監督:フェルナンド・メイレレス 日本公開2003年6月28日にアスミック・エースから配給
シティ・オブ・ゴッドの主要登場人物
ブスカ・ぺ(アレシャンドレ・ホドリゲス)
カメラマンを目指す少年。ギャングにも加担せず、真面目に生きようとする。
リトル・ゼ(レアンドロ・フィルミノ・ダ・オーラ)
街一番の悪党。街を仕切り、気に入らない者はすぐに手にかける。
ベネ(フェリピ・アージンセン)
リトル・ゼの相棒。ギャングではあるが街の皆から慕われており、リトル・ゼを唯一コントロール出来る人物。
セヌーラ(マテウス・ナッチェルガエリ)
リトル・ゼとの敵対勢力のリーダー。抗争の末逮捕され、マスコミに晒される。
マネ(セウ・ジョルジ)
元軍人のバスの運転手。家族を殺され、彼女をレイプされた復讐を目的にセヌーラの傘下に入る。
シティ・オブ・ゴッド の簡単なあらすじ
2002年にブラジルで公開された、パウロ・リンスによる同名小説を基に映画化された作品です。
ブラジル・リオのスラム街、ファヴェーラを舞台とした貧困層の現実が鋭く克明に描写された作品で、世界中に衝撃を与えました。
ファヴェーラで生きる若者の多くは、銃や麻薬といった法から外れたものと隣り合わせの生活を送っていました。
ある日、街のトップの片割れが殺害されたことで、ファヴェーラ全体を巻き込む大規模な抗争が勃発します。
シティ・オブ・ゴッド の起承転結
【起】シティ・オブ・ゴッド のあらすじ①
舞台は1960年代のブラジル・リオのファヴェーラと呼ばれる貧困層が集う街で、銃による強盗殺人や売買、麻薬の取引が横行している違法地帯が没越しているスラム街でした。
「神の街」という意味とは反して、この街の多くの若者は貧困から抜け出す手段として、ギャングに加担したり犯罪行為に自ら手を染める者達でばかりで、彼らの多くはローティーンの幼い子供達ばかりです。
そんな街で生まれたブスカ・ぺは、同年代の若者とは違い、ギャングにも属さない心優しい少年で、いつかこの地域から抜け出すことを夢見ていました。
この街では街でも有名な若者3人が幅を利かせており、彼らも犯罪行為の常習者でした。
様々な無法行為を行っている内に彼ら3人は、ギャングに強い憧れを抱くリトル・ダイスと出会い、リトル・ダイスを加えたメンツである日、金品略奪の目的で街のモーテル襲撃を画策します。
3人組の中にはブスカ・ぺの兄、マヘクの存在もありましたが、このモーテル襲撃のどさくさに紛れてリトル・ダイスに殺害されてしまいます。
リトル・ダイスは、まだ年端もいかない幼い少年でしたが殺人も躊躇せずに行える少年で、この事件を起こして以来、街から姿を消し行方不明になります。
【承】シティ・オブ・ゴッド のあらすじ②
1970年代、ブスカ・ぺはカメラマンを夢見る若者に成長していました。
殺伐とした環境に身を置きながらも優しい心はそのままで、意中のアンジェリカという女性の気を引こうと奮闘する日々を送っています。
同じ頃、街にはリトル・ダイスがリトル・ゼと改名してカムバックしており、親友のベネと組んで辺りを仕切る麻薬組織を一網打尽にする計画を立てます。
リトル・ゼは以前より凶暴で、麻薬の利権争いでトップに立つと、今度は安全に麻薬をさばくために殺人や強盗を禁止する新たなルールを敷きます。
ブスカ・ぺにマリファナを卸したネギーニュや、胴元であるセヌーラも排除の対象でしたが、ギャングでありながら心優しいベネが防波堤となっていたため、リトル・ゼは不本意ながら彼を殺すのは我慢していました。
やがて、ベネとアンジェリカは付き合うようになり、彼女からギャングから足を洗い、この街から出ようと提案されます。
ベネはそれに従い、街では盛大な送別会が開かれます。
【転】シティ・オブ・ゴッド のあらすじ③
送別会は街の大規模なクラブで行われ、日頃から彼を慕う人達が大勢駆けつけました。
