パトリック・メルローズ4 マザーズ・ミルク(エドワード・セント・オービン)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

パトリック・メルローズ4 マザーズ・ミルク(エドワード・セント・オービン)

【ネタバレ有り】パトリック・メルローズ4 マザーズ・ミルク のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:エドワード・セント・オービン 2019年1月に早川書房から出版

マザーズ・ミルクの主要登場人物

パトリック・メルローズ(ぱとりっく・めるろーず)
主人公。貴族出身の弁護士。妻のメアリーと長男・ロバートに次男のトーマスと共にロンドンで暮らす。

エレノア(えれのあ)
パトリックの母。現在は介護施設で入院中。

シェイマス・ダーク(しぇいます・だーく)
エレノアの別荘「サン=ナゼール」の管理人を務める。慈善団体「トランスパーソナル財団」の代表者。

ジュリア(じゅりあ)
パトリックの大学時代の恋人。

ナンシー(なんしー)
パトリックの叔母。ニューヨーク在住

マザーズ・ミルク の簡単なあらすじ

高貴な出自を誇り弁護士として活躍しているパトリック・メルローズは、プライベートでもふたりの息子を授かり一見すると順風満帆な人生です。しかし母親が慈善事業に熱中していて、先祖代々の土地や思い出の別荘まで手放す危機を迎えています。メルローズ家の過去のしがらみから抜け出すために、パトリックは奔走していくのでした。

マザーズ・ミルク の起承転結

【起】マザーズ・ミルク のあらすじ①

衰えゆく祖母と5歳の孫の決意

2000年8月、5歳になったロバートは父親のパトリックに連れられて南フランスの別荘「サン=ナゼール」に遊びに来ていました。

母のメアリーは先月に生まれたばかりの弟・トーマスにかかりっきりで、ロバートは少し寂しいです。

この別荘はロバートの祖母に当たるエレノアの持ち物でしたが、現在彼女は体調を崩して介護施設で暮らしています。

「トランスパーソナル財団」の代表を務めているシェイマス・ダークが、エレノアに代わって別荘地の管理を任されていました。

シェイマスは故郷のアイルランドで働く看護師でしたが、慈善団体を立ち上げて多くの人の心を掴むことに成功しています。

エレノアも彼の心酔者のひとりで、ゆくゆくはサン=ナゼールの地所を譲り渡すつもりです。

久しぶりに家族でお見舞いにいったロバートは、祖母がこの前会った時よりも随分と衰弱していることに気が付きます。

ロバートは年を取って病院のベッドに寝たきりになる前に、名を成して特別な人生を送ることを誓うのでした。

【承】マザーズ・ミルク のあらすじ②

ひと夏の危険な情事と没落していく貴族

2001年8月、今年もメルローズ一家はサン=ナゼールでバカンスを過ごすことになりました。

メアリーは相変わらず1歳になったトーマスに惜しみない愛情を注いでいて、パトリックは何となく見捨てられた気分です。

そんな夏のある日に、オックスフォード大学時代にお付き合いをしていたジュリアと再会を果たしました。

サン=ナゼールでの滞在は2週間でしたが、パトリックはかつての恋人と一線を超えてしまい幾度となく逢瀬を重ねるようになります。

パトリックは由緒正しい貴族の家柄に生まれて、祖母が健在の時には立派なお屋敷で優雅な幼年期を送っていました。

財政状況が次第に下降気味になっていったのは、母のエレノアの代からです。

一族の富の象徴でもあるサン=ナゼールを、得体の知れない財団に委譲することだけは我慢なりません。

昨年までは様々な手続きを先送りにしてきましたが、エレノアの健康状態の悪化と経済的な事情もあり遂に思い出の地を手放すことになりました。

【転】マザーズ・ミルク のあらすじ③

サン=ナゼールで過ごす最後の夏

2002年8月、サン=ナゼールは既にトランスパーソナル財団に贈与されていました。

しかしエレノアとシェイマスとの間に締結された取り決めによって、1年のうち8月だけはパトリックたちが屋敷を使用することは可能です。

パトリックは厄介な裁判があるためにロンドンに足止め、ロバートはお友達の家で初めてのお泊まり。

メアリーはトーマスを連れて、一足先に8月の第1週にサン=ナゼールに到着します。

パトリックがロバートを連れて合流したその日から、俄かに雲行きが怪しくなり始めました。

シェイマスが個人的なふたりの友人を、この別荘に宿泊させると言い始めたからです。

険悪なムードに陥る夫とシェイマスを、メアリーは何とか宥めます。

シェイマスが現在書斎として使っている空き部屋を1週間だけメルローズ一家に明け渡す、その代わり8月の最後の1週間にふたりの友人を泊める。

ようやく妥協に至ったメアリーは、来年の夏はここではなくアメリカで過ごすことを考えるのでした。

【結】マザーズ・ミルク のあらすじ④

初めてのアメリカでの夏休みと過去を振り切るパトリック

2003年8月、メルローズ一家はニューヨークの「チャーチル・ホテル」に滞在しています。

飛行機内では肥満体のアメリカ人親子に挟まれたり、入国審査の時にはパトリックが国際手配中のテロリストに間違われたりとトラブル続出でした。

ロバートはマンハッタンのプレッツェルの屋台に、トーマスはセントラルパークの回転木馬に興味津々です。

観光を楽しんだ一向は、エレノアの妹でありパトリックの叔母に当たるナンシーに会いに行きました。

ニューヨークの高級住宅街に住んでいるナンシーは、イギリスの末期患者用の介護施設で間もなく息を引き取ろうとしている姉について深く心を痛めています。

過度な延命治療を望んでいないエレノアは、スイスに本部を置く自発的安楽死協会と連絡を取っているようです。

パトリックは以前のようにサン=ナゼールに郷愁を抱いていません。

ご先祖様や家柄などの過去に捉われることのない愛を、ふたりの息子に与えることを決意するのでした。

マザーズ・ミルク を読んだ読書感想

2000年の8月から2003年8月までの4年間が、とあるイギリス貴族一家のそれぞれの視点から映し出されていくのが味わい深かったです。

海辺のリゾート地にひっそりと佇んでいる、サン=ナゼールの別荘が美しさ溢れていました。

その一方では土地と建物の所有者であるエレノアが、次第に肉体的にも精神的にも衰えていく様子には胸が痛みます。

言葉巧みにエレノアに取り入り、いつの間にか管理人から相続人へとなり替わってしまうシェイマス・ダークが何とも不気味です。

ジェネレーションギャップや終末医療を始めとする、社会的なテーマが盛り込まれていて考えさせられました。

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