映画「ROMA」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|アルフォンソ・キュアロン

映画「ROMA」

監督:アルフォンソ・キュアロン 2018年11月にNetflixから配給

ROMAの主要登場人物

クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)
本作の主人公。雇い主アントニオの元で住み込みで働く若い家政婦。

ソフィア(マリーナ・デ・タビラ)
アントニオの妻。アントニオとの関係がうまくいっていないことに悩む。

アントニオ(フェルナンド・グレディアガ)
クレオの雇い主で医者。家を空けがちである。

フェルミン(ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ)
クレオの恋人。武術に強い思い入れがある。

アデラ(ナンシー・ガルシア)
クレオと共にアントニオの元で働く家政婦。

ROMA の簡単なあらすじ

作品賞を含む10部門にノミネートされたアカデミー賞で監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3部門受賞。

アルフォンソ・キュアロン監督の半自伝的作品です。

舞台は1970年代のメキシコシティ。

家政婦のクレオは、ある白人家族のもとで住み込みで働いていました。

料理や洗濯、子ども達の送り迎えなど忙しい日々。

でも時にはボーイフレンドとデートをしたりと穏やかな日常を送っていました。

しかし、徐々に明らかになる家族間の亀裂や恋人との関係、そして政治的混乱がクレオの生活に変化をもたらします。

ROMA の起承転結

【起】ROMA のあらすじ①

クレオの忙しい日々

若い家政婦クレオは、雇い主であるアントニオ、アントニオの妻・ソフィアと4人の子ども達、そしてソフィアの母テレサが暮らす家で、同僚テレサと共に住み込みで働いていました。

