【ネタバレ有り】MAZE(めいず) のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:恩田陸 2001年2月に双葉社から出版
MAZE(めいず)の主要登場人物
神原恵弥(かんばらめぐみ)
主人公。医大の研究室を卒業した後にアメリカ資本の製薬会社へ就職する。
時枝満(ときえだみつる)
恵弥の中学校時代の同級生。フリーター。
スコット(すこっと)
アメリカ陸軍に所属する軍人。
セリム(せりむ)
政府高官の子息。
MAZE(めいず) の簡単なあらすじ
中近東の小さな国に、ふたりの日本人とアメリカ軍兵士がやって来てきます。現地の案内人をひとり加えて4人となった彼らの目的は、平原に聳える白い矩形の遺跡に纏わる秘密を解き明かすことでした。「豆腐」と名付けられたこの建物には、1度迷い込むと外には脱出できないという曰くつきです。7日間のタイムリミットが迫る中で、遂にはメンバーのうちのひとりが消え失せてしまうのでした。
MAZE(めいず) の起承転結
【起】MAZE(めいず) のあらすじ①
その建造物は白い長方形で、イラクとの国境沿いの乾燥した平原の真ん中に立っていました。
特徴的な形や色から建物は「豆腐」と呼ばれていますが、いつの時代に如何なる民族によって造られたのかは未だに判明していません。
豆腐が地元の人たちに発見されてから数100年は経っていると推測されますが、これまでに数多くの探検隊や軍隊が中に入って300人以上が失踪したと言われています。
今回この遺跡の調査に挑むのは、国籍も年齢もバラバラな4人の男たちです。
神原恵弥はアメリカの製薬会社に勤務する日本人で、同じ中学校出身の時枝満を今回のパートナーにスカウトしました。
満は恵弥から残るふたりを紹介されて、アメリカ陸軍に所属する白人男性はスコットと名乗ります。
セリムという現地人は名家の生まれになり、父親はこの国の現職の法務大臣です。
アメリカ政府は莫大な金を払って豆腐を自分の国に移築することを決めているために、あと7日間で人間消失の謎を解かなければなりません。
【承】MAZE(めいず) のあらすじ②
米軍のヘリコプターによって着々と豆腐の撤去作業が進んでいる中、4人はキャンピングカーの中に集まって思い思いの推理を披露していました。
かつては自身の祖父が豆腐に入って生還したというセリムは、内部は神の御心によって姿を変えるMAZE(迷路)だと主張します。
3人兄弟のうちに長男だけが帰って来れなかったという話を聞いた満が閃いたのは、体重が一定以上の人間のみが選別されて消されるという説です。
犬が豆腐の外壁を舐めているのを目撃した恵弥は、建物の材質にカルシムとミネラルが含まれていることに気が付きました。
白色でカルシウムとミネラルが豊富な物質と言えば、スコットにはたったひとつしか思い付きません。
それは動物の骨であり、豆腐は自らの中に入った人間たちを吸収して骨を壁に変えていることになります。
スコットの突拍子もない自説に違和感を抱いたセリムは、他の3人には黙ったまま立ち入り禁止となっている豆腐の内部への潜入を敢行しました。
【転】MAZE(めいず) のあらすじ③
セリムが居なくなったのは4日目の嵐の夜で、捜索を開始するには朝まで待たなければなりません。
いつもは4人の食事を作るのは優秀な料理人である満の役割になっていましたが、この夜は珍しくスコットが恵弥と満にご馳走してくれました。
食後のコーヒーを飲んだふたりは、たちまち眠り込んでしまいます。
中には強力な睡眠薬が混入されていたようで、目覚めたのは5日目ではなく6日目の朝でスコットの姿もありません。
仲間ふたりが行方不明になり明日の朝には迎えが来るというのに、恵弥はやけに落ち着いた様子です。
セリムとスコットは豆腐に入ったまま消えてしまったと主張する恵弥でしたが、満は真相を見破ります。
豆腐の地下にはアメリカの情報機関がイラクを監視するための秘密基地を作っていたこと、これまでに偶然に基地に迷い込んだ現地の人々が軍によって何人も殺害されていたこと。
ゆくゆくはこの国の有力者となるセリムが基地の存在知り、外交問題になるのを恐れたスコットによって豆腐の中で殺されてしまった次第です。
【結】MAZE(めいず) のあらすじ④
最終日の朝になってもスコットはセリムの遺体処理と基地の後片付けに追われているために、恵弥と満の前には姿を現しません。
契約期間が満了になりお役御免となった満は、ここで見聞きしたことを口外しないという約束の代わりにふたつの条件を突き付けました。
ひとつは自分自身の身の安全を保証すること、もうひとつは秘密基地を見せること。
軍の機密情報は既に大部分が回収されているために、満の要求はすんなりと通ります。
豆腐の奥底へとたどり着いた満たちが目の当たりにしたものは、食糧の備蓄された倉庫や地上へと繋がるトンネルです。
ふたりは一瞬だけ過去にこの遺跡に呑み込まれた人たちの幻影を見たような気がしましたが、振り返ることなく地上に戻りました。
東の空が明るくなった頃には帰りの時間となったために、恵弥と満はヘリコプターへと乗り込みます。
再び荒野には静寂が訪れることになり、白いモニュメントのようなあの建物は今でもそこに残されているはずです。
MAZE(めいず) を読んだ読書感想
辺境の地にそびえ立つ白く長方形の謎めいた物体に秘められている、巨大な迷路の謎に引き込まれていきました。
恩田陸の初期の名作として名高い「クレオパトラの夢」でも活躍した、神原恵弥のキャラクターも効果的です。
ハンサムなルックスに鍛え上げられた肉体に似合わない、女言葉を使うギャップも魅力溢れています。
アドベンチャードラマとしてのワクワク感ばかりではなく、中近東諸国への侵攻を続けるアメリカへの批判もさり気なく盛り込まれていて考えさせられました。
いつの時代どこの国でも絶えることのない争いを、静かに見つめる「豆腐」の佇まいが心に残ります。
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