映画「くそガキの告白」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|鈴木太一

映画「くそガキの告白」

監督:鈴木太一 2012年6月にSUMIDA制作所から配給

くそガキの告白の主要登場人物

馬場大輔(今野浩喜)
主人公。シナリオを書いているが映像にはなっていない。自分の納得する映画を世に送り出すのが夢。

木下桃子(田代さやか)
グラビアや女優として活動しているが伸び悩む。25歳だが焦りは感じていない。

花岡哲哉(辻岡正人)
大輔とは大学時代からの付き合い。若くして自主映画で賞に輝く。

城島正志(北山ひろし)
映画プロデューサー。芸能事務所に顔が利く。

母(石井トミコ)
大輔を女手ひとつで育てる。働かざるもの食うべからずが信条。

くそガキの告白 の簡単なあらすじ

30歳を過ぎても撮影現場で雑用ばかりを押し付けられている馬場大輔は、20代の半ばで芸能活動に行き詰まっている木下桃子と知り合います。

取材と称して大輔は桃子に急接近しますが、彼女が本当に好きな相手はこの業界で成功している花岡哲哉です。

大輔は桃子の告白する様子と自分とのキスシーンを題材に、初めての映画を撮り終えるのでした。

くそガキの告白 の起承転結

【起】くそガキの告白 のあらすじ①

裏方スタッフと端役キャストにも夢がある

映画監督の花岡哲哉のもとでアシスタントをしている馬場大輔に、撮影現場で話しかけてきたのは木下桃子です。

休憩時間にDVDのメイキング用の映像を撮っていた桃子は、キャストからスタッフまで全員にインタビューをして回りました。

大輔の番になって将来の目標について聞かれた時、とっさに監督になることと答えてしまいます。

もっと芝居ができるようになることが夢だという桃子も、20代の半ばになってからは女優の仕事がなかなか入ってきません。

完成した映像を持ってプロデューサーの城島正志にチェックをしてもらうと、画面には不可解なノイズがかかっていて奇妙な笑い声のようなものまで録音されていました。

城島はこの予期せぬハプニングを利用して、コメディタッチの作品をホラー・ドキュメンタリーに路線変更するつもりです。

花岡はCM制作の仕事が入っていて時間がありませんので、これといって予定のない大輔がロケ地や出演者にまつわるうわさ話を調査することになりました。

【承】くそガキの告白 のあらすじ②

映画で飯が食えるのはほんの一握り

城島との打ち合わせを喫茶店で済ませた大輔は、花岡が運転する車に拾ってもらってその足で居酒屋へと向かいます。

映像研究会の仲間たちが集まってすでにビールを片手に盛り上がっているようで、大輔も花岡もこのサークルの元メンバーです。

大学を卒業してからほとんどが一般企業に就職したり結婚したりで、今でも好きなことを本業にできているのは花岡しかいません。

宴会場の隅っこでひとりコーラを飲んでいる大輔は、大学生の頃から言い訳ばかりをして作品を完成させなかったことを笑われてしまいます。

自分にしか撮れないテーマを撮る、スクリーンの中でしか言えないことを言う。

突如として高らかに宣言した大輔は、すっかりしらけきってしまったその場を立ち去りました。

数日間のあいだ実家の自分の部屋でふて寝をしていた大輔は、フリーペーパーのアルバイト情報誌を持ってきた母にたたき起こされます。

長続きしそうな職場を選んでおいたという母でしたが、大輔は映画をあきらめるつもりはありません。

お金を稼いでこなければご飯は作らないと言われた大輔は、本格的に城島から依頼されていた件に取り掛かります。

【転】くそガキの告白 のあらすじ③

恋のおまじないがふたりの足かせに

メイキングの素材をノートパソコンで確認していた大輔は、最後のシーンで桃子の様子に異変が生じていることに気が付きました。

所属している事務所に問い合わせてみると最近になって体調を崩してずっと家に閉じ込もっているようで、アルバイトにも出勤していません。

城島が社長に直接に交渉してみるとすぐに自宅の住所を教えてもらえて、大輔はひとりでマンションを訪ねて気分転換に散歩へと連れ出します。

突然の訪問に困惑しながらも久しぶりに人と会って気持ちが楽になったという桃子が、心を込めてごちそうしてくれたのは手作りの肉じゃがです。

桃子の具合が悪くなったのは先日の映画の撮影場所となった廃虚のようなビルに、照る照るぼうずを置きっ放しにしてからでした。

好きな人の名前を書いて自分の血を染み込ませると恋が実るそうですが、良くある都市伝説のようなものでしょう。

一応大輔が現場まで足を運んで確認してみると、「花岡哲哉」と書かれたものが風に揺れています。

【結】くそガキの告白 のあらすじ④

はるか先の劇場公開に向けて

所属先の社長から桃子が引退を決めたという連絡を受け取った大輔は、8ミリカメラを持って彼女のマンションへと押し掛けました。

年下できれいなタレントはいくらでもいると嘆く桃子は、布団にくるまったままで出てきません。

自分の顔にコンプレックスがあって誰も好きにならないように生きてきた32年間、そんな自分にとって初めて好きになった相手が桃子。

告白のお手本を見せた大輔は、今度は桃子の告白を応援するつもりです。

花岡の映画を見て人生の目標ができたこと、生まれて初めて希望を持てたこと、映画に出て女優になりたいと思ったこと。

桃子の告白を聞いた瞬間に、大輔は本当に撮りたかったものをようやく見つけました。

男とキスを交わした女の子が恥ずかしそうにする顔が世界で1番好きだという大輔は、自分と桃子とのキスをカメラに収めて編集します。

ふたりが出会った撮影現場から一緒に肉じゃがを食べる映像、大声でケンカをする姿にラストショットは恥じらう桃子のアップ… 予告編を見せただけで城島には没にされてしまいましたが、初めてメガホンを取った自分の作品の出来栄えに大輔は大満足です。

くそガキの告白 を観た感想

いくつになっても夢を追いかけているパッとしない主人公、馬場大輔を今野浩喜が素のままで演じていました。

母親のお財布から千円札をこっそりと抜き取って映画館に行き、ポップコーンをつまみながらツイッターに感想を投稿する情けなさも憎めません。

同じ映画サークルで同じ夢を見ていたはずの花岡哲哉との、あまりのギャップに打ちのめされてしまう場面もほろ苦いです。

アイドルとして崖っぷちに立たされているのにどこかのんきな木下桃子役、田代さやかの純真な笑顔には癒やされるでしょう。

不器用な男女が初めてお互いの思いをぶつけ合う、ラストシーンが秀逸です。

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