「インストール」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|綿矢りさ

「インストール」

【ネタバレ有り】インストール のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:綿矢りさ 2001年11月に河出書房新社から出版

インストールの主要登場人物

野田朝子(のだあさこ)
ヒロイン。女子高校生。17歳になった現在は不登校。

青木かずよし(あおきかずよし)
朝子と同じマンションに住む小学生。

青木かより(あおきかより)
かずよしの母。下着メーカー「ソナチネ」の販売員。

雅(みやび)
チャットレディーと風俗店勤務を続ける子持ちの主婦。

インストール の簡単なあらすじ

ある日突然に学校に行くことを辞めた高校生の野田朝子は、部屋の中にある自分の持ち物を全てゴミステーションに捨ててしまいます。彼女が捨てたコンピューターを拾って直したのは、同じマンションで暮らす小学生の青木かずよしです。かずよしから怪しげなアルバイトを紹介された朝子は、パソコンの向こうにある大人の世界を垣間見るのでした。

インストール の起承転結

【起】インストール のあらすじ①

登校拒否女子高校生に下着をお裾分け

受験勉強からドロップアウトすることを決意した野田朝子は、部屋の中にある全ての家具と小物を入居者専用のゴミステーションにまで運び出しました。

今は亡き祖父から貰ったコンピューターを捨てようとしていた朝子に、声をかけてきたのは自転車を携えた小学生くらいかと思われる男の子です。

同じマンションに住んでいるというその少年は、自転車の籠にコンピューターを入れたままエレベーターの中へと消えていきます。

彼と再会したのは5日後のことで、いつものように朝子は屋上で時間を潰した後に、さも学校から帰ってきたかのような顔で家に戻ります。

玄関の前で朝子の母と立ち話をしていたのは、8階の812号室の住人・青木かよりです。

デパートのランジェリーコーナーで働いているという彼女は、若い女性用下着を「お裾分け」にきました。

大胆なデザインのショーツに戸惑いながらも、下着のお返しとしてかよりの息子に図書券を持っていくことになります。

【承】インストール のあらすじ②

小学生の危ないバイト

青木家のインターフォンを押して出てきたのは、先日ゴミ捨て場で会ったかずよしでした。

かよりが仕事に行って留守なので、かずよしが自力で直したというコンピューターを見せてもらうことにします。

押し入れの中に収納してコンセントをテープ貼りしている旧型パソコンのことを、かずよしは母親には打ち明けていません。

やたらと起動音が大きいのは、インストールし直して初期設定に戻ったためでしょう。

学校に行っていないために平日の昼間の時間があり余っている朝子に、かずよしが提案したのはチャットを使って男の人と会話をするアルバイトです。

かずよしは昨年の春くらいから、主婦でありながら売春をしている雅という名前の女性とメールをやり取りしていました。

子育てと夜のお仕事で忙しい雅に代わって、かずよしが時給1500円でチャット嬢として活躍中です。

電話回線の向こうに自分の知らない世界があることを知った朝子は、早速翌日からかずよしを手伝うことにします。

【転】インストール のあらすじ③

ネット上では26歳になる17歳

かずよしからコンピューターとチャットの基本的な操作方法を教えてもらった後に、朝子は812号室の合い鍵を受け取りました。

かずよしが小学校に通っている午前10時から午後2時まで、朝子は「みやび」のハンドルネームを使って26歳の人妻を演じていきます。

会社で仕事をサボりながらアクセスしてくるサラリーマン、受験勉強そっちのけでチャットルームを訪れる浪人生、高速道路にでる前のつかの間の息抜きに利用するトラック運転手。

最初は興醒めな返事をしてお客さんを怒らせてしまうこともありましたが、不特定多数の相手をこなしているうちに朝子はすっかり売れっ子です。

朝子と入れ替わりに午後3時から「みやび」となるかずよしは、毎日たくさんの人たちと流れるようにディスプレイ上の会話をすることによって無感覚になっていました。

ふたりだけの秘密のアルバイトも、朝子が青木家の鍵穴に合い鍵を差し込んでいる現場をかよりに目撃されてしまうことによって終わりを迎えます。

【結】インストール のあらすじ④

明日から私自身をインストール

かよりの夫もかずよしも、炭酸飲料を飲むことが出来ません。

最近になってやたらとコーラの空き缶が落ちているいことを疑問に思い、今日は会社を休んで廊下の隅に隠れていました。

観念して部屋の鍵を返却しようとした朝子が聞かされたのは、かよりとかずよしとの意外な関係です。

かずよしの本当の母親は彼が赤ちゃんの頃に亡くなっていること、かよりは去年の冬に後妻として迎えられたばかりであること。

血の繋がりのない息子といまいち打ち解けることが出来なかったかよりと比べると、朝子と一緒にいる時だけは実に生き生きとしています。

「かずよしが楽しいならそれで良い」とだけ言うと、かよりは朝子が差し出した合い鍵を受け取ることなくその場を立ち去っていきました。

部屋の中に入ると、かずよしは雅から受け取ったバイト代30万円を数えるのに夢中です。

その半分の15万円を受け取った朝子は、明日から学校に行って勉強するためにオンラインショップで机を探すのでした。

インストール を読んだ読書感想

ある日突然に受験勉強も祖父から貰ったパソコンも投げ出してしまう、ヒロインの野田朝子の突拍子もない行動には驚かされました。

小学生ながらも大人びた言動と落ち着いた雰囲気を漂わせている、青木かずよしのキャラクターにも魅了されます。

世の中の流れから弾き出されたかのようなふたりが、チャットの世界の中では別の人格に成りきって自由気ままに振る舞う姿が印象深かったです。

データを消去して新しいソフトをインストールするだけで生まれ変わるパソコンとは違って、人間の心だけはそう簡単に書き換えることが出来ないことを考えさせられました。

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