【ネタバレ有り】斜陽 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:太宰治 1947年12月に新潮社から出版
斜陽の主要登場人物
かず子
主人公。一度結婚するも、流産、家に戻る。母と一緒に暮らしている。
かず子の母
かず子の母。夫を亡くし、かず子と二人で暮らしている。体調を崩しやすい。
直治(なおじ)
かず子の弟。戦争に行き行方不明だったが、家に戻ってくる。
上原(うえはら)
直治の尊敬する小説家。妻と娘がいる。酒におぼれた生活を送る。
斜陽 の簡単なあらすじ
舞台は戦後。貴族だったかず子たち家族も、戦後の移り変わりによって没落する。東京から伊豆へ引っ越し、かず子と母は2人で暮らしていた。行方不明になっていた弟の直治は、戦争から帰ってくると酒におぼれた生活を始めた。母は体調を崩し、不安を抱えるかず子。そんな中で、かず子は上原に3通の手紙を送る。返事は返ってこなかった。
斜陽 の起承転結
【起】斜陽 のあらすじ①
貴族であったかず子と母は、東京で暮らしていたが、戦後の時代の移り変わりにより、引っ越しを余儀なくされる。
叔父から家のことについて助言をされた母はそれに従い、叔父が紹介してくれた山荘を見に行きもせず、そこに住むと決めてしまう。
引っ越してすぐに母は体調を崩していたが、、名医のおかげで回復、「神様が私を一度お殺しになって、それから昨日までの私と違う人にして、よみがえらせて下さったのね」と前向きに暮らす母。
そんな生活の中で、かず子は小さな火事を起こしてしまった。
消したつもりの薪がまだ燃えていたのだった。
大事にはならなかったものの、かず子は自分が「おひめさま」だったことに気づかされる。
ある村の人から、「私は前から、あんたたちのままごと遊びみたいな暮らし方を、はらはらしながら見ていたんです。
子どもが2人で暮らしているみたいなんだから、いままで家事を起こさなかったのが不思議なくらいのものだ」と言われてししまうかず子。
その後畑仕事に精を出すかず子。
そんなかず子は、自分の胸にはいじわるの蝮が住み、いよいよ野生の田舎娘になっていくような気分を感じていた。
【承】斜陽 のあらすじ②
母がかず子に話を持ち掛けた。
叔父から連絡があったのである。
内容は2つ。
弟の直治の行方が分かったが、ひどい阿片中毒になっていること。
そして、この家のお金が無くなってしまったから、かず子をお嫁に行かせるか、奉公の家を探すかしかない、という叔父からの言いつけであった。
「いつだかおっしゃったじゃないの。
かず子がいるから、かず子がいてくれるから、お母さまは伊豆へ行くのですよ、とおっしゃったじゃないの。
かず子がいないと、死んでしまうとおっしゃったじゃないの。
だから、それだから、かず子はどこへも行かずに、お母さまのお傍にいて、こうして地下足袋をかいて、お母さまにおいしいお野菜をあげたいと、そればっかり考えているのに、直治が帰ってくるとお聞きになったら、急に私を邪魔にして、宮様の女中に行けなんて、あんまりだわ」このかず子の言葉を聞いた母は、はじめて叔父のいいつけに背いた。
言い合いをしている中で、「私には行くところがある」といったかず子の言葉に、「それはどこ?」と尋ねる母。
かず子はこう答える。
「他の生き物には絶対になくて、人間だけにあるもの。
それはね、ひめごと、というものよ」この日あたりが、かず子と母の幸福の最後の残り火の光が輝いた頃だった。
弟の直治が帰ってきてから、地獄がはじまったのだった。
【転】斜陽 のあらすじ③
弟の直治が帰ってきた。
母の体調は悪化し、寝たきりの生活が続いた。
そんな中で、かず子は、弟の尊敬する小説家・上原に3通の手紙を書く。
その返事は返ってこないままだった。
6年前、直治の借金を返すために、かず子はドレスや指輪を売って、そのお金を上原の家に届けていた。
ばあやのお関を通じてお金を送っていたが、かず子は心配になり、上原を訪ねた。
お酒を飲んだ二人、帰る途中に暗い階段を上った。
上原は、後ろについてくるかず子にキスをした。
これがかず子の「ひめごと」となった。
体調が戻らない母を心配し、叔父に手紙を送ると、以前侍医をやっていた医者がやってきた。
母は、結核であった。
寂しさに襲われるかず子。
缶詰の鮭を冷たいごはんに乗せて食べると、ぽろぽろと涙がこぼれた。
母はご飯も喉を通らず、とても弱っていった。
母は、かず子と少しの会話をしてから亡くなった。
かず子と、直治に看取られて亡くなった。
日本の最後の貴婦人だった母が亡くなった。
ピエタのマリアのような顔だった。
【結】斜陽 のあらすじ④
母の葬儀が終わり、直治とは気まずい生活を送っていた。
ある日直治が女性を連れてきて、直治も居心地が悪そうにしていた。
かず子は、上原に会いに行く決意をする。
上原の家を見つけるも、そこに居たのは彼の妻と娘だった。
妻と娘を見ても、かず子の上原への気持ちは揺るがなかった。
「戦闘、開始、恋する、すき、こがれる、本当に恋する、本当にすき、本当にこがれる、恋しいのだからしようがない、すきなのだからしようがない、こがれているのだからしようがない」「あのひとに一目お逢いするまで、二晩でも三晩でも野宿しても、必ず」ようやく会えた上原は、かつてと見た目は変わっていたものの、自分への愛情があると確信したかず子。
「私、いま幸福よ。
四方の壁から嘆きの声が聞こえてきても、私の今の幸福感は、飽和点よ。
くしゃみが出るくらい幸福だわ」二人は結ばれ、かず子は上原の子どもを妊娠する。
家に帰ると、直治は自殺していた。
直治も死に、上原も離れていった。
一人取り残されたかず子は、お腹の子どもと生きていくのだった。
斜陽 を読んだ読書感想
戦後の時代の移ろいと、貴族の没落を描いた様子は、太陽が傾き日が落ちる「斜陽」そのものと言える。
お金のある家、愛人、酒、薬物、登場人物それぞれ、太宰本人の生き方との共通点も多い。
太宰の作品は本人の意思や考え方を反映したものが多いが、「斜陽」もその一つである。
現在は、酒や薬物、不倫などのニュースは溢れているが、この作品が書かれたのは戦後すぐである。
登場人物それぞれが、かず子のいう「道徳の過渡期の犠牲者」であった。
かず子は、道徳と闘ったのだ。
それこそが、かず子の「革命」であった。
時代が時代であったため、分かりにくい部分や理解しがたい部分もあるだろうが、そのぶん当時のことや、太宰の考え方について知ることのできる作品である。
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