「たけくらべ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|樋口一葉

たけくらべ(樋口一葉)

【ネタバレ有り】たけくらべ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:樋口一葉 1896年に集英社から出版

たけくらべの主要登場人物

美登利(みどり)
表町の大黒屋の寮の留守番。

正太郎(しょうたろう)
表町の田中屋の息子。

三五郎(さんごろう)
正太郎の友人。横町の人力車夫の息子。

長吉(ちょうきち)
横町の少年グループのボス。

藤本信如(ふじもとしんにょ)
横町のお寺の息子。

たけくらべ の簡単なあらすじ

和歌山県の田舎町で暮らしていた美登利とその家族は、遊女として成功した姉を頼って東京の下町に移り住み新しい生活をスタートします。近所の少年少女たちとの友情や喧嘩、同級生への仄かな恋心、遊廓に生きる女性たちの美しくも儚げな姿。思春期特有の様々な経験を通して、美登利は少女から大人の女性へと成長していくのでした。

たけくらべ の起承転結

【起】たけくらべ のあらすじ①

吉原の小さな女王

大黒屋の美登利は和歌山県の生まれでしたが、姉が遊女として身売りされた時に両親と一緒に吉原にやって来ました。母親は遊女たちの仕立て屋として働いていて、父親は小さな女郎屋で会計係を任されています。美登利は踊りや三味線などの習い事に打ち込んだり、学校にまで通わせてもらったりと地元にいた頃とは偉い違いです。この地で瞬く間に売れっ子の花魁となった姉のお蔭もあり、遊女の身の回りの世話をする女性たちからは可愛いがられお小遣いには困りません。自分の気に入ったお人形や手鞠ばかりではなく、クラスメイトの女の子たちにお揃いのゴム毬を買って喜ばせることもしばしばです。

最初のうちは彼女の人気を妬んだ町内の娘たちから心ない言葉を浴びせられてしまい、三日三晩泣き続けたこともあります。元来が勝ち気な性格のためか少々の事では動じなくなり、今では彼女に露骨な憎まれ口を叩く子はいません。

いつしか美登利は子供仲間の間で女王様となっていくのでした。

【承】たけくらべ のあらすじ②

表町と横町との根深い対立

美登利が留守番をしている大黒屋の寮は表町にあり、田中屋の息子・正太郎など裕福な家庭が多いです。

一方で横町と呼ばれる地域の住人は生活も苦しく、自然と両者の溝は深まっていました。横町組と名乗って少年たちを束ねているのは、近所でもガキ大将として有名な長吉です。

表町の正太郎には何かと対抗意識を燃やしていて、8月20日の千束神社のお祭りでは一泡吹かせてやろうと目論んでいます。

祭りの当日になると表町の子供たちは文房具屋の前で待ち合わせをしていましたが、正太郎の姿だけ見当たりません。

取り巻きを連れて襲撃にきた長吉でしたが、正太郎がいない腹立ち紛れに彼の弟分である三五郎を痛めつけます。男まさりの美登利は長吉に対しても恐れを知らずに立ち向かって止めようとしましたが、泥のついた草履を額に投げつけられてしまいました。

交番から巡査が駆けつけて来たために長吉は逃げ出しますが、去り際に龍華寺の息子・藤本信如の名前を残していきます。

【転】たけくらべ のあらすじ③

美登利の憧れの人の意外な素顔

信如は横町に住んでいましたが、美登利と同じく入谷近くにある私立の学校・育英舎に通っていました。親譲りで勉強ができて校内でも一二を争う秀才になり、表町の優等生であろうと横町の不良であろうと彼を侮るような連中はいません。

4月の終わりに学校で開催された春の大運動会では、綱引きから鞠投げに縄跳びまでと八面六臂の活躍を披露しています。

美登利が初めて信如と言葉を交わしたのは、競技の途中で羽織の袂に泥が付いていることに気がついて赤い絹のハンカチを差し出した時です。それ以来美登利は彼に心惹かれていき積極的にアプローチをしていきますが、ゆくゆくは僧侶の身となる信如としては女子生徒と親しくする訳にはいきません。

長吉を正太郎にけしかけた張本人が信如だと知って、美登利は深く傷ついてしまいます。信如と教室で顔を合わせるのも嫌になった美登利は次第に授業を休みがちになり、遊廓で働いている年上の女性たちと遊び暮らすようになるのでした。

【結】たけくらべ のあらすじ④

少年少女たちの旅立ち

14歳になった美登利は自分自身の身体が子供から大人の女性へと変わっていることに気がついて、俄に憂鬱な気分になってしました。今までのように町に繰り出して大騒ぎすることもなく、男の子たちに混じって遊ぶこともありません。

11月になると大鳥神社で行われる酉の市にせっかく誘いに来てくれた正太郎に対しても愛想なく、冷たい言葉を放って追い返してしまいます。つられて気落ちした正太郎もすっかり大人しくなってしまい、表町は急に火の消えたような寂しさです。 冬の訪れを感じるようになったある日の朝、美登利は家の前の格子門に誰かが水仙の造花を外から差し込んでいったことに気がつきました。

相手に心当たりはありませんでしたが何となく懐かしい気持ちが涌いてきたために、床の間の脇に設けた棚の一輪挿しにさして眺めてみます。聞くともなしに伝え聞いたところによると、この造花が届けられたのは信如が僧侶の学校に入学することが決まった当日であったとのことです。

たけくらべ を読んだ読書感想

遊廓と隣り合わせの東京の下町で、子供から大人への階段を駆け上がっていく少年少女たちの日常が情感溢れていました。

表町と横町に分かれて繰り広げられていく抗争には、時代と国は違えど「ウェストサイド物語」のシャーク団とジェット団を彷彿させるものがあります。

いつまでも続くかに思えていたヒロイン・美登利の少女時代が、突如として終わりを告げることになるシーンが哀愁たっぷりです。

2度と戻ることのない純真無垢な姿を、切り取ったかのような描写には胸を締め付けられます。

24歳の短くも実り多い生涯を全うした、著者自身にも思いを巡らせてしまいました。

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