監督:エドガー・ライト 2021年12月にパルコ=ユニバーサル映画から配給
ラストナイト・イン・ソーホーの主要登場人物
エロイーズ・ターナー(トーマシン・マッケンジー)
本作の主人公。愛称はエリー。“第六感”を持っており、たびたび亡くなった母親を見かけている。ロンドンの専門学校に通い始めるもなじめずにいた。夢の中でしばしば1960年代に行っている。
サンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)
エロイーズが見る夢の中で歌手として活動している1960年代の女性。本名はアレクサンドラ。
ジャック(マット・スミス)
サンディたちナイトクラブの女性のまとめ役。サンディとは恋に落ちるが…
ミス・コリンズ(ダイアナ・リグ)
エロイーズがロンドンで借りたアパートの大家。
銀髪の男(テレンス・スタンプ)
たびたびエロイーズの前に現れる謎の老人。
ラストナイト・イン・ソーホー の簡単なあらすじ
ファッションデザイナーになるという夢を抱いて、大都会ロンドンへやってきたエロイーズ。
しかし同居人ともロンドンという街にもうまくなじめず、つらい日々を過ごすことになってしまいました。
やがて自らが持つ“第六感”によって、現在と過去を行き来する体験を重ねるようになり、次第に過去が大きくエロイーズにのしかかってくるようになっていきます。
1960年代の音楽と華やかな映像美、そして幻想的な雰囲気が溢れるサスペンスホラー作品です。
ラストナイト・イン・ソーホー の起承転結
【起】ラストナイト・イン・ソーホー のあらすじ①
イギリス・コーンウォールの田舎町に住むエロイーズ、愛称エリーの夢はファッションデザイナー。
1960年代の音楽やファッションが大好きで、家の中で手作りの服に身を包み、ご機嫌で踊っています。
母を亡くしてから祖母と2人で暮らしているエリーですが、彼女には不思議な力があり、亡くなった母を見ることができました。
母親はしばしばエリーの前に現れ、優しく見守ってくれます。
そんなある日、エリーの元にロンドンのデザイン専門学校から合格通知が届きました。
大喜びして舞い上がるエリーですが、祖母ペギーは心配そうに「ロンドンは人を飲み込む町よ。
あなたのお母さんは負けてしまった。」
と言います。
数日後、祖母に別れを告げエリーはロンドンへと向かいました。
ロンドンに到着したエリーは、そのきらびやかな街並みに心を躍らせます。
しかし乗ったタクシーの運転手からセクハラじみたことを言われ、都会の恐ろしさを実感することになりました。
エリーはタクシーを降りて急いで専門学校の寮に向かいます。
寮でのルームメイト、ジョカスタはブランドの服で身を包んだイマドキ女子で、田舎者のエリーを嫌みたっぷりに出迎えます。
ジョカスタの友人たちも同様で、到着早々エリーはとても嫌な気持ちにさせられてしまいました。
夜、ジョカスタたちに誘われバーに行ったエリーですが、周りはみな遊び慣れた若者ばかりで居場所がありません。
逃げるようにトイレの個室へと入りましたが、そこへ入って来たジョカスタたちがエリーの悪口を言うのを聞いてしまい、ショックを受けてバーを後にしました。
帰り道、銀髪の老人と視線が合いました。
ただそれだけですが、エリーはどこか不思議な感覚に襲われます。
寮の部屋に戻ってもジョカスタが男を連れ込むなどし、どこにも居場所がないと感じたエリーは、たまたま見かけた入居者募集張り紙にあったワンルームを借りることにしました。
【承】ラストナイト・イン・ソーホー のあらすじ②
早速ソーホーにある家を訪れると、家主のミス・コリンズが出迎えます。
部屋は最上階にありました。
とても古い建物ではありましたが寮と比べると格段に居心地が良さそうで、レトロな雰囲気も気に入ってエリーは入居を決めます。
ミス・コリンズからは、夜8時以降の男性の立ち入りは禁止ということを約束させられます。
部屋中に近くの建物の光が入り込みますが、エリーは落ち着いて眠ることができました。
そして夢を見ます。
1960年代のロンドン、華やかなナイトクラブ「カフェ・ド・パリス。」
大きな鏡に映るのは自分ではなくブロンドヘアが美しい大人っぽい女性。
とてもオシャレなドレスに身を包んでいます。
彼女はアレクサンドラ、愛称サンディといい、このナイトクラブで働きたいとカウンターの従業員に声をかけます。
マネージャーのジャックという男を紹介され、2人はお互い惹かれあうようにキスをし、ダンスを楽しみました。
エリーはそれを自分の体験のように感じながら、その世界から、サンディから目が離せません。
そして2人はサンディの部屋で一夜を過ごします。
それはどこかエリーの借りた部屋に似ていました。
……エリーが目を覚ますとそこはワンルームのベッドの上でした。
翌日、学校に登校したエリーですがサンディのことが頭から離れず、サンディが着ていたドレスをモチーフにデザイン画を描きました。
ジョカスタから「あら、昨日は誰かと楽しんだの?」と小馬鹿にされます。
鏡を見ると首元にキスマークのような赤い痣があり、それはまるで昨夜夢の中でジャックがサンディにつけたもののようでした。
