【ネタバレ有り】銀河鉄道の夜 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:宮沢賢治 1969年7月に角川書店から出版
銀河鉄道の夜の主要登場人物
ジョバンニ(じょばんに)
貧しい学生。
カムパネルラ(かむぱねるら)
ジョバンニの親友。クラスの人気者。
ザネリ(ざねり)
カムパネルラの取巻きのひとり。
マルソ(まるそ)
カムパネルラの友人。
銀河鉄道の夜 の簡単なあらすじ
貧しい家庭で生まれ育ったジョバンニは、アルバイトに追われていてなかなか学校の勉強に集中することが出来ません。同級生たちが地元のお祭りを楽しんでいる時にも、ひとりだけ活版所で黙々と働いています。ようやく仕事が終わってみんなの後を追いかけに行ったジョバンニは、友人のカムパネルラと不思議な体験をするのでした。
銀河鉄道の夜 の起承転結
【起】銀河鉄道の夜 のあらすじ①
天文学の授業中に先生から質問されたジョバンニでしたが、このところアルバイトが忙しく家で勉強する時間がないために答えることが出来ません。代わって指された優等生のカムパネルラは正解を知っていましたが、仲の良いジョバンニを気遣ってかわざと解らないふりをしてくれました。ちょっぴり意地悪なザネリにからかわれるのは何時ものことです。放課後には校庭の桜の木の下にクラスメイトが何人か集まっていて、今夜の銀河のお祭りにみんなで遊びに出かける相談をしています。
ジョバンニの家はそれほど裕福ではなく父親も北の地方に出稼ぎにいっているために、ジョバンニはお祭りには行かずに活版所で仕事をしなければなりません。午後6時までみっちりと働いて日当の小さな銀貨1枚を受け取ると、母親に頼まれていたパンの塊をひとつと角砂糖を買って家に帰ります。自宅で夕御飯を食べた後に星祭りのことが気になっていたジョバンニは、少しだけ見に行くことにしました。
【承】銀河鉄道の夜 のあらすじ②
お祭り会場に向かう途中には黒くて平らな丘があり、ジョバンニが通りかかると何処からともなく汽笛が聞こえてきました。
辺り一面は満天の星空になり、頭上を飛び交っているのは「銀河ステーション」という不思議なアナウンスです。
いきなり目の前が明るくなったと思ったら、ジョバンニは小さな列車の赤いビロードを貼った座席の上に座っています。
すぐ前の席には濡れた黒い上着を身に纏った少年が窓から外を覗いていて、よく見てみるとカムパネルラです。
少しだけ顔色が悪くてどこか体調も優れない様子で、一緒に乗る予定だったザネリが先に帰ったことを告げます。カムパネルラが頻りにぐるぐると回しながら眺めているのは、黒曜石でできた石板の上に美しい光が散りばめられている銀河の地図です。地図によるとこの汽車はもうじき白鳥の停車場に到着して、その後には南十字星へと向かうようです。
車掌も車内検札係もいないようで、乗客もジョバンニたちの他に見当たりません。
【転】銀河鉄道の夜 のあらすじ③
アルビレオの観測所を過ぎた辺りで3人組が乗り込んできました。6歳くらいの艶々した黒い髪の毛の男の子、茶色い目をした12歳くらいの可愛いらしい女の子、黒い外套を着た青年。
青年は男の子をジョバンニの隣の席に、女の子はカムパネルラの隣に座らせます。青年は幼い姉と弟の家庭教師として雇われている大学生で、ふたりを一足先に本国へ帰った父親のもとに送り届ける途中だったようです。港を出発してから12日目、突如として太平洋を航海中の客船が氷山に衝突する大事故が発生しました。
船はあっという間に沈み始め船員たちは救命ボートを用意しますが、到底全員には行き渡りません。
気がついたらこの列車に乗っていたという3人とは、南十字星までの道連れになります。目的地まで着くと男の子は降りたくないと駄々を捏ねていましたが、青年に手を引かれて泣く泣く車外に連れ出されました。
賑やかだった客室は静まりかえって、ジョバンニとカムパネルラは再びふたりっきりです。
【結】銀河鉄道の夜 のあらすじ④
列車が天の川の中を通過した時にジョバンニが外の景色に見とれているうちに、さっきまで席に座っていたはずのカムパネルラの姿がありません。
そこには黒い帽子を被った博士がいて、ジョバンニのポケットに切符を忍びこませました。再びカムパネルラに会うためにはこの切符を持っていくこと、学校でしっかりと勉強すること、夢の鉄道ではなく本当の世界を歩いていくこと。
博士の言葉を聞いたジョバンニが目を開くと、そこは見慣れた丘の上です。大通りに出たジョバンニは川に架かった橋の上にたくさんの野次馬が集まっていることに、胸騒ぎを覚えて近づきます。
ついさっきまで一緒にいたマルソの話によると、川で溺れたザネリを助けるためにカムパネルラが犠牲になったようです。
ジョバンニは現場に駆け付けたカムパネルラのお父さんに銀河鉄道のことを話したかったのですが、喉が詰まって何も言えません。
出稼ぎに行っていた父が帰ってきたことを聞かされたジョバンニは、目に涙を浮かべて家まで走っていくのでした。
銀河鉄道の夜 を読んだ読書感想
学校にもいまいち馴染めずに家庭でも孤独を感じていた主人公のジョバンニが、突如として宇宙空間を走る列車に乗っているシーンが幻想的です。
ジョバンニとは対照的なカムパネルラとの、束の間のふたりっきりの旅には心温まるものがあります。1912年のタイタニック号の沈没事件の犠牲者を彷彿とさせるようなキャラクターも登場して、歴史的な海難事故に胸を痛めていたであろう宮沢賢治の姿を思い浮かべてしまいました。死者を載せて走り続けていく銀河鉄道の中で、ジョバンニがかけがえのない生命や人生の意味について博士から教えられる場面が感動的です。
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