料理に掃除、洗濯に子ども達の送り迎えと毎日忙しく働いています。

身の回りの世話を献身的にしてくれるクレオに、子ども達はとても懐いていて、クレオもまた彼らを可愛がっていました。

ある日医者であるアントニオは出張先のカナダから、一時的に帰宅するのですが、すぐにまた出かけていきます。

アントニオは「すぐに戻る」と告げるものの、見送るソフィアは何か浮かない表情。

2人の関係はあまり良い状況ではないのでした。

休暇をもらったクレオは、街でアデラと食事を楽しんだ後、ボーイフレンドであるフェルミンと落ち合い部屋を借りて時間を過ごすことに。

そこでフェルミンはクレオに武術を披露します。

両親を亡くしスラムで育った自分にとって武術は救いだったと語るフェルミンを、クレオは静かに微笑みながら見つめるのでした。

後日、映画館へ出かけたクレオとフェルミン。

クレオは自分が妊娠しているかもしれないことをフェルミンに告げます。

【承】ROMA のあらすじ②

離れていく気持ち

妊娠の可能性を告げられたフェルミンはトイレに行くと言って席を立ち、戻ってきません。

そして、その後フェルミンがクレオの前に現れることはありませんでした。

クレオはソフィアに妊娠のことを相談します。

クビになることを心配していたクレオですが、ソフィアは彼女をクビにせず、知り合いのいる病院に連れていきます。

診察の結果、クレオは妊娠三ヵ月だということがわかります。

妊娠が確定したクレオは新生児室に並ぶ新生児たちをぼんやりと眺めるのでした。

一方、相変わらずアントニオは家を空けていました。

ある日子ども達を映画に連れて行ったクレオは、街で若い女といるアントニオを目撃します。

アントニオとソフィアは別居状態にあったのです。

ソフィアは子ども達に別居のことを隠そうとしますが、電話を盗み聞きしていた次男だけは知ってしまいます。

ソフィアは他の兄弟には秘密にするように約束させます。

クレオはフェルミンが武術訓練場にいると聞き、会いに行きます。

しかしフェルミンはクレオのお腹の子が自分の子どもだと認めようとせず、クレオに二度と会いにこないようにと強く告げるのでした。

【転】ROMA のあらすじ③

鳴り響く銃声

クレオの出産が近づいた頃、ソフィアの母テレサはクレオを連れてベビーベッドを買いに家具屋へ向かいました。

家具屋へ行く途中で、デモ活動をしている学生たちの姿を目にします。

家具屋のある通りにも、政府に抗議するたくさんの学生たちが集まっており、警察官が配備されていました。

不穏な空気の中クレオがベビーベッドを見ていると、急に外が騒がしくなります。

窓際へ寄って外の様子をうかがうと、暴動が巻き起こっており、警察と民兵の若者たちが、抗議活動をする学生らを次々と射殺していました。

逃げ惑う学生たち。

クレオのいる店内へも、負傷した学生が逃げ込んできました。

しかし追ってきた民兵により、客たちの目の前で射殺されてしまいます。

何と民兵の中にはフェルミンの姿がありました。

クレオを見つけたフェルミンは、恐怖で呆然とする彼女に銃を向け、そして何も言わず去っていきました。

フェルミンが去った直後、クレオは破水します。

暴動による渋滞の中、やっとたどり着いた病院ですぐさま分娩室に運ばれるクレオ。

出産準備に移るものの、赤ちゃんの心音が聴こえず帝王切開が施されることになりました。

しかし懸命の処置もかなわず、死産という結果に。

亡骸を抱かせてもらったクレオは、その小さな体をなかなか離すことができませんでした。

【結】ROMA のあらすじ④

悲しみを超えて

ある日ソフィアは小さな車を購入します。

今まで乗っていた大きな車・ギャラクシーは引き取られることになるので、最後の記念にギャラクシーに乗って家族旅行へ行こうと提案します。

死産の一件から元気のないクレオも誘いました。

気が乗らないクレオでしたが、同僚のアデラや子どもたちに背中を押され、同行することに。

旅行先での夕食時、ソフィアは子どもたちに別居している事実を告げます。

そしてこの旅行中に、アントニオは自宅から私物を持ち去り、もう家には戻らないということも。

悲しむ子供たちにソフィアは「これも冒険よ」と笑顔を向けるのでした。

翌日ビーチへと向かった一行。

ソフィアは車の点検に行ったため、海で泳ぐ子供たちをクレオは一人で見守っていました。

その時、大きな波が子供たちを飲み込みます。

クレオは泳げないにも関わらず、海に飛び込んで助けに向かいます。

何とか無事に子供たちを助けることができたクレオ。

点検から戻り、異変に気づいたソフィアが駆けつけクレオに感謝を伝えました。

そんな中クレオが語ったのは、死んだ我が子についての告白でした。

「生まれてきてほしくなかったの」クレオが涙ながらにしぼり出した悔恨の言葉を聞いたソフィアは「私たちはクレオが大好きよ」と繰り返し告げ、皆で固く抱き合うのでした。

アントニオがいない自宅へ戻った一家。

皆が部屋の新しい割り当てについて話し合う中、クレオは早速洗濯の準備を始めます。

その頭上高くを飛行機が飛んでいきました。

ROMA を観た感想

全編モノクロで描かれる映像は美しく、淡々と描かれる日常風景にも見入ってしまいます。

クレオ達は暴動に遭遇しますが、全体像がわかりません。

そのわからなさが逆にリアルに感じました。

そして海で我が身を省みず子供たちを助けに大きな波に向かっていくクレオの姿を見て涙が出ました。

我が子への愛情を持てなかったことを悔いていたクレオですが、ソフィアの子供たちに対しては、自分の命を省みない程の愛を持っていたのです。

クレオは毎日忙しく働いていても、妊娠を告げた恋人に辛い仕打ちを受けても、この映画の様に静かに受け止めていきます。

降りかかる出来事に、憤慨せず絶望せず立ち止まらず生活を送ります。

旅行から戻った後、すぐに洗濯に取り掛かるクレオの姿に生きていく強さを感じました。

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