映画「借りぐらしのアリエッティ」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|米林宏昌

映画「借りぐらしのアリエッティ」

監督:米林宏昌 2010年7月に東宝から配給

借りぐらしのアリエッティの主要登場人物

アリエッティ(志田未来)
本作の主人公。翔が過ごす屋敷の床下で両親と暮らしている、14歳の小人の少女。好奇心旺盛。

翔(神木隆之介)
12歳の人間の少年。生まれつき心臓が悪く、手術の前の療養のためアリエッティが暮らす屋敷にやってくる。自分の体調に対して悲観的。

ホミリー(大竹しのぶ)
アリエッティの母親。借り物を上手に使って生活を切り盛りしている。とても心配性。

ポッド(三浦友和)
アリエッティの父親。寡黙で冷静だが、勇敢な大黒柱。

ハル(樹木希林)
翔が過ごす屋敷の家政婦。アリエッティたち小人の存在を疑い、捕まえることに執念を燃やしている。

借りぐらしのアリエッティ の簡単なあらすじ

ある屋敷の床下で「借り」をしながら暮らすアリエッティたち家族。

絶対に人間に姿を見られてはいけない生活は緊張感はあるものの、「借りたもの」を工夫して暮らす生活は幸せなものでした。

しかしそんな穏やかな日々も、ある少年が屋敷にやってきたことで少しずつ変化し始めます。

そしてついに、アリエッティたちが屋敷で暮らせなくなるほどの事態に見舞われてしまいます。

借りぐらしのアリエッティ の起承転結

【起】借りぐらしのアリエッティ のあらすじ①

初めての「借り」

郊外に立つ古い屋敷。

そこでは主人の牧貞子と家政婦のハル、そして猫のニーヤが暮らしていました。

さらに小人のアリエッティとその両親も、床下でひっそりと生活していました。

そこへ翔という少年がやってきました。

翔は持病である心臓の手術を1週間後に控えており、療養のために大叔母である貞子の屋敷にやってきたのです。

翔は庭でニーヤの攻撃から逃げているアリエッティを目撃しました。

アリエッティは母親のホミリーと父親のポッドに、屋敷に新しく人間の少年が来たようだと話しました。

少し警戒しながらも、その日の夜アリエッティとポッドは屋敷に忍び込み「借り」をすることにします。

アリエッティたち小人は昔から、気づかれないように人間の家から様々な物を「借り」て暮らし続けています。

アリエッティはポッドから認められ、今日初めて「借り」に参加することが許されたのです。

「借り」がスタートし、アリエッティはポッドに続いて人間の生活スペースに慎重に入り込みます。

初めて見る世界にアリエッティは圧倒されました。

そしてホミリーからリクエストされていた角砂糖をポッドが手に入れ、アリエッティがバッグに収めます。

落ちていたマチ針も手に入れてアリエッティはご満悦。

続いてティッシュを箱から引き抜こうと手をかけました。

その瞬間アリエッティは固まってしまいました。

ベッドに横たわる翔がアリエッティの姿をじっとみつめていたのです。

翔は「怖がらないで」とつぶやき、昼間に庭でアリエッティを見かけたことを話します。

「借り」は中止になり、2人は床下に戻ろうとしましたが、アリエッティはバッグから角砂糖を落としてしまいました。

戻ったアリエッティは昼間にも姿を見られていたことを謝りました。

ポッドは慰めますが、姿を見られたことは小人にとって一大事。

しばらく人間の様子を見ようと言いました。

ホミリーは2人が無事に帰って来てくれたことにほっと胸をなでおろします。

【承】借りぐらしのアリエッティ のあらすじ②

見られてしまった

翌日アリエッティたちが使っている軒下の通風口に、アリエッティが落とした角砂糖と手紙が置かれていました。

アリエッティは警戒して手を出しません。

ホミリーは引っ越しを覚悟しふさぎ込んでいました。

放置された角砂糖に蟻が群がりはじめました。

アリエッティは角砂糖と手紙をバッグにおさめます。

手紙には一言「わすれもの」と書かれていました。

アリエッティは意を決したように外壁の蔦を伝って2階の翔の部屋の窓に向かいます。

そして砂糖を返し、「もう関わらないで」ときつく言い放ちました。

翔は驚きながらもアリエッティが来てくれたことが嬉しくて、名前を聞き、姿を見せてくれないかとお願いします。

その時飛んできたカラスがアリエッティに襲いかかりました。

翔は急いでカラスを追い払おうとし、アリエッティを葉っぱごと抱えて部屋に隠します。

騒ぎを聞きつけたハルが飛んできてカラスを追い払いました。

急にカラスが襲ってくるなんておかしいと不審がるハルでしたが、翔がうまくごまかし、ハルは去っていきました。

アリエッティは床下に戻ります。

アリエッティの行動を知っていたポッドはきつく注意し、新しい引っ越し先を探しに行くため家を出て行ってしまいました。

その夜、翔は部屋にあるドールハウスについて貞子に訊ねました。

