映画「ラースと、その彼女」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|クレイグ・ギレスピー

映画「ラースと、その彼女」

監督:クレイグ・ギレスピー 2008年12月にショウゲートから配給

ラースと、その彼女の主要登場人物

ラース・リンドストロム(ライアン・ゴズリング)
主人公。平凡な会社員。今どき珍しいほど奥手で純真。

ガス(ポール・シュナイダー)
ラースの兄。神経質で融通がきかない。

カリン(エミリー・モーティマー)
ガスの妻。お節介焼きだが思いやりがある。

マーゴ(ケリー・ガーナー)
ラースの同僚。自分の気持ちを打ち明けるのが苦手。

ダグマー・バーマン(パトリシア・クラークソン)
ラースの主治医で心理学に詳しい。知的なアドバイスと臨機応変な対応を見せる。

ラースと、その彼女 の簡単なあらすじ

引っ込み思案な青年ラース・リンドストロムが、ある日突然に兄夫婦に紹介したのは人形の「ビアンカ」です。

兄たちや町の仲間、さらには名医のバーマンのサポートによってビアンカはラースの彼女として認められていきます。

みんなと触れあいで人間的な温かさに目覚めたラースは、ビアンカの「死」を受け入れて近くにいる大切な女性の存在に気がつくのでした。

ラースと、その彼女 の起承転結

【起】ラースと、その彼女 のあらすじ①

箱入り娘の登場

1979年に誕生したラース・リンドストロムは生後すぐに母親のエリノアを失って、父親・ポールとも早くに死別しました。

生まれ育った小さな田舎町から一歩も外に出ることもなく27歳を迎えたラースは、これまでに一度も女性とお付き合いをしたことがありません。

ある時にラースがインターネット通販で注文した商品が、大きな木の箱に荷作りされて自宅まで配送されてきました。

中に入っていたのは愛玩用のリアルドールですが、「僕の彼女・ビアンカ」だと家族のディナーに同席させます。

名前はビアンカ、職業は宣教師で世界中を旅しているが英語は苦手、母親とは幼い頃に死別、結婚前の男女交際には慎重。

同じ敷地内に住んでいて親代わりに世話を焼いてきた兄のガスと、まもなく出産を控えている義理の姉・カリンはあ然とするばかりです。

カウンセリングの権威であるダグマー・バーマンによると「異常ではなく必要」だそうで、当分のあいだは周りの人たちはラースと話を合わせるしかありません。

【承】ラースと、その彼女 のあらすじ②

小さなコミュニティに大きな波紋が

雪がチラホラと舞い散るある日曜日の朝早くから、ラースは地元の教会に足を運んで真剣なまなざしで祈りをささげていました。

ただひとついつもと違うのはビアンカを車イスに乗せてに連れてきていることで、お堅い聖職者や古くから通っている信者からすると違和感や戸惑いを隠せません。

ミサが終わった後は早々と駐車場に停めてあった車に乗り込んでラースは帰宅、ガスとカリンが参列者に向けて詳しい事情を説明します。

飼いネコに服を着せるペット愛好家、未確認飛行物体や宇宙人を信じるミステリーマニア、アニメのフィギュアを集めるコレクター、連邦捜査局に尾行されていると思い込んでいる元軍人。

ラースの知り合いやご近所さんの多くが他人には理解が難しい趣味を持っているので、人形に恋愛感情を抱くことなどそれほど珍しくはありません。

初めは遠くから白い目で見ていた人や「異常」だと非難する人たちにとっても、ビアンカの存在は間違いなく「必要」になっていきます。

【転】ラースと、その彼女 のあらすじ③

人気者の彼女に彼氏がちょっぴり嫉妬

職場には毎日出勤していて身の回りのことも自分でこなしているラースは、日常生活に支障は一切ないようです。

いつものようにオフィスでパソコンに向かってキーボードを叩いていると、デスク越しにマーゴが熱い視線を送っていました。

同じ会社に勤めていて前々からひそかにラースに想いを寄せている彼女も、ガスとカリンに協力を申し出てきます。

月曜日と水曜日の午後は女性向けアパレルメーカーでのアルバイト、木曜日の午後は病院でのボランティア。

一方のビアンカも「社会参加」が順風満帆に進んでいきますが、ふたりっきりで過ごす時間が少なくなっていくラースからすると面白くありません。

新しくできた女友だちによって美容院に連れていかれたビアンカは、ヘアースタイルを大胆にイメチェンしますが1度切った彼女の髪は伸びません。

ビアンカは僕の彼女だと不満を露にするラース、ビアンカは1人前の女性であなたのお人形さんではないと諭すカリン。

何となくひとりで取り残されたような気持ちになっていたラースを、励ましてくれたのはマーゴです。

【結】ラースと、その彼女 のあらすじ④

命のない彼女の命が尽きる時

思いきってビアンカにプロポーズをしたラースですが、当然ながら答えは返ってきません。

しばらくのあいだはビアンカと距離を置くことにしたラースは、仕事の終わりに同僚たちの飲み会に参加してみました。

休日には思いきってマーゴに声をかけて、ふたりっきりでボーリング場でのデートを楽しみます。

別れ際にはこれまでのお礼を言って握手をしますが、ビアンカのことを裏切っているような罪悪感も拭えません。

ビアンカが「重症」になっているのをラースが発見したのは、美しい日差しが射し込んでくる春の日の朝です。

救急車で搬送されたビアンカが手厚い「治療」を受ける中で、待合室に駆け付けたバーマンは「余命あとわずか」の診断を下しました。

ビアンカのお葬式は牧師を呼んで行うほどの盛大で、大勢の人たちが花束を持って別れを惜しみます。

最後にはひつぎに収められ墓地に埋葬されますが、見送るラースの隣にはマーゴが寄り添っているのでもうビアンカは「必要」ではありません。

ラースと、その彼女 を観た感想

一歩でも間違えるとサイコ・サスペンスになってしまうところを、どこまでもピュアなハートフル・コメディとしてまとめ上げていました。

ゴールデングローブ賞の主演俳優賞にもノミネートされた「ドライヴ」では天才的な運転技術を誇る裏社会の逃がし屋、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画「ブレードランナー 2049」では完全無欠のサイボーグ。

近年ではハードボイルドな作品への出演が多くなっているライアン・ゴズリングですが、本作品のような人間的な温かみのある役柄の方が似合っているのではないでしょうか。

ラースの見守り役・バーマン先生に起用されている、パトリシア・クラークソンの存在感も見逃せません。

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