映画「百円の恋」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|武正晴

映画「百円の恋」

監督:武正晴 2014年12月にSPOTTED PRODUCTIONSから配給

百円の恋の主要登場人物

斎藤一子(安藤サクラ)
ヒロイン。働いていないために昼夜逆転の生活を送る。ファッションにもダイエットにも興味なし。

狩野祐二(新井浩文)
落ち目のプロボクサー。無口で感情を露にしない。好物はバナナ。

斎藤二三子(早織)
一子の妹。働き者だが気性が激しい。

岡野淳(宇野祥平)
一子の上司。1日18時間は働いていて心身ともに限界。

佐田和弘(沖田裕樹)
岡野の後任。社内規則を重視して不正は許さない。

百円の恋 の簡単なあらすじ

実家でニート生活を送っていた斎藤一子は、ある時に妹の二三子とケンカをしてひとり暮らしと100円ショップでのアルバイトを始めます。

常連客の狩野祐二の影響でボクシングジムに入会した一子は、プロ試験にも合格して試合に出場します。

結果は3ラウンドでKOでしたが一子は充足感に満ち足りて、プライベートでも親しくなった狩野と再出発を目指すのでした。

百円の恋 の起承転結

【起】百円の恋 のあらすじ①

弁当屋から100均に一時避難

「斎藤亭」は工事現場の作業員や警備員たちが買いに来るために、真夜中までオープンしているお弁当屋さんです。

主に切り盛りしているのは店主の佳子と次女・二三子のふたりで、長女の一子はほとんど店を手伝いません。

二三子がピリピリとしているのは、夫との仲がうまくいかずに1週間前に息子の太郎を連れて帰ってきたばかりだからです。

夜遅くまで太郎とお菓子を食べながらテレビゲームをしていて、昼前に起きてくる一子を見てついに怒りを爆発させました。

このままではふたりの娘が殺し合いを始めてしまうと心配した佳子は、一万円札が何枚か入った封筒を一子に手渡します。

受け取ったお金で6畳1間のワンルームアパートに部屋を借りた一子が、アルバイトの面接に向かった先は「百円生活」というディスカウントショップです。

22時から朝の6時までは時給が1200円と条件が良く、週4日ほど出勤すれば12万円ほどにはなるでしょう。

馴れないながらも店長の岡野淳からレジの打ち方を習って、同僚と一緒に冷凍食品や飲料の品出しに追われていました。

【承】百円の恋 のあらすじ②

転がり込んできた元ボクサー

狩野祐二は毎晩のように大量のバナナを買っていくお客さんで、ある時に一子が忘れものを届けに追いかけるとボクシングジムに入っていきました。

狩野からデートに誘われた一子は、バイトが入っていない2日後にふたりで遊園地や海水浴場をブラブラとします。

狩野は木下ジムに所属するプロのボクサーですが、通算成績は4勝10敗とそれほど振るいません。

チケットをもらった一子は試合を見に行きましたが第1ラウンドでレフリーストップ、狩野はこの日で引退するつもりです。

リングの上で力の限りに殴り合う狩野の姿に魅せられてしまった一子は、練習生として木下ジムに入会しました。

ボクシングを辞めた狩野はフリーペーパーの求人誌で仕事を探していますが、37歳で運転免許も持っていないためになかなか就職が決まりません。

酔いつぶれてアパートに転がり込んできた狩野と、一子はそのまま一夜をともにしました。

食事を作ったり身の回りの世話を焼いていましたが、干渉されるのが嫌な狩野はふらりと居なくなってしまいます。

【転】百円の恋 のあらすじ③

最後のチャンスを一発で掴む

トレーニングを頑張って体重を54キロまで落とした一子は、会長の木下に頼み込んでプロテストを受けることにしました。

今年32歳になる一子にとっては年齢制限のギリギリでしたが、筆記試験とシャドーボクシングの実技を突破して合格します。

百円生活では岡野が過労で倒れてから本社から佐田和弘という社員が派遣されてきましたが、何かにつけて口うるさい性格です。

バックヤードに廃棄されていた賞味期限切れの食品を困っている人たちに分け与えていた一子のことも、佐田は気に入りません。

ある日の休憩時間に佐田の顔面にジャブを食らわせてしまった一子は解雇となり、斎藤亭に戻ることにしました。

佳子はつい最近に油で汚れた調理場の床に足を滑らせて骨折してしまい、父親の隆夫は日中どこかへ出掛けていてほとんど戦力になりません。

店を実質的に仕切っている二三子は手際が悪い一子に声を荒げることも多いですが、姉妹は何とか力を合わせて家業を支えています。

【結】百円の恋 のあらすじ④

敗戦の果てにはロマンスのゴングが鳴る

夕暮れ時に一子が店番をしていると狩野がのり弁当を買いに来たために、カウンターを飛び出して追いかけました。

警備員の仕事が見つかったという狩野に、一子は今度の日曜日にケガで出場停止となったボクサーの代役で出場する試合のチケットを渡します。

ボクサーが花道からリングへと歩いていく時にそれぞれの好きな曲を流すのがお約束ですが、一子が選んだのは百円生活の店内で流れていたBGMです。

全品が掛け値なしの100円で消費税もなし、それ以上はもらわないもらえない、安くて安くて日本で1番。

対戦相手はこれまでの4戦をすべてKOで勝ち抜いていて、どうせ100円程度の女だという一子には敵うはずがありません。

デビュー戦は3ラウンドまで立っているのがやっとで、一子はレフリーがテンカウントを宣告する瞬間に客席にいた狩野と視線を合わせます。

試合が終わってボコボコになった顔で泣きながら会場から出てきた一子の手を握った狩野は、おいしいものを食べさせてあげるために夜の街へと連れていくのでした。

百円の恋 を観た感想

オープニングでは主人公の斎藤一子が薄汚れたスウェットから半分おしりを出しながら、カップ酒と柿の種を片手に格闘ゲームに夢中です。

午後10時を過ぎているのに店の余りものの揚げ物を漁ったり、そのままの格好でスナック菓子を買いに行く姿からは恋の予感は伝わってきません。

自転車に乗ってふらふらと100円ストアに向かう途中で、街灯の中に浮かび上がっているボクシングジムは異世界のようでした。

初めて心から打ち込むことができるボクシングを見つけた一子は、体形のシェイプアップだけでなく見違えるように生き生きとした表情に変わっています。

勝負の世界の厳しさに打ちのめされた一子の側に寄り添う、狩野祐二の優しさにも癒やされるでしょう。

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