エリーは不思議な気持ちになります。
そしてそれから毎晩のように60年代にタイムスリップし、サンディの生活を見守るようになっていきます。
美しく自信に溢れたサンディに、エリーは次第に憧れるようになっていきました。
現実でもサンディのように髪を金髪にし、メイクも変えてイメチェンします。
【転】ラストナイト・イン・ソーホー のあらすじ③
サンディを模したデザイン画は講師たちから高評価で、ジョンという男友達もできて充実した日々を送るようになりました。
しかし家賃も払わなければならないので、エリーは夜はパブでバイトをすることにします。
するとある日、あの銀髪の老人が話しかけてきました。
「私はこの町の女のことは全て知っているんだ。」
意味ありげな言葉にエリーは戸惑います。
そしてそれから楽しかった60年代へのタイムスリップは、次第に暗い雰囲気に包まれていくことになりました。
歌手として華やかに活躍していると思っていたサンディが、ストリップダンサーとして踊らされているのを目の当たりにするのです。
ジャックは彼女に客の相手をするよう強要していました。
入れ替わり立ち替わりサンディに声をかける男たち。
適当な本名を答えながら流すサンディでしたが、ある1人の客からは「君はこんなところにいる人間じゃない」と言われます。
サンディが客の男を部屋に連れてきたところで、エリーは悲鳴を上げて目を覚ましました。
そして部屋の中に見知らぬ男たちの亡霊のような人影を見るようになり、サンディ同様エリーも衰弱していきます。
学校でもうまくデザイン画が描けなくなってしまいました。
見かねたジョンがエリーをハロウィンパーティに誘い、2人は仮装をして楽しみますが、エリーは家主との約束を破ってジョンを夜自分の部屋へ入れてしまいました。
いい雰囲気になった2人ですが、その時サンディがジャックに襲われ、血まみれでもみ合う幻影を見てしまい、悲鳴を上げてしまいます。
その悲鳴で男を連れ込んでいることがミス・コリンズにばれてしまい、ひどく怒られてしまいました。
翌日謝罪に行き、あの部屋で誰か亡くなっているのかと訊ねますが、ミス・コリンズは何も答えません。
エリーはジョンと共に昔の事件について図書館で調べ始めますが、そこにも男たちの亡霊が姿を現し、パニックになったエリーは慌てて立ち去ります。
【結】ラストナイト・イン・ソーホー のあらすじ④
エリーはよく見かける銀髪の老人がジャックではないかと思うようになりました。
そして警察に駆け込んで事情を話しますがあしらわれてしまいます。
その後パブに来ていた銀髪の老人にサンディを殺したことを問い詰めますが、老人は「彼女に起こったことは彼女自身が招いたことだ」と言って去ろうとします。
その瞬間、老人は車に撥ねられて死んでしまいました。
集まった人から彼はジャックではなく、この町で働いていた元刑事だと聞かされてエリーはショックを受けてしまいます。
サンディを気遣って声をかけていた、あの男性だったのです。
失意のエリーは、ミス・コリンズに退去したいと告げに行きます。
迎え入れたミス・コリンズはお茶と郵便物を出してくれました。
郵便物の一つの宛名はアレクサンドラ…「そうそう、警察が来たわよ」と笑顔で話すミス・コリンズは、あの部屋でかつて殺人が起きたこと、自身がサンディであることを告げます。
あのサンディとジャックがもみ合う幻影は、実はサンディがジャックを殺していたところだったのです。
さらに自分を買った男たちも殺していたのです。
エリーの意識が朦朧としてきました。
外で待っていたジョンが様子を見に入ってきますが、ミス・コリンズ=サンディに襲われてしまいました。
サンディは部屋に火を放ちます。
エリーはなんとか這いながら自分の部屋へ逃げます。
その時あの男たちの亡霊が現れ、「あの女を殺してくれ」と訴えてきました。
ジャックも現れ、それを見たサンディは自らもあの男たちのような怪物になってしまったことを悟ります。
そしてエリーに逃げるように伝えました。
ベッドに腰かけたサンディは炎にのまれていきます。
エリーはジョンを連れて建物から逃げ出しました。
数日後、エリーのデザインした洋服でファッションショーが開かれました。
祖母とジョンが見守る中、エリーが見つめた鏡には微笑む母とサンディの姿が…エリーはそっと微笑み返しました。
ラストナイト・イン・ソーホー を観た感想
主人公エリー同様、現代と1960年代のロンドンを行き来しながら、サスペンスのようなホラーのようななんとも形容しがたい世界へ観るものを引きずり込む作品です。
かなり斬新な脚本はさすがエドガー・ライト監督、見事としか言えません。
エリーが鏡を通して自身をサンディと重ねていくシーンはかなり印象的です。
最初はエリーと通じ合えていたようなサンディが、徐々に心を病んで離れていく演出もとても良かったです。
ラスト、サンディが微笑みかけてくれた時に彼女が全てから解放されたのだと感じました。
音楽と映像も素晴らしく、心地良い雰囲気の作品でした。
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