある時に社長の石井がピースエンタープライズという会社から企業イメージのアップを頼まれますが、社長の小鳩源六は泣く子も黙る小鳩組の組長です。次から次へと無理難題を押し付けられていく杉山でしたが、かつての仕事への情熱を取り戻していくのでした。
なかよし小鳩組 の起承転結
【起】なかよし小鳩組 のあらすじ①
杉山は大手広告代理店の製作部に勤めていましたが、お酒の飲み過ぎと過労が原因で退職することになりました。
結婚生活もうまくいかずに離婚した後は、2DKのマンションで独り暮らしを送っています。
現在の勤め先は小さなプロダクション「ユニバーサル広告」で、従業員は社長とアルバイトを合わせても4人しかいません。
ある時に社長の石井が新しく開拓してきたお得意先は、「ピースエンタープライズ・スクエア」という名前の会社です。
依頼内容は企業のシンボルマークやキャッチフレーズを考えるイメージ統合戦略で、報酬も1000万円と破格でした。
本社は東京近郊の七海市に5階建てのビルを構えているために、さっそく杉山たちは打ち合わせに向かいます。
ビルの中の事務所には「おとこ気一路」と墨書きされた額縁が掲げられていて、屈曲な体格に強面な男性が多いです。
現れたのは小鳩源六という初老の男性で、彼こそは構成員117人を率いる指定暴力団の組長でした。
【承】なかよし小鳩組 のあらすじ②
1992年3月の暴力団対策法以来、小鳩組という本来の組織名や組の紋章をおおっぴらに使用できません。
表向きはピースエンタープライズと改め株式会社に鞍替えして、建設業から金融業まで幅広く手掛けていました。
ユニバーサル広告が小鳩組長から頼まれたのは、代紋に変わる社名ロゴを作ることです。
組長と面会した次の日からはピースエンタープライズの「宣伝部部長」という名目で、河田薫という頭をそり上げた巨漢がユニバーサル広告のオフィスで目を光らせています。
勤務時間が終わった杉山は有無を言わさずに、河田の部下が運転するベンツに乗せられて夜の街へと連れていかれました。
30年近く小鳩組にいて3回の懲役を勤めていること、いまだに幹部に昇進できずにいるほど上納金の額が思わしくないこと、ノルマがきついために妻がパートに出ていること。
出世の遅れた万年ヒラの構成員と、倒産寸前の広告会社の平社員にそれほど違いはありません。
酒の席ですっかり打ち解けたふたりは、次の日からはすっかり仲良しです。
【転】なかよし小鳩組 のあらすじ③
世田谷通り沿いにある自然食レストランで、杉山は元妻・幸子と娘の早苗に久しぶりに会いました。 近々乳ガンの手術を受けるために入院する幸子でしたが、早苗は再婚相手の高橋になついていません。
しばらくの間早苗を預かることになった杉山は、自然と健康的で規則正しい生活へ変わっていきます。
学生時代以来の自炊を始めたのも、これまでの外食が中心だった食生活を改善して栄養バランスやカロリー計算に気を遣うためです。
アルコールとタバコの匂いを嫌がる早苗のために、禁酒禁煙も始めました。
仕事が忙しい高橋と普段はカルチャースクールで染め物を教えている幸子の影響で、早苗は何でも独りでこなしそれほど手が掛かりません。
仕事が早めに終わったある日の夕方、地元のサッカークラブに所属している早苗を新丸子にある等々力スタジアムに連れていきます。
ひいきの浦和レッズが1対0で勝利したために、早苗は大喜びです。
相変わらず会社は自転車操業で唯一のクライアントにも悩まされてばかりでしたが、この日の夜だけは杉山は幸せでした。
【結】なかよし小鳩組 のあらすじ④
「平和」をモチーフにした小鳩組のロゴマークがようやく完成しましたが、お披露目する機会がなかなかありません。
テレビCMや新聞広告のスポンサーはコンプライアンスにうるさいために、指定暴力団のコマーシャルを受け付けてくれないからです。
杉山は長くアマチュアランナーに親しまれている、 「七海マラソン」に目を付けました。
七海市内を走る市民マラソンに、今年は有名飲料メーカーがスポンサーにつきテレビ中継もされます。
当日に小鳩組のロゴが入ったユニフォームを着てレースに参加すれば、宣伝効果は抜群です。
高校時代に陸上部に所属していた杉山は、本業を忘れてしまうほどトレーニングに打ち込んでいました。
「完走せんヤツは破門」という小鳩組長の鶴の一声を聞いては、組員たちも参加するしかありません。
レース当日になると七海駅前には特設会場が設けられて、巨大スクリーンの中では無数の鳩が踊っています。
沿道に溢れる見物客の中に早苗の姿を見た杉山は、遥か先のゴールを目指して走り続けるのでした。
なかよし小鳩組 を読んだ読書感想
お酒が大好きな上にバツイチ子持ちの主人公・杉山には、情けなくもどこか憎めないものがありました。
突如として反社会的勢力の親分に頼まれごとをされながらも、思いのほか打たれ強い一面も披露しています。
小鳩組から出向という形で宣伝活動を任されてしまう河田薫との間に、芽生え始めていく奇妙な一体感も印象深かったです。
極道であれサラリーマンであれ、上司の命令と組織のシステムに逆らえないのは同じなのかもしれません。
父親としても社会人としても中途半端だった杉山が、少しずつ前に踏み出していく姿には心温まるものがありました。
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