映画「眠る虫」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|金子由里奈

映画「眠る虫」

監督:金子由里奈 2020年9月にyurinakanekoから配給

眠る虫の主要登場人物

芹佳那子(松浦りょう)
ヒロイン。スリーピースバンドでギターを担当する。理屈よりも好奇心のままに突き動かされる 。

富田沙夜(高橋佳子)
佳那子のバンド仲間。創作にスピリチュアルな発想を取り入れる。

塚本しずえ(水木薫)
佳那子とは血縁も面識もない。見た目は老女だが足取りはしっかりとしている。

近藤茂雄(五頭岳夫)
しずえの元夫。警戒心がなく誰でもすぐに受け入れる。

けい(佐藤結良)
しずえの孫。幼いが死生観が確立している。

眠る虫 の簡単なあらすじ

新作のアイデアに行き詰まっていた芹佳那子に、偶然にもひらめきを与えてくれたのはバスで道連れになった塚本しずえです。

しずえをコッソリと尾行しているうちに見知らぬ町へと迷い込んでいき、彼女と縁のある近藤茂雄やけいと交流を深めていきます。

すでにしずえは亡くなっていたことが判明しますが、佳那子はこの不思議な体験を音楽活動に役立ていくのでした。

眠る虫 の起承転結

【起】眠る虫 のあらすじ①

幽霊の声を求めてさ迷う

新曲のレコーディングのためにバンドメンバーと集まっている芹佳那子でしたが、いまいち納得できる仕上がりになりません。

ベーシストの富田沙夜が言うには死んだ人の声のようなものを入れたいそうで、何かヒントになるものがないかと練習前の空き時間に散歩でもしてみることに。

特に目的地も決めることもなく路線バスに乗り込むと、斜め前の座席から鼻歌が聞こえてきました。

歌っているのは見ず知らずで高齢の女性、ボイスレコーダーのスイッチをONにしたのはあまりにも心地よかったからです。

乗客たちは次々と途中の停留所で降りていったために、日が暮れる頃には車内には佳那子と女性のふたりだけ。

練習をキャンセルして終点まで付き合いますが、女性はいつの間にか眠りこけてしまったようで動きません。

首からぶら下げているのは「塚本しずえ」と名前が書かれたバスカード、手のひらから転がり落ちたのは小さな木の箱。

木箱をしずえに返してあげようとしましたが、佳那子は運転手によって車外に降ろされてしまいます。

【承】眠る虫 のあらすじ②

名無しの町をレシートでリレー

箱の中には「正木商店」のレシートが挟まっていて、サンドイッチやお菓子なども販売している雑貨屋さんです。

ちょうど空腹を感じていた佳那子、つぶいちごジャムパンを購入するついでに店員にこの町の名前を聞いてみました。

レジ番をしていたのは無愛想な青年で何も教えてくれませんが、レシートの裏には「喫茶アイゼン」と記されています。

スマートフォンの地図アプリを起動してみるとここからおよそ2・7キロ、歩くと30分くらいはかかるでしょう。

腹ごしらえを済ませてから音声案内を頼りに徒歩でたどり着きましたが、すでにアイゼンは2カ月前の7月13日に閉店していたために誰もいません。

たまたま犬を連れて通りかかったのは近藤茂雄、このお店はしずえとふたりでコーヒーを飲んだ思い出の場所とのこと。

とっさに「塚本しずえの孫」だと名乗った佳那子を、特に怪しむ様子もなく自宅へと招き入れてくれました。

茂雄は一時期しずえと結婚していたそうで、ふたりの孫に当たるけいも遊びに来ています。

【転】眠る虫 のあらすじ③

思い出の映写会

例の木箱をみんなで開けてみると中から出てきたのは大小とさまざまな形をした石、そしてカセットテープがひとつ。

淀川、鴨川、武庫川、小さな川、大きな川… 石は絵を描くのが好きだったしずえがあちこちで拾ってきたものだそうです。

カセットテープをデッキにセットして再生してみますが、壊れているようで反応しません。

ケースに「お電話」という文字がうっすらと残っていることに気がついたのはけい、茂雄が大学時代に撮っていた映画のタイトルとまったく同じ。

2階の物置からオープンリールを引っ張り出してきた茂雄、フィルムには20代かと思われるしずえの姿が映っていました。

服装は白い麦わら帽子に黄色いワンピース、佳那子がバスで見た服装と一致します。

夢中で話し込んでいるうちにすっかり遅い時間になってしまったために、佳那子もけいと一緒に泊めてもらうことに。

布団を敷いておそろいのパジャマではしゃいでいるとけいの携帯電話にメッセージが、祖母のお葬式があるために明日の朝早くには帰らなければなりません。

【結】眠る虫 のあらすじ④

死者とのコラボ新譜をリリース

学生服に着替えたけいはセレモニー会館へ、参列する立場ではないことを弁えている佳那子は喪服を身に付けて近くの河原で待機。

葬儀の途中でコッソリと抜け出してきたけい、中は大人ばかりで息が詰まるのでしょう。

お昼休みになると式場で配られたおすしをラップにくるんで、お裾分けをしてくれました。

エビ、いくら、卵、ネギトロ…しずえが好きだったネタをふたりで摘まみながら、静かに川の流れを眺めます。

ブンブンと飛び回る虫を佳那子は追い払おうとしましたが、けいが言うには「おばあちゃんの魂」とのこと。

別れ際に清めの塩をもらった佳那子、スーパーで豚肉ロースを購入して夕食の味つけにでも使うつもりです。

レコーダーにはしずえの声がしっかりと録音されていて、アンプにつないでみると沙夜がイメージしていた通りの音色が響きます。

ようやく曲が完成して地方でのコンサートも決まった一向、新宿で深夜バスを予約して五井方面へ。

後部座席で佳那子がウトウトと目を閉じていると、虫の羽音のようなものが聞こえてくるのでした。

眠る虫 を観た感想

ガールズバンドのギタリスト役は松浦りょうさん、深く考えずに自分の直感を信じて進んでいく姿が魅力的でした。

一歩まちがえると周りが見えなくなってストーカーのようになってしまうような、危うさもあって見守ってあげたくなりますね。

そんな主人公の芹佳那子と夢のようなひとときを過ごすのが、写生を趣味にするアクティブなおばあさん・しずえ。

若い頃には映画監督を目指していたという茂雄との、離婚後も続くお友だちのような関係性もステキです。

ふたりの才能を受け継いでいるはずのけいと、ミュージシャンとして羽ばたくであろう佳那子の今後の活躍に期待がふくらみます。

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