監督:バンジョン・ピサンタナクーン 、 パークプム・ウォンプム 2006年5月にクロック・ワークスから配給
心霊写真の主要登場人物
タン(アナンダ・エヴァリンハム)
本作の主人公。フリーカメラマンで、ジェーンと付き合っている。
ジェーン(ナッターウィーラヌット・トーンミー)
タンと付き合っている女子大生。車の運転中、人を撥ねてしまう。
ネート(アチタ・シカマナ)
かつてタンと付き合っていた物静かな女性。献身的にタンに尽くしていた。
トン(アノップ・チャンパイブーン)
タンの大学時代からの友人。新婚で、披露宴にはタンとジェーンも出席した。
心霊写真 の簡単なあらすじ
「女神の継承」で日本でも話題になったバンジョン・ピサンタナクーン監督が、23歳の時に撮影したタイ発オカルトホラー。
フリーのカメラマンとして働くタンと恋人のジェーンは、友人の結婚式に出た帰りに人を撥ねる事故を起こし、そのままその場を離れてしまいます。
その日からというものタンが撮影した写真には白い影が写るようになり、2人の周りでは不可解なことが多発。
2人はあの日撥ねてしまった女性が関係しているのではと怯えるようになりますが…タイ中から集めたという本物の心霊写真が使われたことでも話題になりました。
心霊写真 の起承転結
【起】心霊写真 のあらすじ①
タイ・バンコク。
フリーカメラマンのタンと女子大生の彼女ジェーンは、タンの友人であるトンの結婚披露宴の帰り、女性を車で撥ねる事故を起こしてしまいます。
女性の容体を確認することもなく、2人はその場を離れてしまいました。
数日後、タンは友人に頼まれ、大学の卒業式で撮影の仕事をしていました。
カメラを構えると、並んで立つ卒業生たちの中に奇妙な白い顔があるのがレンズ越しに一瞬見えます。
タンは驚きますが、気のせいだろうと考えました。
一方ジェーンは、あの事故以来眠れぬ夜を過ごしていました。
その後2人には不可解なことが続き、タンが現像に出した写真には白いモヤのようなものが写り、ジェーンはタンの家の暗室で血まみれで叫ぶ女性に遭遇する悪夢にうなされます。
2人はあの夜撥ねた女性が亡くなっているのではないかと考え、交通事故被害者救済会の事務所を訪れます。
そこにはタンの写真と同じように白いモヤが写っているものが数枚あり、2人はあの夜の事故現場へ行くことにしました。
現場ではまさにあの事故の検証が行われている最中でしたが、車が看板に突っ込んだだけでけが人は出ていないと言われます。
警察や病院に問い合わせても答えは同じで、タンは「誰かに助けられて無事なんだ。
写真も露出の失敗だ」とジェーンに言って聞かせました。
しかし、タンが自宅で顔のようなものが写った写真を拡大して見ていると、その顔がタンを見るように動いた瞬間を見てしまいます。
写真屋のディーに相談しますが、二重露光だと笑ってあしらわれてしまいました。
自宅に戻り、暗室で作業を始めたタンの横にジェーンがやってきました。
そこに電話が鳴り響き、「ちょっと待ってて」と言ってタンは電話を取りに行きます。
しかし電話の相手はジェーンで、タンは誰もいない暗室を見て言葉を失いました。
【承】心霊写真 のあらすじ②
あの事故以来、タンは首が痛むのを気にしていました。
心霊写真に興味を持ったジェーンはタンと共に心霊写真雑誌の編集部を訪れ、そこの社長から「死者は愛する人に会いたがる」という話を聞きます。
そして社長はポラロイドで写された心霊写真を出し、霊の望みを知るための答えは写真の中にある、と言いました。
数日後、タンが撮影スタジオで仕事をしていると、突然スタジオのライトが消え、徐々に近づく不気味な女に襲われます。
首も痛み、心身ともに疲れたタンは、病院で精密検査を受けることにしました。
しかしなぜか体重を何度も測り直され、首も何も異常がないと言われてしまいます。
不可解なことは続き、薬を受け取りに行くと「この嘘つき野郎」と罵られ、ジェーンが黒い血を吐きながら苦しむ夢も見てしまいます。
さらに錯乱状態のトンがタンの家を訪れ、「あの写真はどうした!あの女が!」と喚き散らして姿を消すという出来事まで起きてしまいました。
タンは何かに気づき、密かに棚を探し出すようになります。
一方ジェーンは、あの白いモヤが写り込んだ校舎の写真から教室を特定し、その教室に一人向かいました。
そこで撮った写真の一枚には黒い影が写り、あの夜に撥ねてしまった女性の写真も見つけます。
写真にはネートナパー・チャンガームと書かれており、さらにネートとタンたちが一緒に写った写真も見つけてジェーンは顔を曇らせました。
タンはトンの自宅マンションを訪れますが室内にトンの姿はなく、部屋は酷く荒れていました。
散らばった写真には白いモヤがかかっており、タンは言葉を失います。
そして次の瞬間、不意に現れたトンがベランダから飛び降りてしまいます。
マンションは大騒ぎとなり、ジェーンも駆け付けました。
