【ネタバレ有り】地下街の雨 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮部みゆき 1994年4月に集英社から出版
地下街の雨の主要登場人物
三浦麻子(みうらあさこ)
ヒロイン。一部上場の企業を26歳で退職した後に喫茶店のウェイトレスになる。
伊東充(いとうみつる)
麻子の元婚約者。
森井曜子(もりいようこ)
社長秘書を辞めて現在無職。
石川淳史(いしかわあつし)
麻子のかつての同僚。現在では父の会社に勤務。
地下街の雨 の簡単なあらすじ
仕事でもプライベートでも勝ち組だった三浦麻子の人生は、婚約者との別れによって一変してしまいます。今では八重洲の地下にある小さなコーヒーショップでアルバイトに明け暮れる毎日で、未来には何の期待も湧いてきません。そんな麻子の止まっていた時間は、ひとりの常連さんとの出会いがきっかけで徐々に動き始めていくのでした。
地下街の雨 の起承転結
【起】地下街の雨 のあらすじ①
三浦麻子は一部上場企業で働きながら、プライベートでは同じ職場の伊東充との交際も順調で幸せいっぱいです。
結婚式を2週間後に控えたある日のこと、突如として充から別れ話を切り出された挙句破談になります。
お互いに弁護士を立てて慰謝料のやり取りをしているうちに、麻子はすっかり疲れ果ててしまいました。
大手の会社を退職した麻子の次の就職先は、八重洲の地下街の中にある小さなコーヒーショップです。
月曜日の午後4時、店内は空いていて奥まったボックス席にいるサラリーマンと、窓際の席に座る女性客しかいません。
窓際の女性に話しかけられた麻子は、翌日から彼女と世間話をするようになりました。
毎日のようにやって来て同じ席に座りカフェオレを注文する彼女は、以前にとある会社で社長の秘書を務めていたことを明かします。
社長とは仕事以上の関係になってしまったことが原因で馘になったという彼女の身の上話を聞いて、麻子は不思議な親近感を抱いてしまうのでした。
【承】地下街の雨 のあらすじ②
5日間連続で来店した曜子といつものように無駄話をしていると、見覚えのある男性客が麻子たちのテーブルにやって来ました。
彼の名前は石川淳史で、以前務めていた会社の同僚で充を通して何回か会話を交わしたことがあります。
淳史の父親は衣料品の物流会社を経営していて、ゆくゆくは彼が跡取りになるようです。
淳史が名詞を差し出した途端に、彼女が横からしゃしゃり出でて奪い取ってしまいました。
初めて自分の名前「森井曜子」を名乗った彼女に、麻子はただならぬ気配を感じてしまいます。
どうやら曜子は、社長の代わりとなる金づるを探していたようです。
土日休みだった麻子は月曜日に出勤すると、仕事終わりに曜子に捕まり買い物に付き合わされてしまいました。
紺地に手描きの椿がプリントされたネクタイを、淳史にプレゼントするつもりのようです。
曜子の入れ込みように危機感を抱いた麻子は、彼女が以前に勤めていたという会社に問い合わせをしてみることにします。
【転】地下街の雨 のあらすじ③
曜子が社長の秘書をしていたこと、愛人としていいように利用された末に退職に追い込まれたこと。
これらのエピソードは全て曜子の妄想でしかないことを、受話器越しに社長から打ち明けられました。
自宅にまで押しかけてきた曜子に刺されそうになったという顛末を聞いた途端に、麻子は受話器を放り出して駆け出します。
今頃は新宿のショット・バーで、淳史と曜子は待ち合わせをしているはずです。
先回りした麻子はたった今仕入れたばかりの曜子が起こした過去の数多くの問題行動を教えてあげました。
近頃では仕事中に電話をかけてきたり職場にまで姿を現すようになっていて、淳史にも迷惑をかけているようです。
曜子を追い払うための方法は、麻子と淳史が付き合っていると嘘をつくしかありません。
ふたりの名演技に騙されたのか、曜子は捨て台詞を吐いてその場を立ち去ります。
これでひと安心とホッとして顔を見合わせたふたりは、何時しか本当の恋人同士になっていくのでした。
【結】地下街の雨 のあらすじ④
麻子と淳史が付き合い始めてから、間もなく1年が経とうとしていました。
仕事終わりに地下鉄の改札口を出た小さな広場でデートの待ち合わせをしていた麻子は、曜子が淳史に送ったはずの紺地に椿のネクタイをした男性を目撃します。
隣にいる女性は、1年前に麻子の前から姿を消した曜子です。
唖然とする麻子に向かって、曜子は全ての種明かしをしました。
淳史は充と婚約していた頃から麻子を愛していたこと、ふたりの破局を知りながらも心を閉ざしていた麻子に今一歩踏み込んでいけなかったこと。
淳史の行きつけのスナックでママをしていた曜子は、一時期女優を志していたこともあります。
麻子と淳史にインパクトを与えるような、再会場面を演出するのはお手の物です。
ネクタイを締めた男性は曜子の夫であり、いつか麻子も電話越しに話したことのある社長さんです。
麻子は自分の名前を呼ぶ淳史の声を聞いて、椿のネクタイに寄り添うような曜子に別れを告げるのでした。
地下街の雨 を読んだ読書感想
味わい深いセリフが散りばめられている中でも特に良かったのは、「地下街にいると、地上はいいお天気に決まってるって思い込んでる」です。
過去の失恋に傷ついて、地下街の喫茶店で燻っているヒロイン・三浦麻子の心情を鮮やかに捉えていました。
目の前にあるものだけで全てを判断してしまうことの、浅はかさと危うさも伝わってきます。
窓際に座るミステリアスな女性に翻弄されていくうちに、思わぬ幸運と新しい出会いを掴みとる麻子の姿が感動的です。
鬱屈とした地下街を抜け出して光が差し込んでくるような、クライマックスのどんでん返しが爽快でした。
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