【ネタバレ有り】神様のカルテ0 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:夏川草介 2015年3月に小学館から出版
神様のカルテ0の主要登場人物
栗原一止(くりはらいちと)
本作の主人公。信濃大学医学部の最高学年6年生。医学部の学生寮である有明寮に住む。読書を好み、特に夏目漱石を敬愛している。そのためか普段から口調が古風。
進藤辰也(しんどうたつや)
栗原の同級生。冷静沈着・頭脳明晰・成績優秀で周りから頼られる存在。如月とは恋人関係。
砂山次郎(すなやまじろう)
栗原の同級生。気持ちが優しくムードメーカー的存在。成績はあまり芳しくなく追試の常連。北海道の酪農家出身。
如月千夏(きさらぎちなつ)
栗原と同じ大学の医学部の1年下の5年生。テニス部に所属し、明るく溌剌としたなかにも芯の通った性格。進藤とは恋人関係。
片島榛名(かたしまはるな)
孤高の山岳写真家。栗原が大学卒業後に住まいにしている御嶽荘というシェアハウスの住人。
神様のカルテ0 の簡単なあらすじ
医師を目指す栗原たち医学生が、学生寮である有明寮でともに学び暮らしていくなかでの友情や恋愛模様から物語がスタートする。医学を志すという同じ目標に向かってきた仲間と別々の進路を歩むことになる葛藤や、医師として人間として成長していく過程が描かれている。
神様のカルテ0 の起承転結
【起】神様のカルテ0 のあらすじ①
夾竹桃の花が咲き、眩い日差しが降り注ぐ8月。
医師を志す医学生にとってこの夏から秋という期間はまさに国家試験の勉強中、さらには就職に向けた情報収集や見学なども並行して行わなければいけない、非常に多忙な時期です。
栗原たちも例に漏れず、有明寮の食堂に集まっては、落とすわけにはいかない卒業試験の対策に追われていました。
また、尋常ならざる焦りや緊張などの重圧から、恋愛上の波乱は言うまでもなく、学生たち自身も予期しないような変化が起きてくるほどの、試練の時期でもあります。
そんな中、栗原たちの同級生の1人であり、一旦は社会人になって管理職まで出世したのちに医師を目指すことにしたという異色の経歴の持ち主であるシゲさんが、過剰飲酒のうえで頭部打撲、意識混濁の状態で救急搬送されるという事件が起こります。
実はシゲさんは試験で卒業に必要な単位を落として留年が確定しており、周りの空気を慮ってそれを言い出せずにいたのです。
6年ものあいだ一緒に学んできた仲間の脱落に肩を落としたのも束の間、翌年になれば自分たちとて、それぞれが別々の進路を選ぶことになるのだという現実をあらためて感じる栗原たちでした。
【承】神様のカルテ0 のあらすじ②
9月末の週末、進藤と如月は白樺峠を訪れました。
翌年の春には離ればなれになってしまうこともあり、どこかに2人で出かけたいという如月の希望を進藤が叶える形で、進藤は大切な話をするために如月を連れ出したのでした。
夏を北日本や信州ですごした鷹たちが、冬の訪れの前に一斉に南へ渡り始める『鷹渡り』を見ながら、進藤は自分自身の決断を如月へ伝え、如月はそれを受け入れたのでした。
一方で、栗原も自らの進む道を定め、地域医療に根ざす本庄病院の面接を受けることになります。
本庄病院は一般診療から救急診療まで幅広く担っている地域の基幹病院で、入口には『24時間365日対応』という看板が赤々と点っています。
面接の際、この看板に対して率直にどう思うかを聞かれた栗原は遠慮がちに感想を述べ、さらに『医療の基本だと思います』という理想をも掲げます。
いち医学生の若者が述べた理想は、のちに彼の指導医となる医師にとっても、忘れていた熱い何ものかを思い起こさせるのに充分な真摯さを持っていました。
【転】神様のカルテ0 のあらすじ③
本庄病院に就職して4ヶ月、面接の際に掲げた『24時間365日対応=医療の基本』を、単なる理想だけではなく努力して支える側になった栗原は、研修医という新しい肩書きのもと、驚きと困惑と緊張に満ちた目の回るような日々を送っていました。
上級医やベテラン看護師に支えられながら日々の業務をこなしていたある日、指導医からの指示で1人の患者の主治医を任されることになります。
栗原自身が胃カメラの施行によって末期がんを発見した患者であり、栗原にとっては初めての受け持ち患者となりました。
ところが患者自身が治療開始の延期を希望するばかりか予約の外来に現れず、困惑した栗原は担当看護師の助言もあり患者宅を訪ねます。
驚きながらも自宅に誘い入れた患者から、治療開始の延期を希望した理由を聞かされ、医師として自らがするべき判断と、自分よりもはるかに人生経験のある患者自身の希望の間で揺れ、結果的には患者の気持ちを優先させる決断をします。
約1ヶ月後、娘の結婚式への参列を終え新幹線で帰途についたその患者が昏睡状態で緊急搬送され、栗原は治療に関してできる指示を済ませた後、虚脱の中で天井を見上げていた。
その様子を見た指導医から、医療に関わる者の心の持ちようや命との向き合い方を諭されて、限られた命の中で自分になにができるか、医師としての在り方を考え始めます。
【結】神様のカルテ0 のあらすじ④
栗原が研修医として医師の在り方を模索しながら日々奮闘している頃、栗原が大学卒業後に住まいにしている御嶽荘の住人のひとりであり山岳写真家である片島榛名は、冬山登山をしている行程の途中で先行していたはずの男性の姿が見えないことに気づき、捜索の末吹雪の中に怪我をした男性を発見しました。
生きることを自ら諦めているかのような男性に対して片島は叱咤し、荷物をその場に置いて男性を山小屋に連れ帰ることを決めました。
翌朝、最初から死のうと思ったわけではないが生きる理由が見つからなくなった、などと弁明を試みた男性に対して、片島は静かに自らの考えを語りかけました。
山は帰るために登るものであり、帰る場所は自分でつくるのだと。
その言葉は、幼い頃に両親をなくした彼女自身の生き方そのものなのでした。
また、山小屋には男性と片島の他に1組の夫婦がおり、この夫婦にとって今回の登山は幼くして亡くした息子の弔い登山でした。
そういった彼らの話を聞いた男性は生きる気力を取り戻し、後日男性は満身創痍ながらヘリで救助され、片島は撮影をしながら自力で下山しました。
下山し電車の改札を抜けると、帰ってきた・・・と感じると同時に、彼女の心を占めるのは緊迫した冬山の記憶では既になく、今も下宿で彼女の帰宅を待っているであろう心温まる存在のことでした。
そして少し足早になった彼女が足を止め引き戸を開けたその瞬間、彼女はやはりここが自分の居場所なのだと心の底で頷いたのでした。
神様のカルテ0 を読んだ読書感想
まず登場人物が皆魅力的で、小説上の人物であるとは理解しつつも憧れ見習いたいと思ってしまいました。
一風変わり者ですが患者の気持ちになって考えている栗原、普段は冷静沈着なのに心の深いところで友人のことを熱く想っている進藤、ややもすれば自分の人生を恨み続けるくらいの境遇を持っていながらまっすぐに他人のことを考えられる片島。
命の重さや生きることの意味といった、普段生活する中ではあまりにも当たり前になってしまって意識せずにいてしまっていることを、あらためて感じさせてくれる作品でした。
職業としては医療のプロである栗原が、指導医や先輩看護師、また人生経験豊富な患者から、人間として大事にすることを教わって成長していく姿も印象的でした。
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