【ネタバレ有り】真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:本多孝好 2007年6月に新潮社から出版
真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉の主要登場人物
僕(ぼく)
物語の語り手。 広告代理店を退職した後に飲食店のプロデュース業を始める。
かすみ(かすみ)
僕の元恋人。 1年半前に列車事故で死亡。
ゆかり(ゆかり)
かすみの双子の妹。
尾崎(おざき)
ゆかりの夫。
野毛(のげ)
僕の雇い主。 IT起業家。
真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 の簡単なあらすじ
8年前に交通事故によって秋月水穂との死別を経験した「僕」の、次の恋人は双子の妹を持つかすみという女性です。そんなかすみとの幸せな日々も長くは続くことなく、1年半前に起きた海外での列車事故によって終わりを迎えます。たった独りで残された僕は全てを忘れて生きようとしますが、ある疑惑に捉われ始めていくのでした。
真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 の起承転結
【起】真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 のあらすじ①
学生時代に秋月瑞穂とお付き合いをしていた僕でしたが、彼女には他人の時計を勝手に5分だけ遅らせる不思議な習慣がありました。
ある日突然に瑞穂は交通事故に遭ってこの世を去りますが、それ以降も僕の部屋にある時計は5分間遅れています。
大学を卒業した僕は広告代理店に勤め始めて、かすみという新しい恋人もできました。
かすみは一卵性双生児の姉で、妹のゆかりと外見的にそっくりでまるで見分けがつきません。
ゆかりが尾崎という弁護士の男性と結婚すると、姉妹はふたりだけでスペインへ旅行に行きました。
日本にいた僕が夜遅くにテレビを見ていると、スペインで起こった電車の脱線事故が報じられます。
死んだのはかすみで、ゆかりの方は大怪我を負いながらも何とか無事です。
再び独りぼっちになった僕は、これまでの勤め先を辞めて転職をしました。
かすみのことを思い出すのがつらくてゆかりとも1年以上に渡って連絡を絶っていたところ、尾崎から呼び出されます。
【承】真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 のあらすじ②
居酒屋でふたりっきりで再会した尾崎は、僕に自分が今一緒にいる女性がゆかりなのかかすみなのか分からないと告白しました。
尾崎に頼まれてふたりが暮らしているマンションを訪ねた僕は、28歳を迎えた彼女の誕生日を祝います。
帰りがけに確かにゆかりだと伝えて尾崎を納得させますが、僕も心の奥底からは断言できません。
それからしばらくは新しい仕事に没頭して、姉妹のことを忘れることにしました。
今の雇い主はITビジネスで成功した野毛という名前の社長で、僕は彼の下で客入りの悪い飲食店を生まれ変わらせる仕事をしています。 これまで手掛けた4つの店は順調に売り上げがアップしていて、5軒は渋谷駅の外れにあるバーです。
オーナーと彼の妻・マキコとバーテンの3人で40年近く切り盛りしてきた小さなお店でしたが、近頃ではほとんど利益が出ていません。
さらにマキコがガンにかかって働くことができずに、治療費もかかるために店の立て直しを依頼してきました。
【転】真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 のあらすじ③
店にお客を呼び込むために、僕はオーナーにデザイナーを紹介して内装に大きく手を入れました。
手の込んだ料理を提供してオリジナルカクテルも幾つかメニューに加えるためにかなりの準備金が必要でしたが、野毛の本業が順調なために資金の心配はありません。
ただひとつオーナーが心配しているのは、40年来の付き合いになるバーテンのことです。
引き続き彼を雇うことをオーナーからお願いされましたが、僕は店の黒字のためにも彼の代わりにアルバイト店員を入れることをアドバイスします。
3人でこの店を始めた時に、オーナーとバーテンは同時にマキコを好きになってしまいました。
その時は先にオーナーが彼女に結婚を申し込んだために、バーテンは潔く身を引きます。
40年後に迎えた店とマキコの危機に対しても、バーテンが選んだのは自分が辞職することです。
この仕事に次第に疑問を抱き始めた僕は、バーが無事にリニューアルしたのを見届けてから野毛に辞表を提出することを決めます。
【結】真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 のあらすじ④
打ち合わせを終えた後に駅に向かっていると、携帯電話にゆかりからの着信がありました。
彼女の声にただならぬ気配を感じた僕は、予定とは反対方向の電車に乗り込んでゆかりのマンションに向かいます。
部屋にはかすみの遺品を身に付けたゆかりが居るだけで、尾崎の姿はありません。
妻がゆかりであることを信じられない尾崎は、この家を出ていってしまったようです。
最近では自分が誰なのか分からなくなってきたという彼女は、全てを僕に委ねることにしまました。
僕がゆかりと言えばゆかりとして生きる、かすみと言えばかすみとして生きる。
彼女をかすみとして生き返らせてもう一度やり直すこともできますが、僕は「ゆかりさん」と呼び掛けて部屋を後にします。
自宅に帰って目覚まし時計をみると午後11時55分と表示されていましたので、実際の時刻はちょうど午前0時のはずです。
1日の288分の1に当たる5分だけ、僕は死者を思うことにします。
残りの288分の287を、今を生きる人たちのために使うことを決意するのでした。
真夜中の五分前—five minutes to tomorrow〈side‐B〉 を読んだ読書感想
パートナーを2回も悲惨なアクシデントによって奪われながらも、全てを受け流すように生きていく主人公の姿が印象深かったです。
生き延びた双子の片割れに、今は亡き愛する人の面影を重ねてしまうシーンも幻想的でした。
ビジネスの場面では傾きかけた飲食店を次々と立て直しながらも、プライベートでは昔の恋人に未練がましい一面も垣間見ることができます。
迷い続けていた主人公が、ラストで踏み出した小さな一方が微笑ましかったです。
本作品だけでも1つの物語として成立していますが、前作「真夜中の五分前 side-A」を読むとより一層感動が増すでしょう。
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