「盲目的な恋と友情」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

「盲目的な恋と友情」

【ネタバレ有り】盲目的な恋と友情 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:辻村深月 2014年5月に新潮社から出版

盲目的な恋と友情の主要登場人物

一瀬蘭花(いちのせらんか)
ヒロイン。 大学の英文科を卒業後に商社に就職。

傘沼留利絵(かさぬまるりえ)
蘭花の友人。 大学院を出た後に学芸員として美術館で働く。

茂美星近(しげみほしちか)
蘭花の彼氏。 若手の指揮者。

室井稔(むろいみのる)
茂美の師匠。

室井奈々子(むろいななこ)
室井稔の妻。

盲目的な恋と友情 の簡単なあらすじ

幼い頃からバイオリンを習っていた一瀬蘭花は、 大学生になってからもアマチュアオーケストラに参加して演奏を続けています。同じ1年生の傘沼留利絵とは親友に、指揮者の茂美星近とは恋人です。ある事件をきっかけに茂美の指揮者としての未来が閉ざされることによって、3人の関係にも微妙な変化が訪れることになるのでした。

盲目的な恋と友情 の起承転結

【起】盲目的な恋と友情 のあらすじ①

バイオリンを通じて育む友情

一瀬蘭花は元タカラジェンヌの母親の影響で、幼い頃からバイオリンを習っていました。

中学にも高校にもオーケストラのできる部活はなかったために、蘭花はソロでしか弾いたことがありません。

東京の外れにある私立大学の文学部英科に進学した蘭花は、大きなホールで演奏会をやるアマチュアオーケストラに入部します。

12人いる1年生の第1バイオリンの中で、蘭花が1番に仲良しになったのが傘沼留利絵です。

同じ文学部でも留利絵が所属している美学美術史科は狭き門で、父親が有名な画家である彼女は博識で話が合いました。

メイクをすることもなく、ネイルアートをすることもなく、合コンをすることもなく。

今時の女子大生が夢中になるような楽しみとはおよそ縁がない留利絵には、異性とのお付き合いの経験もないようです。

彼女との友情を大切にしたい一方で、2年生になった蘭花には彼氏がでます。

相手はオーケストラで指揮を執る茂美星近で、彼は蘭花に天国と地獄の両方を運んできました。

【承】盲目的な恋と友情 のあらすじ②

指揮台からの転落

茂美は国内よりも海外でその名を知られている実力派の指揮者、 室井稔の下で勉強していました。

茂美自身も室井の渡航に付き添うことが多く、最近ではベルギーを行ったり来たりの生活を送っています。

ハンサムなルックスに指揮者として約束された未来もあり、茂美はオーケストラの女性メンバーからの憧れの的です。

蘭花と茂美はお似合いのカップルとして周りの人たちから祝福されていましたが、留利絵だけはひそかに不安を抱いていました。

もともと外部からセミプロとしてやってくる指揮者とまるっきり素人の部員との関係は、 1年から2年程度と余り長続きはしません。

さらに茂美は、日頃からお世話になっている室井の妻・奈々子と過ちを犯してしまいます。

室井の逆鱗に触れた茂美はあっという間に仕事を干された状態になりますが、 指揮者を諦め切れないようです。

働かなくなった茂美は、 大学を卒業して大手の商社に就職した蘭花を金銭的に頼るようになりました。

【転】盲目的な恋と友情 のあらすじ③

茂美の死によって解き放たれる蘭花

大学院への進学が決まった留利絵は、 蘭花とマンションでルームシェアを始めました。

そんなふたりのもとに、茂美は足繁く通ってきます。

以前は海沿いの高層マンションで優雅な生活を送っていた茂美でしたが、現在は最寄り駅から離れた廃虚のような陸橋を渡った先にあるアパート暮らしです。

留利絵は同居人としても親友としても幾度となく茂美と縁を切るようにアドバイスしますが、彼への未練たらたらな蘭花には聞き入れてもらえません。

茂美のスマートフォンには蘭花を盗撮した動画が保存されていて、下手に彼を刺激するとばら蒔かれてしまう恐れもありました。

茂美が自宅の近くにある陸橋から転落したのは、それから間もなくのことです。

蘭花たちのマンションを訪ねてきたふたり組の刑事によると、現場の柵がかなり脆くなっていた上に茂美は泥酔状態でした。

茂美のスマートフォンが紛失して発見されないままでしたが、アパートからで見つかった「死にたい」というメモが決め手になり警察は自殺と断定します。

【結】盲目的な恋と友情 のあらすじ④

罪で結ばれたふたり

茂美が亡くなってから病気を理由にして1年間会社を休んでいた蘭花でしたが、復職してからはみるみるうちに気力を取り戻していきました。

1つ年下の後輩・乙田と営業先を回っているうちに、彼とはプライベートでも親しくなります。

ふたりの結婚式に留利絵が招かれたのは、茂美の死から1年半が経過した頃です。 披露宴で留利絵が友人代表としてスピーチを始めたまさにその時、いつかのふたり組の刑事が会場内に雪崩れ込んできました。

あの日いつもの待ち合わせ場所の陸橋の上でお金を要求されていた蘭花は、衝動的に茂美を突き飛ばしてしまいます。

パニックになった蘭花がその場を逃げ出した後に、茂美のスマートフォンを持ち去ったのは留利絵です。

秘密を守り抜く覚悟だった留利絵ですが、蘭花は親友よりも新しい恋人との結婚を選択してしまいます。

証拠のスマートフォンを警察に送りつけることによって、留利絵は共犯者としていつまでも蘭花の側にいることを誓うのでした。

盲目的な恋と友情 を読んだ読書感想

音楽大学ではなくごく普通の私立大学を舞台にして、学生オーケストラの内部の人間模様をリアルに描き出しているところが面白かったです。

宝塚の女役として活躍した母親を持ち容姿が端麗なヒロインの一瀬蘭花と、自らのルックスにコンプレックスを抱えている留利絵とのコントラストも効果的でした。

ふたりの間に芽生えていくのは、友情だけではないはずです。

お互いの足りないものを奪い合うような、スリリングな関係に引き込まれていきます。

親友が犯した罪を一度は庇いながらも、クライマックスでどんでん返しを演じた留利絵には驚かされました。

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