監督:ジョージ・クルーニー 2015年11月にプレシディオから配給
ミケランジェロ・プロジェクトの主要登場人物
フランク・ストークス(ジョージ・クルーニー)
主人公。大学で美術史を研究する。妻と幼い息子がいて平和と文化を愛する。
ジェームズ・グレンジャー(マット・デイモン)
フランクとは家族ぐるみの付き合いの学芸員。心臓病を抱えるため前線には出られない。
クレール・シモーヌ(ケイト・ブランシェット)
占領軍の秘書。収集家と親しく絵画にも詳しい。
ドナルド・ジェフリーズ( ヒュー・ボネヴィル)
元英国軍の中尉で歴史家。お酒が大好きで手の震えが止まらない。
ジャン=クロード・クレルモン(ジャン・デュジャルダン)
シャレー美術学校のデザイン科に勤務。視力が悪くて戦闘機のパイロットになれなかった。
ミケランジェロ・プロジェクト の簡単なあらすじ
アートの傑作の数々を戦火から守るために、フランク・ストークスはプロジェクトチームのリーダーに起用されます。
国境と国籍をこえて招集されたのはいずれもキュレーターやアーティストばかりで、戦闘に関しては素人ばかりです。
犠牲者を出しながらもフランクの下で力を合わせた彼らは、歴史的な文化財の保護を成し遂げるのでした。
ミケランジェロ・プロジェクト の起承転結
【起】ミケランジェロ・プロジェクト のあらすじ①
1943年8月、イタリアのミラノでは20トンの爆撃によってレオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐」が火事に遭っていました。
国宝の消失を防ぐために、大統領からサイン入りの委任状を受け取ったのはフランク・ストークス教授。
チーム名は「モニュメンツ・メン」、任務はナチスドイツに奪われた美術品を取り戻すことでメンバーは7人です。
とりあえずはイギリスで新兵として訓練が始まりますが、いずれも本職の軍人ではありません。
人生において失敗や挫折を経験している彼らですが、チャンスさえ与えられればその知識や技術を存分に生かすことができます。
1944年、フランスのノルマンディー地方に上陸した一向は建造物を破壊しないように要請しますが現場の指揮官には受け入れられません。
高い建物には敵兵が潜んでいることが多く、狙撃ポイントにもなりやすいのが原因でしょう。
戦況は連合軍が有利でナチスはパリから撤退を余儀なくされているそうですが、略奪品はひと足先にドイツの町・ジーゲンに輸送されていました。
【承】ミケランジェロ・プロジェクト のあらすじ②
メトロポリタン美術館で主任学芸員をしているジェームズ・グレンジャーは、占領中に美術館で働いていたクレール・シモーヌに面会に行きました。
「ナチ協力者」の汚名を着せられて監獄に入れられている彼女でしたが、弟はレジスタンス運動に加担しているとか。
恩赦を条件にモニュメンツ・メンに協力することになったシモーヌは、極秘計画「総統美術館」について打ち明けます。
権力を握ったアドルフ・ヒトラーでしたが、19歳の時に2度美術学校に落第したコンプレックスはいまだに拭えていません。
そんなヒトラーにとっては最後の野望になり、建設予定地は故郷のリンツで展示スペースは世界でも最大級になるでしょう。
ワルシャワやアムステルダムから彫刻が次々と運び出されていきますが、その中でも特に価値があるのが聖母マリアが幼子イエスを抱いたミケランジェロの作品です。
聖母子像の行方を単独で追っているのはドナルド・ジェフリーズ、アルコール依存性で軍を除隊になり身内からもやっかい者として扱われていました。
そのドナルドが射殺されたのはベルギー北西部のブルージュ、立派な最期だったとに父親から手紙で感謝されましたがフランクは素直に喜べません。
【転】ミケランジェロ・プロジェクト のあらすじ③
ジーゲンの銅山で1万6000点もの美術品を発見したフランクたちでしたが、ジェフリーズが命をかけた聖母子像はありません。
ジェフリーズに続いてシャーレ美術学校のデザイン科主任ジャン=クロード・クレルモンも腹部を撃たれて即死、心臓に持病があるジェームズまで駆り出されることに。
いよいよ移動命令が下ってパリを離れる前夜、シモーヌのアパートに招かれたジェームズはワインとクロワッサンで乾杯をしました。
ローゼンベルク、ゲーリング、ローゼ、フォン・ベール… シモーヌがひそかに持ち出した写真には特務機関の幹部たちが写っていて、いずれもユダヤ人の個人資産を没収していた面々です。
貨物列車の目録と台帳を照らし合わせると、元の持ち主と奪った人物の名前が浮かび上がるように色分けしてあります。
ここから先はモニュメンツ・メンに託すとシモーヌ、総統美術館を阻止して絶対に聖母子像を見つけるとジェームズ。
母国で待つふたりの娘の顔が浮かんだために、泊まっていってもいいという彼女の誘いだけは丁重にお断りをしておきました。
【結】ミケランジェロ・プロジェクト のあらすじ④
メルカース岩塩坑の地下360メートルに埋まっていた金塊100トンが、アメリカ側に渡ったことでドイツには大きな痛手です。
追い詰められたヒトラーが署名した書類は「ネロ指令」、自分が死んだ場合は橋、鉄道、公文書、西洋美術のすべてを焼却しろとのこと。
さらには賠償金の支払いに苦しんでいたソ連が戦利品の強奪隊を結成、明日には侵攻が開始されるでしょう。
金塊の回収が終わった途端に多くの兵隊が帰国の途に就きますが、フランクとジェームズは岩塩坑の奥深くにある隠し部屋を目指しました。
シモーヌから預かった収蔵品カタログを片手に、1点1点をチェックしているとついにボロボロの布の中から真っ白に輝く聖母子像が現れます。
ソ連軍がこの地に襲来した時には全てが運び出された後で、風に揺れている星条旗しか残っていません。
ジェームズはシモーヌの待つパリへ、聖母子像は一般公開された後で大聖堂へ、フランクは学会へ。
この戦いによって現代絵画の損失も多く、モニュメンツ・メンもジェフリーズとジャンのふたりを失っています。
命より美術が尊いのかという学者たちの問いかけに、美術こそが命の蓄積だとフランクは答えるのでした。
ミケランジェロ・プロジェクト を観た感想
史実に基づいて脚色されたというストーリーには驚かされるばかりで、刻一刻と変化する戦況がダイナミックに映し出されていきます。
主人公のフランク・ストークスを筆頭に、実在する人物をモデルにした登場キャラクターたちも魅力的でした。
レンブラントやルーベンスなどの巨匠、謎と逸話を秘めた「モナリザの微笑み」からオークションを騒がす「ひまわり」まで。
今では当たり前のように美術館で鑑賞できる名画が、彼らの活躍がなければ火炎放射器で焼き払われていたかもしれないと思うとゾッとしますね。
偉大な芸術品は一部の権力者が保有するのではなく、無数の市民たちによって共有されることで初めて価値が生まれるはずです。
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