ベネには大きな人望があり、自分の欲望のためなら殺戮や強奪も躊躇することなく実行する冷血漢リトル・ゼとは対照的な性格です。
場内は彼の別れを惜しみつつも、ギャングから足を洗いカタギとして新たな人生を送る彼の前途を祝う空気で満ちていましたが、リトル・ゼは彼がこの街を出ることに納得していない様子です。
そして、後にファヴェーラ全体を巻き込む大きな抗争となる事件が発生します。
日頃からリトル・ゼの独裁的なやり方に反発したネギーニュが、場内の混雑に紛れてリトル・ゼを暗殺しようと試みます。
しかし、ネギーニュが発砲した銃弾はベネに命中し、命を落としてしまいます。
この事件がきっかけとなり、リトル・ゼをコントロール出来る人物がいなくなり、彼の持ち前の凶暴性がエスカレートします。
ベネの死はネギーニュのセヌーラにも影響を与え、その報復としてネギーニュを殺害します。
【結】シティ・オブ・ゴッド のあらすじ④
ネギーニュとセヌーラを殺害しに行く途中、リトル・ゼは送別会でナンパした際にフラれた女性をレイプし、彼の彼氏であるマネの家を襲撃します。
マネは無事でしたが彼の家族は殺され、マネは敵討ちのためセヌーラの傘下に入ります。
セヌーラの傘下には大勢の少年達も加入しており、彼に恨みを抱く者達であふれかえっています。
セヌーラは彼らに銃を支給し、セヌーラ派とリトル・ゼ派の抗争は激化していきます。
一方で、マネは良心から敵討ち以外には乗り気ではありませんでしたが、セヌーラに上手くコントロールされる日々を送ることで、悪事に対する抵抗感も無くなり、幹部にまで登り詰めました。
そして抗争は1年が経過して続き、ここでようやく警察が介入してきます。
ある日、マネが逮捕されたことがマスコミに報道され、ギャングの頭として名前が知れ渡りました。
このことが面白くないリトル・ゼは、カメラマン見習いのブスカ・ぺに自分達一派の写真を撮らせ、新聞で大々的に報じられます。
ブスカ・ぺが勤める新聞社は、彼にギャングの写真をもっと撮ってくるように指示し、承諾したブスカ・ぺは抗争が激化するファヴェーラへと侵入します。
両一派総出の銃撃戦の最中、セヌーラ派のオットという少年が負傷し、マネは彼を介抱してあげます。
しかし、マネが目を離した隙にオットは彼を銃撃します。
実はこの少年は、過去にマネに父親を殺害されており、その復讐のためにセヌーラ派に加入したのでした。
膨大な犠牲者が発生し、両陣営のトップが逮捕されたことでようやく抗争が終わりを迎えます。
リトル・ゼは警察を買収してすぐに釈放されますが、銃で武装したストリートチルドレン達に蜂の巣にされます。
ブスカ・ぺはその一部始終をカメラに納め新聞で報じ、ファヴェーラの内情が世間に発信されましたが、空位になったギャングのトップを狙う少年はまだまだ存在するのでした。
シティ・オブ・ゴッド を観た感想
世界の国々では至るところにスラム街が存在しますが、本作の舞台となったファヴェーラほど治安が劣悪な地域は稀でしょう。
法治国家の日本からでは想像しにくいですが、本作に登場した最悪の環境で生きる少年少女達も確かに存在します。
本作は、そういった救いのない現実をスタイリッシュに描き過ぎているとの批判もありましたが、ラストまでハイテンションで駆け抜ける進行が観るものを惹き付け、社会的に見て見ぬふりをされていたスラム街の現状を、多くの人に発信しています。
ファンクやソウル、サンバなどの楽曲がストーリーを更に盛り上げ、素人ばかりのアドリブ中心の演技がファヴェーラの現実を忠実に再現しており、目を背けたくなる現実から目が離せなくなるように仕上げた、フェルナンド・メイレレス監督の手腕は見事です。
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