ドールハウスはとても精巧に作られていて、なんと電気も通るという完成度の高いものでした。

貞子によると、本当は小人たちに使ってもらえたら素敵だと考えられていたというのです。

しかし何十年もずっと小人が姿を現すことはなかったので、「気に入ったのならあげる」と翔に告げました。

翌日、通風口に手紙と花を置く翔の様子を、ハルが物陰からじっと見つめていました。

【転】借りぐらしのアリエッティ のあらすじ③

弱気な翔

数日家を空けていたポッドがスピラーという小人を連れて帰ってきました。

途中で足を痛めてしまったところをスピラーに助けられたのです。

スピラーはとてもワイルドな風貌でしたが、自分たち以外にも小人がいたんだということを知ってアリエッティは嬉しくなってしまいました。

そしてスピラーをもてなし、見送りました。

ポッドが帰ってきたことでいよいよ引っ越しのめどがたち、一家は準備を始めます。

アリエッティはポッドに、「悪い人間ばかりではない」と話します。

その時家が大きく揺れました。

天井がはがれて明かりが差し込み、部屋が上に持ち上げられていきます。

ホミリーはキッチンに閉じ込められパニックになってしまいました。

揺れがおさまってアリエッティとポッドが駆け付けると、豪華なキッチンの中でホミリーが茫然としていました。

それはあのドールハウスのキッチンで、翔が強引に交換したのです。

しかしこの出来事がきっかけでポッドは引っ越しへの決意を固くしました。

畑で寝転ぶ翔の元へ、アリエッティが姿を現しました。

そして翔の行いによって家がめちゃくちゃになり、引っ越すことになったと伝えたのです。

翔は冷静に「君たちは滅びゆく種族だ」と言い放ちました。

それは自身にせまった心臓手術にたいして弱気になっていたことで飛び出した言葉でした。

アリエッティは「簡単に滅びたりしない」と言い返します。

幼いころから病弱で誰かに守られるばかりだった翔は、自分より弱い小人たちを守りたいと思ったのだと謝罪しました。

それを聞いたアリエッティは怒りも忘れて翔のことが心配になります。

その時ホミリーの悲鳴が聞こえてきました。

【結】借りぐらしのアリエッティ のあらすじ④

別れと希望

ハルは最近の翔の様子などから小人の存在を感じ始めていました。

翔がドールハウスのキッチンを持ち出したことに気付き、ついに小人の存在を確信。

そして床下のドールハウスを発見してしまいました。

ハルは逃げ惑うホミリーを捕らえてビンに入れ、嬉しそうにパントリーの奥に隠します。

さらに小人たちを全て見つけ出してしまおうと考え、まず翔がいる2階の部屋の鍵をそっとかけ、ネズミ駆除業者に連絡を入れました。

悲鳴を聞いて急いで家に戻ったアリエッティはすぐに異変に気付きました。

そして再び翔の元へ戻り、助けを求めます。

アリエッティがドアの鍵を開け、二人は階下へ急ぎました。

閉じ込めたはずの翔の姿に驚いた様子のハルでしたが、翔は何事もなかったかのようにハルと話し、その様子からパントリーが怪しいと勘づきます。

そしてアリエッティは無事ホミリーを救出することができました。

その頃ハルは貞子に、この家には小人がいると報告していました。

しかし小人たちのいた痕跡は翔によってきれいに消されていて、貞子も訪れたネズミ駆除業者もハルの言うことを信じてくれません。

ハルはがっくりと肩を落としました。

しかしドールハウスのティーポットに残されたミントの葉を見た貞子は、小人はいたんだと静かに喜びました。

その夜、アリエッティは引っ越しのため川でスピラーと待ち合わせをしていました。

そこにニーヤが現れます。

ニーヤはアリエッティの願いを感じ取り、屋敷へ戻って翔を連れ出しました。

翔はアリエッティの名前を呼びます。

やかんの船に乗り込もうとしていたアリエッティはその声に気付き、翔とニーヤに別れの挨拶をしました。

翔から角砂糖を受け取り、アリエッティは手術のお守りとして髪を束ねていたクリップを手渡します。

夜が明けだした頃アリエッティは旅立ち、翔はアリエッティから生きていく希望も受け取ったのでした。

借りぐらしのアリエッティ を観た感想

宮崎駿監督作品のようなスケールの大きさはありませんが、小人たちの生活が丁寧にとても魅力的に描かれていて、その世界観はとてもわくわくするものでした。

小さな小人たちのまさに生死をかけた冒険活劇のように見えてそうではなく、ひと夏のロマンスのような、甘く切ない出会いと別れの物語にストーリーが集約されていると感じられます。

物語を彩るセシル・コルベルの透き通ったような声も心地よいです。

ハッピーエンドととらえられるのかわかりませんし、切ない結末にしんみりしてしまいますが、いつものジブリ作品とは少し違う、新鮮な気持ちになれる作品です。

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