映画「幼獣マメシバ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|亀井亨

映画「幼獣マメシバ」

監督:亀井亨 2009年6月にAMGエンタテインメントから配給

幼獣マメシバの主要登場人物

芝二郎(佐藤二朗)
主人公。繊細で傷つきやすく働いたことがない。趣味はブログの更新で好物はうまい棒。

巻可蓮(安達祐実)
「マキドッグパーク」の元経営者。地域のボランティアに積極的で困っている人を放っておけない。

芝良男(笹野高史)
二郎の父で先日葬儀が済んだばかり。出不精で旅行も嫌い。

芝鞠子(藤田弓子)
ひとり息子の二郎を甘やかして育ててきた。現在の消息は不明。

笹波幸四郎(西田幸治)
サラリーマンを辞めてドッグカフェのオーナーに転身。 動物愛護家で人情味がある。

幼獣マメシバ の簡単なあらすじ

35歳になっても実家から3キロ圏内で生活していた芝二郎の父親が亡くなり、母は失踪して後に残されたのは1匹の犬「一郎」だけです。

嫌々ながらも一郎の世話に明け暮れているうちに、二郎は初対面の人ともコミュニケーションが取れるようになり行動範囲も広がっていきます。

たくさんの協力者と両親が仕掛けたドッキリのおかげで、二郎は立派にひとり立ちしていくのでした。

幼獣マメシバ の起承転結

【起】幼獣マメシバ のあらすじ①

父の足かせと消えた母

富士見町の大地主・芝良男の四十九日には親戚一同が集まっていましたが、息子の二郎と妻の鞠子の姿だけがありません。

県道の先は悪口を言う人のすみか、川の向こう岸ではみんながいがみ合っている、国道をこえると2度と人を信じられなくなる。

二郎が自宅から出なくなったのは、幼い頃に良男からさんざん脅されたことが原因です。

この辺一帯の土地はすべてが芝家の名義になっていますが、ゆくゆくは二郎が相続人となるでしょう。

二郎にお金の管理ができるとは思えないおじやいとこたちは、権利書や通帳のありかを預かろうかと申し出てきました。

周りからあれこれと命令されると意固地になってしまう二郎は、貝のように2階の自室に閉じ込もってしまいます。

本来であれば喪主を務めるはずの鞠子も、半月ほど前に突如としていなくなってしまい帰ってきません。

法事が終わった後に二郎が近所の駄菓子屋に出かけると、後ろからついてきたのは1匹の子犬です。

首輪には書き込まれていたのはこの犬の名前「一郎」と、「仲良くしてあげて」という鞠子のメッセージ。

線路の向こうにあるペットショップ「ZOO」で相談に乗ってもらうために、二郎は勇気を振りしぼって踏み切りを渡りました。

【承】幼獣マメシバ のあらすじ②

犬に引かれて山梨へ

ZOOのカウンターにいた店員は、犬を手放したい人と飼いたい人の交流会が富士吉田市で行われていることを教えてくれました。

山梨県には幻のうまい棒があると聞いて、二郎は生まれて初めて富士見町の外に出ます。

開催地は富士吉田の多目的公園で、このチャリティーイベント「犬と音楽の調べ」を手伝っているのが巻可蓮です。

日本国内で1年間にたったの約500匹ほどしか生まれない「マメシバ」という犬種、種付け料は50000円。

一郎が希少な品種だと分かった途端に、二郎は手放すのが惜しくなってしまいました。

その日は里親希望者も見つからずにお開きになってしまい、遅くなったために河口湖の湖畔にある可蓮の家に宿泊します。

可蓮のおじ・晴男が言うには富士山の5合目辺りにはマメシバよりももっと珍しい、歌うシバ犬が生息しているそうです。

3日3晩歩いて富士の樹海の反対側に抜けた、犬の水泳大会で優勝した、河口湖には恐竜がいる… 若い頃からホラ話で周りを騒がせてきた晴男をほとんどの人が信じていませんが、ドッグパークの経営に失敗した時に助けてくれた恩があるために可蓮だけは味方です。

【転】幼獣マメシバ のあらすじ③

初めてのバイトで幸運のわらしべを手に入れる

可蓮と晴男を除いた巻一家からあまり好意的ではないおもてなしを受けていた二郎は、一郎を放ったらかしにして出ていってしまいました。

富士見町までの帰り道もろくに分からないままで、独りでは電車の乗り継ぎはおろかキップも買えません。

駅構内で不審者と誤解されて留置場で1泊することになった二郎に声をかけてくれたのは、富士の裾野で捨てられた犬を保護しながらカフェ「わらしべ」の店主をしている笹波幸四郎です。

このお店に住み込みで雇ってもらうことにした二郎は、一郎のことも鞠子のことも考えないようにします。

掃除や簡単な接客の合間に犬たちを運動させている時に、一郎と一緒に歩いている見知らぬ女性を目撃しました。

名前は次郎丸ミサ、務めていた旅館「あけぼの荘」が廃業してしまったこと、最後の宿泊客が鞠子。

次の勤め先も見つからずに借金もあって困っていた時に、鞠子から1日3000円でアルバイトを頼まれます。

ここ3カ月ほど同じ時間に決まったコースを一郎と一緒に散歩して、次郎が来るのをひたすらに待っていたそうです。

【結】幼獣マメシバ のあらすじ④

半径3キロ男が地球の裏側に到達

一郎を二郎に返したミサは次の仕事を探すためにわらしべを去っていきましたが、登山客が置き忘れていったというマッチ箱をくれました。

箱のパッケージに記載されている「なごみ休憩処 芝小屋」に行ってみるために、笹波に登山用のシューズやトレッキングポールを用意してもらいます。

芝小屋の入り口から顔を出したのは死んだはずの良男で、すべては二郎を1人前の大人に成長させるために鞠子と立てた計画です。

ここは二郎が生まれたばかりの頃に来た夫婦にとっての思い出の場所でもありますが、鞠子の姿は小屋の中にもありません。

良男は迷惑をかけたきょうだいやおいたちに謝りに行くため山を降りますが、二郎は鞠子を探し続けます。

良男のもとに小包みが届いたのは1年近くたった頃で、消印はアルゼンチンです。

中には1冊の雑誌が入っていて、日本人の看護師「マリコ」の活躍が写真付きで記事になっています。

現地の子どもたちに囲まれて笑顔でいっぱいの中年女性の背後には、1匹のマメシバが走り回っているのでした。

幼獣マメシバ を観た感想

時代劇のような古めかしい口調ではなす癖のあるキャラクター・芝二郎に、佐藤二朗が素のままで成りきっていました。

自分だけの世界に閉じ込もっていた二郎を外へと連れ出す役割りを担う、小さな珍客・一郎がかわいらしくて犬好きには堪らないでしょう。

道中で親切に一郎に手を差し伸べてくれる人たちも少々訳ありな過去を抱えていで、完璧な人はいません。

無責任な飼い主への鋭いメッセージや、動物と人間とのより良い関係性についても考えさせられます。

30年以上ものあいだ実家から出られなかったニート中年の、ささやかな成長を見守ってあげてください。

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