【ネタバレ有り】夜のピクニック のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 2004年7月に新潮社から出版
夜のピクニックの主要登場人物
甲田貴子(こうだたかこ)
ヒロイン。国立文系クラスの3年7組。
西脇融(にしわきとおる)
貴子のクラスメート。異母きょうだい。
戸田忍(とだしのぶ)
融の友人。水泳部所属。
遊佐美和子(ゆさみわこ)
貴子の友人。国立理系クラス。
榊杏奈(さかきあんな)
貴子の2年生までのクラスメート。ニューヨーク在住。
夜のピクニック の簡単なあらすじ
北高の3年生にとっての高校時代最後の一大イベントは、夜を徹して80キロの道のりを踏破する「鍛錬歩行祭」です。甲田貴子は同じクラスの西脇融のことが気になっていましたが、とある事情により彼とは1度も会話をしたことがありません。歩行祭を通してお互いのわだかまりを解くために、貴子はひとつの賭けに打って出るのでした。
夜のピクニック の起承転結
【起】夜のピクニック のあらすじ①
北高鍛錬歩行祭は朝の8時から翌朝の8時まで80キロを歩き通す校内行事で、3年生にとっては高校生活を締めくくる一大イベントでもあります。
前半はそれぞれのクラス毎に二列縦隊を組んで歩く団体歩行、後半は仲の良い者同士で語らいながら歩く自由歩行。
西脇融は硬式テニス部に所属しながらも、水泳部の戸田忍と一緒に自由歩行に参加することを決めていました。融にとって気掛かりになっているのは、膝の怪我が未だに完治していないことです。更には3年生になって同じクラスになった、甲田貴子の存在もありました。融の父親が浮気をして出来た子供が貴子であり、彼女はシングルマザーに育てられています。融と貴子が異母きょうだいであることは、担任の教師でも知らない事実です。クラスメートでありながら、ふたりはこれまでに1度も言葉を交わしたことがありません。貴子は今回の歩行祭が終わるまでの間に、融に話しかけることが出来るか自分の中だけで賭けをしていました。
【承】夜のピクニック のあらすじ②
夜中の12時を回って仮眠所にたどり着くまであと2時間ほどになった頃、融は18歳の誕生日を迎えました。
一緒に歩いていた忍や何人かの女子生徒も集まって、自動販売機で購入したコーヒーで細やかなバースデーパーティーを開いてくれます。
気が付くと貴子は皆に混じって融と缶コーヒーで乾杯をしていて、思わずポロリと呟いた言葉は「誕生日、おめでとう」です。
融は4月以来同じ教室に居る彼女のことを徹底的に無視をして、時には敵意に満ち溢れた眼差しで睨んでいました。
初めて視線を逸らすことなく貴子と向き合った融は、いつの間にか「ありがとう」と静かな声で答えています。
この団体歩行の間に課した「賭け」は貴子の勝ちとなりましたが、次のやるべきことに取り組まなければなりません。
午前2時には坂の上の学校に設置された仮眠所に到着して、団体歩行は無事に終わります。
2時間程度つかの間の休息を取った後には、いよいよゴール地点を目指して自由歩行です。
【転】夜のピクニック のあらすじ③
貴子は2年生まで同じクラスで今現在でも1番の親友である遊佐美和子と、融は約束通りに忍とそれぞれ自由歩行をスタートしました。
「自由」と言っても時間制限はキッチリと設定されているために、最初のうちはある程度ペースを上げておいて距離を稼いでおかなければ間に合いません。
融は負傷していた膝を庇っているうちに、足首を捻挫してしまいます。たまたま側を通りかかった貴子と美和子が思い付いたのは、融の荷物を3人で分担して負担を軽減する作成です。
美和子は水筒を、貴子は弁当箱を、忍はパーカーを。
自然と男女4人のメンバーとなり、明るい陽射しが射し込み始めた中を談笑しながら歩いていました。
遠くの方から貴子の名前を呼び掛けているのは、野球帽を被った少年です。
明らかに北高の生徒ではありませんでしたが、その顔には何処か見覚えがあります。
貴子が思い出したのは、2年生まで同じクラスで現在はアメリカで大学入学資格試験の準備をしている榊杏奈のことです。
【結】夜のピクニック のあらすじ④
貴子は歩行祭の前に、杏奈からハガキを受け取っていました。皆と一緒に歩行祭に参加したかったこと、無事にゴールできるように海の向こうから祈っていること、貴子の悩みが解決するようにおまじないを掛けておいたこと。
手紙の最後にある「おまじない」という一節が、貴子は気になって仕方ありません。
少年の正体は予想通り杏奈の弟・順弥で歩行祭を見学するためだけに来日したようですが、彼の何気ない一言で貴子と融の血縁関係が忍にばれてしまいます。
美和子はアメリカに転校する前の杏奈と一緒に、貴子の母から秘密を打ち明けられていました。歩行祭を通して貴子と融が和解することこそが、杏奈の掛けた「おまじない」です。美和子たちは気を利かせて融とふたりにしてくれたため、貴子は賭けに勝った後の次の予定を実行します。
歩行祭が終わった後に自分の家に遊びに来て母に会って欲しい。貴子の願いを受け止めた融は、ゴールへの残り僅かな道を踏みしめていくのでした。
夜のピクニック を読んだ読書感想
24時間かけて80キロメートルの道のりを踏破する、高校生たちの姿が勇ましかったです。
母親違いの兄・西脇融への複雑な想いを抱えたまま、黙々と歩き続けていく甲田貴子も魅力的なヒロインでした。
海沿いの国道から田んぼのあぜ道まで、豊かな自然に囲まれた風景が高校生活の思い出を彩るアルバムのようで美しさ溢れています。
親同士の身勝手な恋愛が、何の罪もないはずの息子と娘に降りかかってしまう世の中の不条理さについても考えさせられました。
血の繋がりや世間体に捉われることなく、お互いを受け入れていく融と貴子の決意が感動的です。
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