トンの妻は泣きながら「何か知っているんでしょ?友達4人で何かしたのね?他の2人も死んだわ」とタンに詰め寄りました。
タンは動揺し「何もわからない」と言います。
【転】心霊写真 のあらすじ③
ジェーンはタンに研究室で見つけた写真を見せ、この女性は誰かと尋ねます。
そこでタンは、ネートは元カノで別れるときに揉めたとジェーンに話しました。
「トンたちに相談したら俺に任せろと言われ、その後彼女の姿を見なくなった」と続けます。
「見なくなったのに何もしなかったの?」とジェーンはタンを責めますが、タンは「次は自分だ」と怯え、ジェーンはタンを抱きしめることしかできませんでした。
2人はネートに会いに行くことを決め、車で出発します。
しかし、道で血まみれのネートの姿を見てしまったり、道を尋ねた托鉢僧の横にいた子供が無表情でタンのことを見つめていたりと、タンは気味が悪くなってしまいます。
ネートの家に着きました。
母親が笑顔で2人を迎え入れてくれましたが、2人はそこでベッドに横たわるネートの遺体を見つけてしまいます。
2人はネートの自殺を聞かされ、火葬するよう母親を説得しますが母親は泣いて拒否します。
タンがネートの魂が写っていると思われる写真を見せると、母親は「大学で何かあったのね?」と聞きました。
タンは知らないと答え、でもこのままでは成仏できないと話すと、母親はようやく娘の火葬に同意します。
その夜、宿の部屋で彼女を愛していたのかとジェーンに聞かれたタンは、「いつか愛せると思っていた。
彼女は別れを認めず、自分は酷いことをした。
もう耐えれない、殺されてもいい」と涙を流します。
やることはやった、彼女もわかってくれたわよとジェーンは励ましますが、タンは「見捨てないでくれ」とつぶやきます。
深夜、タンは突然目が覚めました。
横ではジェーンが寝息を立てています。
突然足元の毛布が動いたと思ったらそこにネートが現れ、驚いたタンは部屋を飛び出しました。
タンは雨の中非常梯子を必死で下りますが、恐ろしい形相のネートが頭から梯子を下りてきて追い詰めてきます。
そして次の瞬間、タンは地面へと落下してしまいました。
【結】心霊写真 のあらすじ④
目が覚めるとそこは病院で、ジェーンが付き添っていました。
「今日、全てが終わるのよ」とジェーンは言い、2人はネートの火葬に立ち会います。
日常が戻り、ある日ジェーンはディーの写真屋へ行き、タンと行った旅行の写真を取り受け取ります。
しかしその中に、ソファーで眠るタンとジェーンに影が這い寄っている様子を写した写真がありました。
ジェーンが写真をよく見ると、影は部屋にある棚を覗き込んでいるように見えます。
ジェーンは急いで棚を調べ、隠してあったネガを見つけてそれを暗室で現像しました。
そして写真を見てジェーンは言葉を失います。
そこに写っていたのは、トンたちに暴行されているネートの姿でした。
撮影しているのはきっとタンで、何も知らなかったはずはありません。
帰って来たタンにジェーンは泣きながら怒りをぶつけます。
タンは、口封じに撮影しろと言われて従っただけだと言い訳しますが、あの時ネートは必死でタンに助けを求めていました。
「もう終わりよ」ジェーンは去って行きました。
一人になったタンは「出てこい!僕のことを愛してたんだろ?」と喚きながら、部屋のいたるところをポラロイドカメラで撮影していきます。
しかし何も写らず、カメラを床に叩きつけると、カメラのシャッターが押されフラッシュが光りました。
出てきた写真を見てタンは愕然とします。
写ったタンの肩に、ネートがまたがっているのです。
病院で何度も量り直された体重、取れない首の痛み、じっと見つめる托鉢僧…すべてが繋がりました。
「死者は愛する人に会いたがる」タンはフラフラとよろめきながら窓を突き破り、地面へと叩きつけられました。
—一命をとりとめたタンを見舞いに、ジェーンが病院を訪れます。
タンは廃人のようになってベッドに座っていました。
その姿を見て涙を流しながら、ジェーンは部屋に入ります。
その時、ドアのガラスに映ったタンの肩には、いまだネートがまたがったままでした。
心霊写真 を観た感想
日本でいう「リング」のようなタイを代表するホラー作品である本作は、同じアジアということもあってか、どこかジャパニーズホラーを観ているかのような雰囲気のある作品です。
恐怖演出がとにかく秀逸で、写真やフラッシュを介して姿を現す霊にハラハラドキドキが止まりません。
写真やカメラを効果的に使っていて、本当に素晴らしいです。
怖さはなかなかのもので、観終えた後はどっと疲れてしまいました。
最初と終わりでこうも主人公の立場が変わるというのも面白いですね。
終盤は霊の方を応援してしまうのですから。
ハッピーエンドとは言えない結末も自業自得感しかありません。
そして見事な伏線回収。
ハリウッドでリメイクされるほど話題になったのも納得の完成度&面白さです。
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