【ネタバレ有り】あの日にドライブ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:荻原浩 2005年10月に光文社から出版
あの日にドライブの主要登場人物
牧村伸郎(まきむらのぶろう)
主人公。 43歳。大手の都市銀行を辞めて現在はタクシードライバー。
牧村律子(まきむらりつこ)
伸郎の妻。 スーパーのパート店員。
牧村朋美(まきむらともみ)
伸郎の娘。 中学1年生。
牧村恵太(まきむらけいた)
伸郎の息子。 小学3年生。
村岡恵美(むらおかめぐみ)
伸郎の大学生時代の恋人。
あの日にドライブ の簡単なあらすじ
銀行員として順風満帆な人生を歩んできたはずの牧村伸郎でしたが、現在はタクシーの運転手を惰性で続けているだけです。ある日のことお客さんを白金まで乗せたついでに、かつて住んでいたアパートを訪れます。その日を境にして見違えるように営業成績がアップした伸郎は、 思い出の場所をタクシーで走り回るようになるのでした。
あの日にドライブ の起承転結
【起】あの日にドライブ のあらすじ①
牧村伸郎は行員20000人を抱えるメガバンク「なぎさ銀行」で順調にキャリアを積んできましたが、上司と衝突して関連会社への出向を命じられた末に退職してしまいました。
資格取得の勉強を始めたりハローワークへ通ったりしていましたが、以前のような条件の職場はなかなか見つかりません。
当面の間は所属するドライバーが100人程度の小さなタクシー会社、わかばタクシーに嫌嫌ながら就職します。
収入は歩合制のために不安定で、スーパーマーケットでパートタイマーとして働いている妻・律子の方が上です。
長男の恵太はテレビゲームに夢中で、思春期の真っただ中な長女の朋美との会話は成立しません。
ある日の昼過ぎに大田区のはずれで拾ったお客様を、白金まで案内しました。
大学生の頃に独り暮らしをしていた懐かしさもあって、乗客を降ろした後に当時の下宿先「白藤荘」を訪れてみます。
管理人から近々取り壊し工事が始まると聞いた伸郎が思い出したのは、学生時代にお付き合いをしていた村岡恵美の顔です。
【承】あの日にドライブ のあらすじ②
恵美の実家は今でもまだ世田谷区の桜上水にあるはずで、仕事を放り出して向かうことにしました。
こんな日に限って客に捕まることが多く、2時間の間に3組を乗せて10000円ほどを売り上げます。
ようやく到着したのは午後7時で、閑静な住宅街の緑に囲まれた村岡邸は昔のままです。
2階には明かりが付いていて人の気配がしますが、いつまでもタクシーの中から他人の家を伺っている訳にはいきません。
伸郎が車を発車しようとしたところ、両手に大荷物を抱えた中年男性が窓をノックしてきました。
この日の最後の乗客の行き先は小田原で、ノルマを楽に突破して営業成績も第2位を記録します。
翌朝に朝刊の一面を見ていた伸郎が見つけたのは、池袋にある小さな出版社「青羊社」の広告です。
大学時代に学生向けのタウン誌を作るサークルに入っていた伸郎は、一時は出版関係への就職を考えていて青羊社もその候補のひとつでした。
験を担いだ伸郎は、今日は池袋を走り回ることにします。
【転】あの日にドライブ のあらすじ③
途中でお客さんを拾ってしまうために、池袋にはなかなかたどり着きません。
その日はたまたま大安だったために、結婚式の帰りらしき遠距離客が次から次へと転がり込んできました。
伸郎は自分だけの「ツキの法則」について、だんだんと理解し始めていきます。
昨日の恵美ゆかりの桜上水であれ今日の青羊社ゆかりの池袋であれ、かつて自分が置いてきた夢のある場所へタクシーで行くことです。
1週間ほどで営業成績が見違えるようになった伸郎は、再び桜上水に来てしまいました。
夕暮れどきに見る恵美の美しさは、20年の時が流れても変わることはありません。
現在は兄夫婦と同居をしている彼女は、何かと居場所がない思いをしているようです。
義理の姉にいじめられている恵美が、その腹いせに彼女の息子を虐待する場面を伸郎は目撃してしまいます。
ここが自分のいる場所ではないと悟った伸郎は、アクセルを踏んで妻とふたりの子供たちが待つ我が家に帰ることにしました。
【結】あの日にドライブ のあらすじ④
JR蒲田駅のロータリーの前に停まっていた伸郎は、最終列車に乗り遅れたサラリーマンを待ち受けていました。
泥酔状態で乗り込んできた50歳前後の男には、見覚えがあります。
なぎさ銀行に勤めていた時の支店長・徳田で、伸郎へ関連会社への出向を命じた張本人です。
「あさひ」とだけ目的地を告げて眠り込んでしまったために、伸郎は千葉県の旭市へと走り出しました。
九十九里浜に徳田を放り出した伸郎は、海岸を東に行った先にある伸郎が通っていた中学校を訪ねてみます。
正門はしっかりと施錠されていましたが、 校庭に面したフェンスの金網が1カ所だけ破損しているのは昔のままです。
小さい頃からスポーツが得意だった伸郎が野球を辞めたのは2年生の時にこの学校を転校したためで、バックネットの土台にはその時にが書き込んだ「めざせ プロ」というメッセージが残っています。
何かを探しにここに来たはずの伸郎は何も見つからなかったために、車内へ戻り朝日が昇り始めた道を東京へと急ぐのでした。
あの日にドライブ を読んだ読書感想
「人生は一本道じゃない。
曲がり角ばかりの迷路だ。」
という、 牧村伸郎がつぶやくセリフには哀愁がたっぷりです。
中学生の頃には野球を辞めて進学校、就職活動では出版社ではなく銀行、 結婚相手は大学時代の彼女ではなく営業先の社員。
極力冒険をせずに堅実な道のりを歩んでいく、 主人公の生き方をまさに体現しています。
そんな伸郎が偶然にも学生時代の思い出の地・白金を訪れることによって、失いかけていたかつての情熱を取り戻していく姿が感動的です。
タクシー運転手であれ銀行マンであれ、自分の仕事に対して誇りを持つことを考えさせられました。
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