【ネタバレ有り】新釈走れメロス のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:森見登美彦 2007年3月に祥伝社から出版
新釈走れメロスの主要登場人物
芽野史郎(めのしろう)
本作の主人公。ヘタレ大学生。約束を破るため、全力で逃げ切ろうとする。
芹名雄一(せりなゆういち)
芽野の親友。芽野の人質となる。
図書館警察長官(としょかんけいさつちょうかん)
陰の最高権力者であり、自転車にこやか整理軍を指揮する。
須磨さん(すまさん)
詭弁論部に在籍することわずか二ヵ月でほぼ全員の男を悩殺した女性。
新釈走れメロス の簡単なあらすじ
芽野史郎は詭弁論部の廃部を阻止するため図書館警察長官に直談判しにいく。長官が提案したのはブリーフ一丁で、美しく青きドナウに合わせて踊り、今宵のフィナーレを飾るというものだった。芽野はその提案を受け入れるが、一晩だけ猶予を願い、親友の芹名雄一を人質にして逃げていく。約束をやぶるため、必死に逃げる芽野であったが、最後はステージに上がり、芹名と長官と三人で踊る。
新釈走れメロス の起承転結
【起】新釈走れメロス のあらすじ①
芽野史郎は激怒していました。
必ず邪知暴虐の長官をへこませねばならぬと決意しました。
芽野はいわゆる阿呆学生でした。
汚い下宿で惰眠をむさぼり、落第を重ねて暮らしてきました。
しかし、厄介なことに、邪悪に対しては人一倍敏感だったのです。
その日の午後、芽野は一大決心をしました。
「たまには講義に出てみるか」と考えたのです。
そうして、一乗寺の下宿から大学へ出かけました。
芽野が大学構内へ入っていくと、講義は休講で学園祭がやっていました。
芽野は学園祭を満喫し、しばらくしてから「芹名はどうしているかな」と思いました。
芹名雄一は芽野の親友です。
二人は詭弁論部に所属し、互いに一目置いていました。
久しぶりに詭弁論部に行くと、芹名の姿はなく、詭弁論部の看板は引きはがされ、代わって、生湯葉研究会の看板が掲げられていました。
部員は図書館警察の長官が相手だから抵抗できないといいます。
激怒した芽野は図書館警察長官に直談判しにいきます。
【承】新釈走れメロス のあらすじ②
芽野は長官と相対します。
長官は誰も信用せず、孤独地獄を生き抜いてみせようと思っていました。
しかし、いきなり部室を失うのもかわいそうだと思った長官はある提案をしてきます。
その提案とはグランドに設営してあるステージに上り、「美しく青きドナウ」に合わせてブリーフ一丁で踊り、今宵のフィナーレを飾る、というものでした。
芽野はその提案を受け入れるも、姉の結婚式があるから一日だけ猶予をくれと長官に頼みます。
その代わりに芹名を人質に置いていくと芽野は言います。
長官は芽野の提案を受け入れます。
芹名を人質に置いていった芽野は構内を駆け抜けて姿を消しました。
しかし、芽野には差し迫った要件は何一つありませんでした。
姉の結婚式があるというのは嘘であり、姉自体いなかったのです。
芽野はマンガ喫茶に駆け込み、寝食を忘れてマンガを読みました。
と、そこに長官が芽野の身柄を拘束するために手配した「にこやか自転車整理軍」の面々が芽野を取り囲みます。
芽野はマンガ喫茶を飛び出します。
【転】新釈走れメロス のあらすじ③
マンガ喫茶を飛び出した芽野は電車に乗って逃げていきます。
阪急電鉄に揺られながら、芽野は芹名との日々を思い起こし、懐かしくなりました。
芽野は改めて断固として逃げ切る決意を固めます。
その時、ふいに芽野の前に二人の男が立ちました。
阪急烏丸駅で振り切ったと信じていた追手たちは、じつはぎりぎり電車にのりこんでいたのです。
「南無三」と芽野は思いました。
二人の男に両腕をつかまれた芽野は「小便を断固漏らすぞ!」と叫びます。
やむなく芽野を便所へ行かせると、芽野は隙をついて逃げ出し、再び電車に乗って追手から逃れます。
芽野は野宮神社まで逃れてきました。
疲労困憊し、逃げ切る気力が失せかけ、うつらうつらしている芽野に神社前で人力車を止めている車夫が声をかけてきます。
親切なことを言われたことのない芽野は嬉しくなり、JR嵯峨嵐山まで行って欲しいと頼みます。
人力車に乗り込んで己の運命を屈強な若者に預けたとたん、芽野は安心して眠ってしまうのでした。
【結】新釈走れメロス のあらすじ④
なんだかやけに眠ったような気がしてハッと身をおこすと、人力車はまだ走っていました。
人力車は大学のほうに走っているようでした。
「これは罠だ!」と芽野は気づきます。
途中、自転車と衝突し、芽野は人力車から転がり落ちて逃げ出します。
芽野はかつて詭弁論部であった須磨さんに助け出されます。
須磨さんのマンションで炒飯を食べていると、男たちが喚く声がします。
芽野はまた罠だと気づきます。
須磨さんは長官に協力していたのです。
須磨さんがフッと笑ったとたん、ドアが開きました。
ドッとなだれ込んできたのは詭弁論部の友人たちでした。
詭弁論部の友人たちは詭弁論部廃部を阻止するため、芽野に約束を守らせようと捕まえにきたのです。
芽野はマンションから運び出され、路上の車へ詰め込まれます。
芽野は胡椒の瓶をぶちまけました。
運転手はむせ返って車を急停車させます。
芽野はドアを開けて路上を転がり出て、ほぼ全裸体、ブリーフ一丁、首にはピンクのバスタオルをなびかせ逃げ去っていきます。
一方、大学では芹名が桃色ブリーフ一丁になり、踊る準備をしていました。
やがてステージに出て芹名は踊りだします。
そこに来たのは芽野でした。
芽野と芹名がステージで踊ると、長官も加わり、三人で踊るのでした。
新釈走れメロス を読んだ読書感想
森見登美彦作の走れメロスです。
しかし、これは新釈であり走れメロスのパロディです。
走れメロスとは似ていますが、全く別作品です。
森見ワールドが加わったおもしろ走れメロスですね。
主人公は森見さんお得意のヘタレ大学生です。
普通の走れメロスは約束を守るため命がけで戻ってくるという話ですが、新釈走れメロスは約束を破るため命がけで逃げるという話になっています。
しかも処刑の内容というのが、ブリーフ一丁で美しく青きドナウに合わせて踊るという内容。
森見ワールドが炸裂しています。
他にも短編パロディ作がありますので読んでみてください。
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