「イミテーション・ゴールド」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|林真理子

「イミテーション・ゴールド」

【ネタバレ有り】イミテーション・ゴールド のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:林真理子 1989年10月に祥伝社から出版

イミテーション・ゴールドの主要登場人物

香取福美(かとりふくみ)
ヒロイン。 短大卒業後にブティックで働く。

邦彦(くにひこ)
福美の恋人。アマチュアのレーサーで昼間は修理工場勤務。

榊原数子(さかきばらかずこ)
飲食チェーン店オーナーの娘。 元レーサー。

石川正男(いしかわまさお)
数子の元夫。 会社社長。

西山洋子(にしやまようこ)
喫茶店のアルバイト店員。 女優志望。

イミテーション・ゴールド の簡単なあらすじ

香取福美はレーサーとしての成功を夢見る邦彦のために、1000万円もの大金を集める方法を考えています。株のデイトレードに手を出して金儲けに入れ込んでいく彼女が、一線を越えてしまうのにそれほど時間はかかりません。マネーゲームに熱中する恋人の姿を目の当たりにしているうちに、邦彦も徐々に心変わりをしていくのでした。

イミテーション・ゴールド の起承転結

【起】イミテーション・ゴールド のあらすじ①

遥かに遠いプロレーサーと1000万

香取福美がお付き合いをしている邦彦が、フレッシュマンレースで4位に入賞したのは4年前です。

その後は鳴かず飛ばずで20位前後の順位をウロウロとしていて、スポンサーが付く気配も一向に見えてきません。

高性能エンジンとタイヤを手に入れて自分のレーシングカーをチューンアップすることがプロレーサーへの近道でしたが、1000万円はかかります。

彼の夢を叶えるために経済的に援助してあげたい福美も一介のブティック店員なため手取り額は18万、年収にして300万程度にしかなりません。

ある時に福美は短大時代の同級生である礼子から、表参道にあるワンショット・バーへ誘われました。

新宿のリース会社に勤務しているという彼女は嫌に羽振りが良さそうで、会社の上司でもありプライベートでもパトロンである妻子持ちの男性から株の個人売買に関する手ほどきを受けているそうです。

俄かに興味を示した福美は礼子に頼み込んで、その上司を紹介してもらいます。

【承】イミテーション・ゴールド のあらすじ②

恋も株価も乱高下

礼子が引き合わせてくれた北川は30代後半のごく普通の男性でしたが、身につけているスーツが高級品であることは商売柄直ぐに分かりました。

北川から勧められた「M塗料」という聞いたこともない企業の株に福美はこの4年間で貯めた70万円を全額投入します。

福美が1株624円で購入したM塗料の株価が、1064円にまで値上がりしたのは6日後のことです。

礼子は1000株購入しているために、税金や証券会社への手数料を差し引いた後でも44万円ほどの儲けになるでしょう。

普段は目を通すことがない夕刊の株式欄を見て躍り上がっていた福美のもとに、北川から電話がかかってきました。

情報量の見返りを求めてきた北川に対して、福美は邦彦への罪悪感を覚えながらも自らの身体を差し出してしまいます。

その後しばらくは北川との連絡が取れなくなる中で、M塗料の株価はみるみるうちに下落してしまいました。

慌てて持ち株の全てを売却しましたが、3万円ほどの利益にしかなりません。

【転】イミテーション・ゴールド のあらすじ③

自らの体を1000万円に換金

1ヶ月くらい前から邦彦のレースを見に来ている榊原数子は、レース関係者の間ではカーマニアとして有名でした。

父親は都内に居酒屋や串カツ店を幾つもチェーン展開する経営者で、彼女自身も若い頃にはレーサーとして活躍したほどです。

邦彦のスポンサーには打って付けだと睨んだ福美は、数子と親しくなることで更なる金づるへと着きます。 同族経営の会社で名ばかりの社長を任されている石川正男は、 数子と離婚した後は孤独で退屈な毎日です。

邦彦が有望なレーサーであること、エンジンさえ良いものを積めば上位入賞も間違いないこと、レースで優勝すれば何10億円となって返ってくること。

福美の話に興味を示した石川は、1000万円の小切手を切る代わりに福美自身が担保になることを要求しました。

石川の会社は仕事柄海外の客が多いため、彼らにコールガールを宛がうこともあります。

借用書にサインをして小切手を手にした福美を自宅まで訪ねてきたのは、 青ざめた表情の邦彦です。

【結】イミテーション・ゴールド のあらすじ④

お金を取るか愛を取るか

自分には好きな女性がいる、 出会いの場所は駅前の喫茶店、彼女はそこでアルバイトをしながら女優を目指している西山洋子。

邦彦からの突然の告白にも、福美は慌てふためくことはありません。

洋子の勤め先にお客として乗り込んだ福美は、彼女の勤務時間が終わると同時に隣のビルにあるコーヒールームまで呼び出しました。

小さな劇団の主宰をしているという洋子の話を聞いて、福美は小切手の15パーセントに当たる150万円を手切れ金として渡そうとしますが彼女は受けとりません。

1番欲しいものはお金ではないと切り返した洋子は、軽蔑と哀しみが入り交じった眼差しを向けてその場を立ち去るだけです。

洋子から全てを打ち明けられた邦彦は、ここ半年で何かにとり憑かれたように変わり果てた福美に別れを告げます。

愛する人を失って1000万円の小切手だけが手元に残った福美は、外国からのお客さんを接待すれば大金が貰えるという石川の話を詳しく聞きに行くのでした。

イミテーション・ゴールド を読んだ読書感想

年若い男女を主人公にしたラブストーリーでありながら、月々の出費から貯金残高までが事細かに綴られていくところがユニークでした。

ブティック店に勤めながらもお洒落に興味を示すことなく、貯金に明け暮れるヒロインの香取福美を健気に感じてしまいます。

ゴルフクラブの会員権相場から化粧品のねずみ講販売まで、バブル経済初期に出回っている怪しげな儲け話が懐かしかったです。

お金の欲望に振り回されていく人間の愚かさは、いつの時代も同じなのかもしれません。

1000万もの大金を手にしながらも、恋人・邦彦の愛を失ってしまう結末が痛切です。

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