【ネタバレ有り】V.T.R. のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:辻村深月 2013年2月に講談社から出版
V.T.R.の主要登場人物
T(てぃー)
主人公。5人の彼女から食べさてもらうヒモ。
アール(あーる)
Tの元彼女。一匹狼のマーダー。
テッド(てっど)
情報屋。
J(じぇい)
Tの友人。銃器職人。
キャディランド=サウザ(きゃでらんど=さうざ)
最強のマーダー「トランス=ハイ」の組織の一員。
V.T.R. の簡単なあらすじ
仕事をしなくなって随分とたったTに電話をかけてきたのは、以前にお付き合いをしていたアールです。国家から殺人を許可された「マーダー」として危険な任務に就いている彼女は、謎めいた言葉を残したまま消え失せてしまいます。アールの行方を追っているうちに、Tはかつて愛した女性の意外な一面を知ることになるのでした。
V.T.R. の起承転結
【起】V.T.R. のあらすじ①
3年前に別れて以来音信不通だったアールから、怠惰な生活を送っていたTのもとに連絡がありました。「アタシは変わっていない」という意味深な言葉だけを残して、電話は一方的に切れてしまいます。アールは国内で1000人だけに許された殺人ライセンスを持つ、闇世界の仕事人「マーダー」です。アールの身に何か災難が降りかかったことを察知したTは、彼女に関する情報を手に入れるために繁華街で情報屋を営むテッドを訪ねます。
テッドから打ち明けられたのは、凡そ信じることが出来ない話ばかりでした。
アールが家出や非行を繰り返して行き場のない女の子たちを束ねて売春組織を運営していること、顧客には政府のお偉いさんまでいて相当荒稼ぎをしていること。
更には「トランス=ハイ」と恐れらている正体不明のマーダーに戦いを挑み、彼の部下たちをターゲットにして次々と暗殺しているようです。アールには関わらない方がいいと忠告するテッドでしたが、Tは聞き入れることは諦めきれません。
【承】V.T.R. のあらすじ②
Tは自宅から峠をふたつ隔てた奥深い山の中にある、「エデン」と名付けられた政府公認のロボットゴミ捨て場へとたどり着きます。
アールとお付き合いをしていた頃には2週間に1度は必ずここへ足を運んでいましたが、彼女と別れた後は1度も訪れていません。エデンに打ち捨てられたロボットたちと遊ぶことがアールは大好きで、その中でも特にお気に入りの1台がペロッチでした。ペロッチにはつい最近まで油を差してやったり軽い故障を接着剤やテープで補強してあげた跡があり、アールは今でもこの場に来てはお世話をしているようです。Tはペロッチにアールの居場所を尋ねますが、内部のメモリー機能に障害を起こしかけているために問いかけに応じることはありません。
ペロッチをエデンから連れ出して親友のJの工房に持ち込み、頭の中に記録されている映像を取り出してもらいます。職人として優秀なJの修復作業によって、次の日にはペロッチのメモリーがTの家に届けられました。
【転】V.T.R. のあらすじ③
ペロッチは旧式タイプのロボットのため機体にはVTR機能が搭載されていて、メモリーを見るには専用のマシンで再生しなければなりません。Jから貸してもらったマシンでペロッチの記憶を読み取ってみると、テレビにはアールの顔が映し出されました。
スクリーンの向こうからアールはTの名前を呼び掛けて、「愛してる」とだけ笑顔で告げます。アールの遺体が海から上がったのは、Tが彼女の残したメッセージを受け取った次の日のことです。
死体と共に1丁の拳銃が発見されて、銃身には「トランス=ハイ」の刻印がありました。しばらく鳴りをひそめていたトランス=ハイによる復帰第1弾の犯行として世間を騒がし、初めて自らのポリシーを破って女性を殺害したことでも話題になります。Tがアールの死を知ってに電話をかけた相手はJで、要件は3日以内に特注のリボルバーを制作することです。Tがこれからやろうとしていることをお見通しのJは、「人殺しに、美学はないよ」とポツリと言います。
【結】V.T.R. のあらすじ④
Tの両親も祖父母も腕利きのマーダーでしたが、20数年前に敵対勢力の爆弾によって4人まとめて吹き飛ばされてしまい既にこの世にはいません。
たまたま幼稚園に行っていたために助かったTは、やがてライセンスを取得してマーダーとなりました。
何時しか「トランス=ハイ」と呼ばれるほどになったTでしたが、殺人への強い衝動だけは抑えることが出来ません。
キャディランド=サウザという凶悪なマーダーから破格の条件を提示されたために、彼の組織に「トランス=ハイ」の名前を売り飛ばして早々と引退します。アールはキャディランド=サウザを抹殺することによって全てを終わらせようとしていたようでしたが、トランス=ハイの名前だけを借りたファミリーの残党に殺されてしまった次第です。ペロッチのVTRの中で微笑んでいたアールを思い出したTは、彼女の記憶を胸に抱いて旅立ちます。
Tはアールの敵討ちに執念を燃やすと共に、再びトランス=ハイとして銃を握ることを決意するのでした。
V.T.R. を読んだ読書感想
異性との関係性にだらしがなく、多くの女性たちから経済的な援助を受けるTの不甲斐なさが笑いを誘います。
ある日突然にかかってきた電話によって、失踪した美女の行方を追うハードボイルドな主人公へと早変わりするシーンが勇ましかったです。
次第に明かされていくTの過去と、アールに待ち受けている壮絶な運命に引き込まれていきました。
旧式ロボットたちが次々と棄てられていく、エデンと名付けられたスクラップ置き場が哀愁たっぷりです。
レトロで何処か人間くさいロボット・ペロッチの中に残されていたメッセージを受け取ったTが、アールの遺志を受け継いで立ち上がるシーンが感動的です。
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