【ネタバレ有り】雀蜂 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:貴志祐介 2013年10月に角川書店から出版
雀蜂の主要登場人物
安斎智哉(あんざいともや)
主人公。ミステリー作家。
安斎夢子(あんざいゆめこ)
智哉の妻。童話作家。
三沢雅弘(みさわまさひろ)
夢子の高校生の頃の同級生。大学の助教授。
武松(たけまつ)
智哉の担当編集者。
安斉実(あんざいみのる)
無職。小説家志望。
雀蜂 の簡単なあらすじ
小説家の安斎智哉が妻の夢子とふたりで山荘にいると、スズメバチに襲われます。いつの間にか居なくなっていた夢子は、浮気相手と協力して夫を事故死に見せかけて殺害するつもりのようです。通信手段も絶たれて過去に蜂に刺されたことによってアレルギーも抱えている安斎は、絶体絶命の窮地へと立たされることになるのでした。
雀蜂 の起承転結
【起】雀蜂 のあらすじ①
安斎智哉はハードボイルドなタッチが持ち味の小説家で、妻の夢子も絵本作家としてそこそこ名の知れた存在です。
ふたりはお互いの新作出版を祝って、八ヶ岳にある山荘に滞在していました。
ワインを飲んでいた安斎は猛烈な眠気を感じて意識が無くなり、気が付くと夢子の姿はありません。
寝室には体長2〜3センチ程度のスズメバチが飛んでいて、安斎に襲いかかってきます。
安斎は3年前にスズメバチに刺されていて、2度目に刺されると命にかかわるほどのアレルギー反応を起こすと医師からは警告を受けていました。
ライターを使って撃退しましたが、山荘内には無数の蜂が飛び交っています。
助けを呼ぼうにも電話線とパソコンのケーブルが持ち去られていて、このエリアは携帯電話も圏外なために使用できません。
夢子によって罠にかけられたことに気が付いた安斎が思い出したのは、3年前に大手出版社が主催した新人文学賞の受賞記念パーティーで会った三沢雅弘の顔です。
【承】雀蜂 のあらすじ②
三沢は新世紀大学で昆虫の習性や季節順応について研究をしている助教授で、夢子の高校時代のクラスメートでもあります。
最近では新種の蜂に関する飼育と実験にかかりきりだという三沢であれば、自家製の薬品によってスズメバチの攻撃性を増幅することも可能でしょう。
安斎が妻と三沢の浮気を疑い始めてた時、オートバイのエンジン音を聞きました。
別件で長野まで取材に行っているはずの編集者の武松が、連絡が取れなくなったことを心配して雪道でも走ることができるオフロードバイクで駆けつけてくれたようです。
地下室への扉が半開きになっていることを不振に思った武松は、ドアを開けて地下へ降りようとしました。
そこには前もって三沢が仕掛けておいた蜂の巣があったために、武松は逃げ場のない地下室で大群に襲われて亡くなってしまいます。
バイクのキーは武松が身に付けていて、遺体の周りは興奮状態のスズメバチが待ち構えているために取りに行くことはできません。
【転】雀蜂 のあらすじ③
スズメバチを武松と一緒に地下室に閉じ込めた安斎は、酒でも飲まないとやってられないために広間のキャビネットに残っていたウイスキーをストレートであおりました。
今度の事件が片付いて生還を果たした暁には、この経験を元にしてベストセラー作品を発表することを考えています。
ソファーの上にあるクッションに左手を載せた瞬間、安斎が感じたのはチクリとした痛みです。
クッションの陰には小さなスズメバチの死骸が隠れていて、手のひらには直径1ミリほどの血球が盛り上がっていました。
傷口を揉んで蜂の毒液を押し出したり、ウイスキーをかけて消毒をしてみますが余り効果はありません。
間もなくアナフィラキシー反応が始まり、息苦しさも増していきます。
残された手段は、自らの喉を切り裂いて気道を確保することだけです。
早めに病院に搬送された場合は助かりますが、発見が遅れれば命はありません。
ワインオープナーを喉元に当てた安斎は、イチかバチかの賭けに出ます。
【結】雀蜂 のあらすじ④
山荘に駆け付けた警察は、喉から血を流して亡くなっている死体を発見しました。
名前は安斉実という70代の男性で、名字こそ同じながらも安斎智哉とは何の関係もありません。
職を転々としていた安斉実が小説誌の新人賞候補になったのは、今から10年前のことです。
その後は執筆活動に明け暮れながらも落選し続けていた時に、人気作家・安斎智哉の存在を知ります。
安斎智哉の全作品を読破した安斉実は、何時しか彼を自分の分身(ダブル)だと思い込むようになりました。
ストーカー行為を繰り返し安斎智哉の別荘の場所まで調べ上げ、安斎智哉の人生を奪うために殺人を決行します。
遺体を雪の中に埋めて安斎智哉として生きることを決意した安斉実でしたが、夢子がスズメバチを利用してして夫を殺害しようとしていたことまでは知りません。
現場検証中の刑事が安斉実をストーカー事件の加害者として扱うか人違いで殺された被害者として扱うか悩んでいると、1匹のスズメバチが夜の闇へと飛び去っていくのでした。
雀蜂 を読んだ読書感想
前半は雪に閉ざされて逃げ場のない空間を舞台にした、サバイバル物としての面白さに引き込まれていきました。
蜂アレルギーの小説家・安斎智哉に迫りくる、獰猛なスズメバチの脅威が手に汗握ります。
姿こそ見せないものの夫を亡き者にしようと目論む妻・夢子と、昆虫のプロフェッショナルの三沢によって張り巡らされた数々のトラップもスリリングです。
自らが思い描いた理想とのギャップに苦しむ、安斉実の突然の登場には驚かされます。
他の誰かの人生を奪うつもりの安斎実が、他人の身代わりとして殺されてしまうクライマックスが皮肉な味わいでした。
コメント